この記事は2023年12月15日に「The Finance」で公開された「ルクセンブルグ籍のオルタナティブ投資ファンド:日本のファンドマネージャーにとって魅力的な選択肢」を一部編集し、転載したものです。
【PR】ルクセンブルクはヨーロッパ最大のファンド中心地であり、世界で2番目に大きい規模を誇り、その運用資産(AUM)は5.16兆ユーロを超えています。オルタナティブ・ファンド・マネージャーにとって、ルクセンブルクは投資ファンドの本籍地として人気を集めていますが、日本のファンド業界では、プライベート・エクイティや不動産投資でより一般的に利用されているケイマン諸島ほど知名度は高くありません。
西側諸国と中国との関係を巡る不確実性が続く中、ヨーロッパの投資家は改めて日本に関心を示しており、この点においてルクセンブルクを活用したストラクチャーが極めて効果的です。
それでは、一般的にも、そして特にオルタナティブ投資ファンドにおいて投資家へのリーチをさらに広げたいと考えている日本のファンドマネージャーにとって、ルクセンブルクが魅力的なファンド組成国となっている理由を見ていきましょう。
高い信頼性・効率性・安全性
多くの(特に欧州の)プライベート・エクイティ投資家や不動産投資家を日本のファンドに引き付けるには、コンプライアンス、マネーロンダリング対策(AML)、データ保護などの分野で強固なファンド構造が必要となります。ルクセンブルクが投資ファンドを設立する国としての最大の利点は、その魅力的な規制枠組みと、それがもたらすさまざまなメリットと言えるでしょう。
メリット
規制環境:投資ファンドを対象に確立された評判の高い規制枠組みは、柔軟で投資家のニーズを考慮した法務および税務環境を提供します。ファンドマネージャーと投資家は、これによってもたらされる安定性と透明性を高く評価しています。
ヨーロッパ全土への進出:ルクセンブルクのファンドは、ファンドパスポートの取り決めにより、欧州連合(EU)および欧州経済領域(EEA)全体で募集・販売できるため、ファンドマネージャーは単一の規制体制の下、Undertakings for Collective Investment in Transferable Securities (UCITS) DirectiveやAlternative Investment Fund Managers Directive (AIFMD)のもとでヨーロッパ全土においてファンドを取り扱うことが可能となっています。
投資家保護:厳格な規制基準とルクセンブルク金融監督委員会(CSSF)による規制監督によって、高レベルの投資家保護と市場の健全性が確保されています。
多様な投資戦略:ファンドマネージャーは、株式、債券、不動産、プライベート・エクイティ、インフラ、プライベート・デットなど、幅広い投資戦略と投資対象を自由に追求することができます。
税務業務の効率性:ルクセンブルクは、広範な租税条約ネットワークや特定の種類の所得に対する税免除などのメリットをもたらす税制により、ファンドの設立と本籍地登記において魅力的な国となっています。
世界的な評判:世界有数の金融センターとしての長年の歴史と、プロフェッショナリズム、専門知識、安定性に対する評判により、ルクセンブルクは世界中の投資家やファンドマネージャーを引き付けています。
適応力の高いオルタナティブ投資ストラクチャー
ルクセンブルクのプライベート・エクイティや不動産向けのファンドストラクチャーは、日本のファンドマネージャーの特定のニーズに合わせて調整することができます。ルクセンブルグの2つのNon Regulatedファンドストラクチャーである、Reserved Alternative Investment Fund(RAIF)とSpecial Limited Partnership(SLP)は、アセットやLP投資家(LP)の基盤の拡大を目指す日本のスポンサーにとって特に魅力的です。
ケイマン諸島やイギリス領バージン諸島(BVI)のようなオフショアセンターと同様に、ルクセンブルクのNon Regulatedストラクチャーは、設立に規制当局による承認を必要としません。このようなNon Regulatedファンドは、CSSFによる規制上の保護を必ずしも必要としないため、より洗練された投資家の間でますます人気が高まっています。
オルタナティブ・ファンド・マネージャーは通常、非常に効率的にファンドを設立することに熱心であり、SLPはこれに対応しています(ケイマン諸島やイギリスのリミテッド・パートナーシップストラクチャーと同様)。SLPは法人格を持っていませんが、とはいえ独自の名義で資産を所有しており、ケイマン諸島のファンドの代替、もしくは単一のファンドのみを設立する選択肢をスポンサーに与えるために制度化されました。
ルクセンブルクは他に2つの形態のパートナーシップ制度も提供しており、いずれも独自の法人格があります。
- 有限責任組合法人: Société en Commandite par Actions (SCA)
- 有限責任組合: Société en Commandite Simple (SCS)
RAIF:オルタナティブ投資ストラクチャーの「ゲームチェンジャー」
2016年にヨーロッパのファンド業界に導入されたときに「ゲームチェンジャー」と呼ばれたルクセンブルクのRAIFストラクチャーは、オルタナティブ投資戦略に柔軟で効率的な投資ストラクチャーを提供しています。
主な特徴
規制枠組み:RAIFは、2016年7月23日のルクセンブルク法に準拠し、規制当局であるCSSFによって監督されています。
柔軟なオルタナティブ投資戦略:RAIFは、投資戦略、投資商品、アセットクラスに関して広範な柔軟性を提供しています。これらは、プライベート・エクイティ、不動産、ヘッジファンド、ベンチャーキャピタル(VC)、株式、デリバティブ、不動産、インフラ ファンドなど、幅広い投資戦略に利用できます。
