SCM(サプライチェーンマネジメント)とは、製造業や小売業における製品の原材料調達から製造、流通、販売までの流れを一元的に管理する経営戦略のことです。この記事では、SCMの基礎知識や導入するメリット・デメリット、注目したいSCMシステム5選を紹介します。

目次

  1. SCMの特徴と必要性
  2. SCMを導入するメリット
  3. SCMを導入するデメリット
  4. SCMを比較する際のポイント
  5. 【2024年版】注目のSCMシステム5選を比較
  6. SCMは自社の導入目的に合わせた選定を

SCMの特徴と必要性

【2024年版】SCMシステムを比較!基礎知識や選び方のポイントも
(画像=MongtaStudio/stock.adobe.com)

従来のSCMシステムでは、「必要なときに、必要なものを、必要な数量だけ生産し、必要な場所に適切なタイミングで配送する」という考え方のもと、コスト削減や業務効率化、リソースの最適配分を目指してきました。

しかし、最近はSCMの視点が企業から顧客へと変わりつつあり、企業が収益を上げるためには、顧客の要求に素早く正確に対応し、顧客からの信頼度を高めていくことが当たり前の時代となっています。

SCMを推進することで調達から販売までの速度や精度、効率を上げることは引き続き重要になりますが、これだけでなく配送前から完了後までの全工程を顧客の視点から最適なタイミングで進めることが、今後ますます要求されるでしょう。

SCMの基本的な役割と機能

SCMの基本的な役割は、エンドユーザーへ商品をより速く届け、その結果顧客の満足度を一層高めることにあります。

SCMを適切に実行するためには、供給過程に関与するすべてのサプライヤー(製造業者、物流会社、卸売り業者、小売業者)間で情報の共有と業務の連携を推進し、供給プロセスの改善を通じて迅速性と効率性を向上させることが必要です。

SCMとERPの違い

ERPとは、Enterprise(企業)、Resource(資源)、Planning(計画)の頭文字を取った言葉で、企業で必要となる人材、製品、財源を策定的に配置し、その有効活用を目指す概念を表します。

一方、SCMはSupply Chain Management(サプライチェーンマネジメント)の略で、製品の生産から顧客への納品までのすべての工程を見える化し、適切に管理する考え方です。SCMも人材、製品、財源の流れに関わる考え方であるため、広義ではERPの一部ともいえますが、より物流に焦点を当てている点が特徴です。

つまり、SCMはサプライチェーンに関連する生産や販売部門への限定的な導入が一般的ですが、ERPは企業資源全体の見える化を目指し、「人材・製品・財源」の包括的な管理と一元的な最適化に重きを置いているという点が両者の違いです。

SCMを導入するメリット

SCMを導入することで得られるメリットは以下の通りです。

物流情報を一元管理できる

SCMを導入すると、関連企業間での原材料の供給から製造、在庫管理、輸送、保管、そして消費者への最終納品まで、各段階のリードタイムを見える化できます。見える化によって生産から流通、在庫までの各工程が最適化され、商品の欠品や在庫過多といった問題の回避につながります。

商品の欠品が発生すると、消費者満足度は下がり、売上機会の損失につながる可能性があります。逆に、在庫が過多になるとキャッシュフローが停滞し、企業の資金運用に影響を与えます。

こうした視点から、サプライチェーン管理による各工程の見える化は、消費者満足度を保ちつつ在庫過多によるキャッシュフローの悪化リスクを防ぐ役割を果たします。

物流コストの削減ができる

過剰生産や販売タイミングのミスにより在庫が増えると、それが売れ残ることで大きな損失が生じ、ビジネスに悪影響を及ぼす可能性があります。逆に在庫が不足すると、需要の急増に対応できず、機会損失が生じることもあります。

このような課題に対してSCMの導入は有効で、リアルタイムの需要予測と情報共有を通じて適切な在庫管理を実現します。これにより、市況や消費者の需要に見合った在庫量を保持し、機会損失を最小限に抑えつつ、売上を向上できるようになります。

在庫の最適化が図れる

それぞれの事業部や部署がバラバラに在庫や生産の管理を行うと、必要以上の在庫が生まれたり、需要の変動に即座に対応できずに機会損失が増えたりする可能性が高まります。

こういった課題を解決する際にもSCMの活用は有効です。リアルタイムに需要を予測し、情報を共有することで、必要以上の在庫を抱え込むリスクや品薄のリスクが低減され、在庫の最適化を図れることが期待できます。

