香港の高等裁判所にあたる高等法院は1月29日、中国の不動産最大手で経営危機が表面化している中国恒大集団(Evergrande Group)の法的整理手続きの開始を決め、清算命令を出した。中国恒大集団は今後、香港の裁判所の管理のもと、香港にある資産の売却や債務の整理を進めることになる。
中国恒大集団が香港に保有する資産は数パーセント程度で、9割以上は中国本土に保有している。この資産の処分には本土側の裁判所の許可が必要になるが、中国政府は法的整理に慎重な姿勢を取り続けているため、資産の回収は容易ではない。
2017年10月のピーク時に31.55香港ドル(約567.9円)だった中国恒大集団の株価は、1月29日の終値で0.16香港ドル(約2.88円)まで下落している。
中国恒大集団は1996年に許家印が創業した会社で、不動産市場の活況を見据え不動産事業に参入し、2009年には280を超える都市で800を超えるプロジェクトを手掛けていた。香港証券取引所には同年11月に上場を果たしており、米誌『フォーブス』の2020年度の「中国の富豪ランキング」では第10位に選ばれている。
その許家印も今や中国当局による高速や逮捕を意味する強制措置の対象となっている。中国恒大集団の負債総額は日本円に換算して約49兆円にのぼっており、2000件以上の訴訟案件を抱えている。すでに危険水域を超えており、深刻化の度合いは増している。中国政府は「恒大問題」をすでに手遅れな状況まで先送りしてしまった。
*1香港ドル=18円換算(1月30日時点)