規制対象のAlternative Investment Fund Manager(AIFM):RAIFにおいては、運用を監督し、法令遵守を確保するために、認可されたAIFMを任命しなければなりません。AIFMは、ルクセンブルクや他のEU加盟国に拠点を置き、AIFMDに従ってポートフォリオ管理またはリスク管理を第三者に委任する場合があります。
直接監督対象外:CSSFが直接監督するSIF(Specialized Investment Funds)やSICAR(Société d’Investissement en Capital à Risque)など、ルクセンブルクの他の規制された投資ストラクチャーとは異なり、AIFMがRAIFのコンプライアンス責任を負います。
迅速な立ち上げ:合理的かつ効率的な設立プロセスにより、CSSFによる承認なしに、わずか数週間でRAIFを設立することが可能なケースもあります。
投資家の適格性:RAIFは、十分な情報を入手できる投資家、つまり機関投資家、富裕層の代理として活動するプロ投資家、洗練された投資家、および十分な情報を入手でき、特定の法的条件を満たしているとみなされる他の投資家のみが利用できます。
税務:RAIFは法人所得税、地方事業税、富裕税が免除されますが、 各四半期末に評価されるRAIFのNAVに基づいて、年率0.01%の年間登録税が課せられます。
一方でリスク資本に投資するRAIFは、投資ビークルが上記登録税の課税対象外となる特別税制を選択する権利を有します。これらの場合の投資ビークルは、年次税務申告書を提出する義務がある完全課税事業体として扱われているものの、譲渡可能証券から得られるすべての所得およびキャピタルゲインが課税対象外となり得ます。特別税制を選択したRAIFは、さらに富裕税も免除されます(ただし、最低富裕税を除く)(一般には、主に金融資産、譲渡可能証券、現金を保有するRAIFの場合、富裕税の最低額は年間4,815ユーロとなります)。
多様な法的形態:RAIFは多様な法的形態を取ることが可能で、具体的にはパートナーシップ型・会社型・契約型の形態にて設立可能となっております。
分配:認可を受けたAIFMは、EU全体のプロ投資家(AIFMDによって定義)に譲渡可能証券、ユニット、またはパートナーシップの持分を分配することができます。また、プロ投資家としての資格を持たないものの、十分な情報を入手できる投資家に分配するには、現地の規則を遵守する必要があります。目論見書(Prospectus/PPM)などのファンドのマーケティング資料は、AIFMDの開示要件を満たしていなければなりません。
投資家報告:RAIF年次決算および投資家に対する情報開示は、AIFMDの開示要件を満たし、承認された法定監査人による監査を受け、ルクセンブルクのGAAPまたは国際財務報告基準(IFRS)を満たさなければなりません。
法定の報告と提出:RAIFのAIFMは、ファンドのAUM、リスクエクスポージャー、レバレッジ、その他の関連データの詳細を記載した定期報告書をCSSFに提供することを含む、AIFMDの報告義務を遵守しなければなりません。主要担当者やサービス業者の変更を含む重大な変更に関する通知は、CSSFに提出する必要があります。
AML報告:RAIFとそのAIFMは、顧客デューデリジェンスの実施、不審な活動の監視、疑わしい取引の関連当局への報告など、堅牢なAML手順を確立・維持しなければなりません。
なお、特定の報告要件は変更される可能性があり、RAIFの法的形態、投資戦略、および関連する規制体制によって異なる可能性があることに注意してください。
パラレル・ファンド
ケイマン諸島やルクセンブルクにパラレル・ファンドを設立することは、特定の管轄法定要件を満たす必要がある投資家にとって解決策となります。
このような場合、各国の様々なファンドやそれを利用する投資家に対して、それぞれのタイムゾーンでローカルに対応できることが非常に重要となります。また、規模の経済を実現するために、多数の国が関連するパラレルストラクチャーですべてのファンドに単一対応できるグローバルなサービスプロバイダーを任命することも利点の一つとなります。
ルクセンブルクのファンドサービス業者
投資ストラクチャーを組み立てる際には、会計やレポーティングからデポジタリー、会社秘書役、トランスファーエージェント業務、登記住所設定に至るまで、AIFM、デポジタリー、セントラルアドミニストレーションといった重要な機能をすべて実行できるサービス業者を特定することが重要となります。
当該サービス業者は、ルクセンブルクにおいて各種ファンド形態や関連する投資ビークル(MasterCo、HoldCo、Carry Vehicleなど)等の全てのEntity形態に対応可能で、さらにファンド傘下の投資対象が関係する様々な国・Entityに対してサービス提供が可能であるなど、広範なグローバルネットワークとサービス提供範囲を兼ね備えた会社が望ましいと言えます。
TMFグループ
TMFグループは、全世界86か国に自社サービス拠点を展開し、総勢10,000名以上の従業員が、それぞれの国における各種投資ストラクチャーに対してローカルにサービス提供致します。ファンドサービスにおいては(ルクセンブルクや日本を含む)各国の専門家が投資ストラクチャーの上流のファンド管理から下流の各種投資アセットクラスまで全体のアドミニストレーションをサポート致します。弊社のファンドを含むサービスの詳細は日本語ウェブサイト。
TMF Group のローカルナレッジとグローバルネットワークを貴社の事業強化にお役立てください。貴社の課題解決をどうお手伝いできるか、まずはTMF Group 日本オフィス(グローバル営業担当)へお気軽にお問合せ下さい。経験豊富な日本人スタッフがご対応させて頂きます。
TMF Group株式会社
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