SCMを導入するデメリット

一方、SCMを導入することで以下のようなデメリットも発生します。

導入コストがかさむ

SCMを導入する際、一番のハードルとなるのが導入費用です。

SCMはその性質上、自社だけでなく子会社や関連企業などサプライチェーン全体の流れを一元的に管理するものです。そのため、導入には非常に複雑で大規模なITインフラが必要となり、その設置やシステムの運用・保守にも大きな費用が掛かるため、導入コストは必然的に高くなります。

管理しなければならない業務が多岐にわたる

SCMは、原材料の購入から製品の生産や販売、包装・配送、品質管理、在庫管理といった多岐にわたる業務が管理の対象となります。これらの各領域を総合的に管理し適切な体制を築くことは、極めて難しい作業です。業務の効率化を図るために各プロセスを細分化し分析すればするほど複雑性が増してしまい、逆に効率が悪化することも珍しくありません。

サプライチェーンの体制が適切に構築されていないと企業のリソースが浪費されてしまい、結果的に企業の市場価値を落とす要因となります。

SCMを比較する際のポイント

【2024年版】SCMシステムを比較!基礎知識や選び方のポイントも
(画像=onephoto/stock.adobe.com)

SCMを比較検討する際は、以下のポイントを押さえておきましょう。

SCMで管理する範囲を明確にする

システムによって得意とする領域は異なるため、SCMを導入する際にはまず業務プロセスを詳細に把握し、課題や問題点を洗い出して、管理する領域を明確にする必要があります。

例えば、ある大手飲料メーカーでは在庫の把握に課題を感じていたことから、より精度の高い需要予測の実現のためにSCMシステムを導入して、製品ごとの補充計画や在庫運用を実施。結果として過剰な在庫や品切れの問題を減らし、コスト削減に成功したという事例があります。

トラブル発生時のサポート体制を確認しておく

一部の業界では物流の管理が24時間365日求められ、システムトラブルが発生して物流が一時的に止まるだけで大きな損失が生じるリスクがあります。

そのため、SCMシステムを選ぶ際にはサポート体制の整備度合いも重要なチェックポイントとなります。24時間365日問い合わせが可能か、現地での復旧作業対応は可能か、サービスの充実度はどうか、サポートにどれだけの費用がかかるかといった点を比較検討するとよいでしょう。

既存システムとうまく連携できるか

すでにシステム連携機能を持つ既存システムがある場合は、新たに導入予定のシステムとの連携性も確認しましょう。

両システムの相性が良くない場合は、システム連携やカスタマイズがうまく進まない可能性があります。そのような場合は、新しいSCMへの全面的な移行も選択肢として考えなくてはなりません。

【2024年版】注目のSCMシステム5選を比較

ここでは、2024年に注目を浴びるであろうSCMシステムを5つピックアップして紹介します。

SAP SCMソリューション

導入価格要問い合わせ
主な特徴供給から消費までの流れを総合的に管理可能
トライアルの有無デモ機能をリクエスト可能
外部ツールとの連携エコシステムと連携するサプライチェーン
※2023年11月時点の情報です

SAP SCMソリューションは、リスク対応能力のあるサプライチェーンを設計するためのSCMです。サプライチェーンの全工程を明確化し、国内外のすべてのネットワークを即時に把握します。どのプロセスで問題が起こっているかも直ちに判断・対処が可能で、予見できない損失の防止に有効です。

需要予測では、先進的な機械学習アルゴリズムを利用し、変わりゆく需要に適応しうる計画機能が搭載されています。また、what-ifシミュレーションや警告などの機能を用いて迅速対応能力を強化しており、急な需要変動にもしっかりと対処できます。

さらに、ERP、事業計画、製造実行システムと緊密に統合し、運用計画の変更を即時に管理できます。計画変更に伴うスケジューリングも効率化され、円滑な伝達が可能です。運用計画の変更がスムーズに行われることで、製造効率の向上も実現します。

Oracle Supply Chain Management

導入価格要問い合わせ
主な特徴さまざまな業務の効率化を行える
トライアルの有無デモ機能あり
外部ツールとの連携Oracle Cloud SCM用の事前構築済みの分析ソリューションなど
※2023年11月時点の情報です

Oracle Supply Chain Managementは、注文から在庫の管理、製造、ロジスティクスなど、サプライチェーンに関連するすべてのプロセスを一元管理するSCMシステムです。自動車、小売、医療施設、卸売業など、さまざまな業種に特化したSCMが提供されており、それぞれの業界における高度な専門性をもったサプライチェーンが構築できます。

また、AIと機械学習の活用により、SCMと人事のプロセスがクラウドで一体化されることで、サプライチェーンにおける人的リソースが明示化されます。これにより、製造現場の無駄が省かれ、人力の最適化が可能となります。

