中国、東南アジアからさらにインドに注目し始めている日本のファッション&アパレル企業が増えている。「ユニクロ(UNIQLO)」を展開するファーストリテイリングもその1社で、2019年10月に首都ニューデリーに1号店を出店してインド進出を開始し、その後店舗数を13店にまで増やしている。すでにインド事業は黒字化しており、人口14億人超をターゲットに「インド戦略」をさらに強化していくとみられる。
ファーストリテイリングは、2019年には新型コロナウイルス感染症が急拡大したインドに総額2億2000万ルピー(約3億3000万円、当時のレート換算)を緊急支援している。「ザラ(ZARA)」や「H&M(エイチアンドエム)」といった競合も数多く出店しているが、特に「ユニクロ」はインドとの絆を強めている。実際、インドのファッション好きに話を聞くと「私のまわりの若い友だちはユニクロはみんな着てます。初上陸した時にインドのデザイナーのリナ・シンとクルタ・コレクションをコラボしたのも印象に残ってます」とコメントしている。
ただ、インドのファッション&アパレル企業はまだ日本ではまだほとんど知られていないが、注目すべき3つのブランドがある。まず、「ナイカ(NYKAA)」だ。サンスクリット語で「主人公」を意味しており、ファルグニ・ナヤール(Falguni Nayar)が創業したEコマース企業だ。「ナイカ」は通販からスタートし、ITを駆使してEコマースを立ち上げ、今やインドを代表する企業に成長している。インスタグラムの公式アカウントは250万フォロワーを擁している。ファッション、コスメなどを取り扱い、特に「インドウェスタン」とも「フュージョンウェア」とも言われる、インドと欧州の洋服がミックスしたスタイルの服を数多く揃えている。また、アプリを通して、スタイリストや専門家からのおすすめ情報も提供している。インドにはベジタリアンやヴィーガンも多く、環境や動物に配慮した製品も数多く取り扱っている。
「ママアース(MAMAEARTH)」は、スキンケアブランドで2016年に設立された。無添加のベビーケア製品が、インドでは簡単に手に入らないということがきっかけで「ママアース」を立ち上げた。その後、大人向けの製品も販売を開始し、インドで人気のブランドのひとつに成長している。インドの映画業界「ボリウッド」のシルパ・シェティやサマンサ・ルース・プラブといった有名女優とコラボレーションも行なっている。サマンサ・ルース・プラブは「ママアース」のブランドアンバサダーも務めている。
3つ目は「ワーオ(WOW)」だ。サプリメントを始め、ハーバルクリーム、セラム、ローションなどを展開する化粧品ブランドだ。サステナブルとナチュラルにこだわった物作りをしており、健康ブームを背景に人気ブランドに成長している。特に、アップルサイダービネガー(リンゴ酢)のシャンプーが人気アイテムだ。
どのブランドもEコマースを主軸にデジタルとテクノロジーを駆使してブランド展開をしている。また、時代の変化への対応も素早い。14億人超の巨大な市場に向けて日本のファッション&アパレル企業がどういった「インド戦略」を取って進出を果たしていくか、今後も注目したい。