短期間で行われる反復的な計画と、それに連結したサプライチェーンの実行により、日常の変化に柔軟に対応します。顧客体験や製品データなどを利用してトレンド予測やシナリオモデリングに取り組み、迅速な計画と予測の調整をすることによって素早い意思決定が可能となります。

クラウド型間接材調達支援サービス

導入価格要問い合わせ
主な特徴・間接材に関する調達業務をクラウドサービスに一元化できる
・業務効率化を行うとともにコスト削減が期待できる
トライアルの有無導入効果の無料診断あり
外部ツールとの連携外部システムとのデータ連携あり(※別途見積もり)
※2023年11月時点の情報です

クラウド型間接材調達支援サービスは、オフィス用品や備品など、企業の本社や各拠点で必要とされる物資の調達を一括してクラウドサービス化することで、調達費用や業務経費の軽減を実現するサービスです。

このサービスはマルチテナントクラウド方式を採用しているため、サーバーやOSのメンテナンスを心配する必要がなく、消費税率の引き上げなど外部環境の変化に対応するための追加費用も発生しません。

さらに、サービスを提供する富士通コワーコでは、専門のコンサルタントがデータ分析から見積もりサポートまでを行うコンサルティングサービスを提供しています。これにより、購入費用の削減だけでなく、購買業務にかかる人的リソースの節約も実現します。

mcframe

導入価格クラウド型の場合は月額8万4,750円から導入可能
主な特徴・ものづくりに関連する業務や情報を管理できる
・海外におけるサポート体制も充実している
トライアルの有無セミナーにてデモ体験が可能
外部ツールとの連携DWHやデータ分析基盤、他拠点とのデータ連携など、あらゆるシステムのデータ連携を実現
※2023年11月時点の情報です

mcframeは、ビジネスエンジニアリング社(B-EN-G)が開発した国産の製造業向け基幹業務パッケージソフトウェアです。製造業の業務知識を蓄積した多種多様な機能を提供するとともに、個々の要求に応じたカスタマイゼーションも可能となっています。また、必要な業務範囲を選択してモジュールを個別に導入することも可能です。

mcframeの特徴は、広範で汎用性のある業務機能を既に持っていることと、個々のニーズに対してもカスタマイズが容易にできる点にあります。これは、フレームワーク構造によって実現されています。

標準機能だけでは満足できない、企業特有の要求や業務プロセスに対応したい場合、通常はアドオンとしてパッケージの基本構造外で開発することが一般的です。しかし、mcframeでは業務機能をフレームワーク上に部品のように構築しているため、どのような要求に対してもフレームワーク上で追加開発を行い、「部品」を積み上げていくことができます。

結果として、標準機能と追加機能の区別がなく、フレームワーク上の全部品のシームレスな連携が可能となります。さらに、追加開発の際には、自動的にプログラムを生成するツールを利用することで高い生産性を持つカスタマイズ対応が実現します。

PROCURESUITE

導入価格要問い合わせ
主な特徴・さまざまな購買業務プロセスに対応可能な調達支援ソリューション
・ユーザビリティに優れた画面デザインを提供
トライアルの有無要問い合わせ
外部ツールとの連携さまざまな購買業務プロセスに対応可能
※2023年11月時点の情報です

PROCURESUITEは見積もりや発注、承認処理などの購買業務を効率化し、情報を可視化するためのソリューションです。見積もりデータを保存することにより業務が標準化され、業務の個人依存や誤発注を防止できます。

既に商品マスタ登録されている商品を購入する場合は、カタログ購買を利用してECサイトの外部カタログから商品を購入できるため、カタログ作成の手間を省くことができるのが特徴です。

発注代行サービスを利用すれば、主要業務にリソースを集中させたり、人手不足を解消したりできるでしょう。購入先の指定にも対応しており、商流や商品の変更によるトラブルを心配することもありません。

画面はシンプルに整理されており、直感的な操作が可能です。表示項目の追加やデータの並べ替え、クイックリンクの設定など、画面設定を自由に変更できます。

SCMは自社の導入目的に合わせた選定を

SCMの主要な役割は、エンドユーザーに対して商品を迅速に提供し、これによって顧客満足度を向上させることです。

その運用には、製造会社、物流会社、卸売会社、小売業者といった全てのサプライヤーとの情報共有と連携が必要となります。その連携により供給過程の最適化を図り、スピードと効率を高めることが重要です。

この記事では、2024年に注目を浴びるであろうSCMシステム5選を紹介しました。それぞれ活躍する領域は多種多様ですが、実績のあるツールばかりです。ここで紹介した内容を、SCMの選定に役立てていただければ幸いです。

(提供:Koto Online