この記事は2024年2月4日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「ベルテクスコーポレーション【5290・スタンダード】」を一部編集し、転載したものです。
コンクリート二次製品上位メーカー
防災関連強みに営業利益率14%
ベルテクスコーポレーションは「安心のカタチを造る。」をキーワードに、社会インフラを支えるコンクリート二次製品を設計・製造からメンテナンスまで一気通貫で提供する。特に、水害や土砂災害対策向けの高付加価値製品が強み。今後は災害対策と増加するメンテナンス需要を背景に、独自の製品群で安定的な成長を目指す。
▼土屋 明秀 社長
雨水貯留槽から防衛関連まで
提案モデルで価格競争回避
同社が製造・販売するのは「コンクリート二次製品」。コンクリート二次製品とは、あらかじめ工場で成形して現場に搬入するコンクリート製品のこと。『プレキャストコンクリート』とも呼ばれ、現場での生コンクリート打ちが不要で工期を大幅に短縮できる。人手不足が進む中、世界的にもコンクリート二次製品の利用が拡大しつつある。
同社は「コンクリート事業」「パイル事業」「防災事業」「その他」の4つのセグメントで事業を展開。調査や劣化診断、製品開発、設計、製造、施工、メンテナンスまで一気通貫で提供する。直径3メートルもの巨石を受け止められる防護柵や、豪雨洪水を防ぐために流量を調節するバルブなど、独自の高付加価値製品群を持つ。
2023年3月期の売上高は390億9500万円(前期比4・2%増)、営業利益は55億6000万円(同9・5%減)となった。
売上の4分の3を占める「コンクリート事業」では、組立式マンホール、ボックスカルバート、豪雨災害を防ぐ地下式雨水貯留槽などを展開する。国内のマンホールのうち約3割は同社の製品で、ボックスカルバートでは国内首位。現在工事中の大阪万博開催地の地下水路にも同社の製品が使われている。
「パイル事業」では土木、建築分野で基礎杭として使用されるコンクリートパイルを製造・販売。「防災事業」では落石・土砂崩れ防護のためのループフェンスやロックバリアを手がける。
コンクリート二次製品を製造する国内企業の中で同社の売上高は4位。しかし営業利益率は14%と首位だ。独自の提案型ビジネスモデルで、価格競争に陥らず高い利益率を確保してきた。
「当社でしか実現できない複雑な製品や施工を、事業の発注者である自治体に直接提案していく。製品が採用されれば施工も行います。汎用品ではなく発注者採用の指定製品ですから、プロジェクト全体の工事を請け負うゼネコンに対しても、価格交渉力が強いのが特徴です」(土屋明秀社長)
また、同社は従来から防衛関連事業に深く携わってきた。最近では、同社が所属する研究会が提案したプレキャストの火薬庫の技術が採用され、築造した。さらに23年7月には、防衛施設学会より避難施設を設計する際のガイドラインが発刊されたが、同社もその策定に携わったという。
同業4社が水平統合
高付加価値製品に資源集中
同社はコンクリート二次製品を扱う4社の水平統合で生まれた。11年に「ハネックス」と「日本ゼニスパイプ」、続いて12年に「羽田コンクリート工業」が統合してゼニス羽田が発足。新たに持株会社であるゼニス羽田ホールディングスが誕生した。18年には「ホクコン」が参加して、新たな持株会社ベルテクスコーポレーションを設立。この背景には国内の下水道整備が一段落し、自治体の予算が急激に減った流れがある。
「14年に統合した3社は、11年時点ではみな基本的に損益ゼロかマイナス。しかしそれぞれの潜在能力は大きいと思った。私は日本ゼニスの出身ですが、いろいろなシミュレーションを通して『一緒になれば間違いなくシナジーが起こり、儲かる会社になる』と夢を語ってきました」(同氏)
各社とも、顧客の要望で採算が取れなくても止められない製品が多数あった。採算の低い製品を廃止することで、一時的に売上高を下げながらも利益を拡大してきた。
「18年にホクコンと統合する時は、全社に『売上を下げるぞ』と宣言したんです。そして不採算製品や汎用品の売上は下げて、各社の技術を活かした付加価値の高い製品に販売をシフトしました。得た利益は、さらに製品の付加価値を上げることに振り向けてきました」(同氏)
24年3月期ROE10%以上
ベトナムでの展開も視野に
同社は21年5月に第2次中期経営計画を発表。最終年度となる24年3月期までに、営業利益61億円、ROE10%以上の維持を目標としている。
国が進める国土強靱化の柱である防災インフラ整備、ライフライン強靭化の方針は、同社にとって力強い追い風だ。今後はメンテナンスへの注力、そしてさらなる付加価値製品の開発を進める。
「コンクリートの寿命は50年と言われ、まさにこれからメンテナンス需要が拡大するところ。当社はメーカーの中でもメンテナンス部隊が充実している。さらに強化すれば大きな可能性があると考えています」(同氏)
高付加価値製品の販売は急拡大しないと見るが、大きな災害に備え今後も開発を続ける。
「高付加価値製品はもちろん、汎用品であっても二番煎じでなく、当社でしかできないものを作っていきます」(同氏)
23年4月には、ベトナムに事務所を開設した。
「東南アジアには大きな需要があるが、従来と同じことをやっても中国や韓国に資本力で負ける。当社でしか展開できない製品がたくさんあるので、その中からベトナムに入れられるものをしっかり見極めたい」(同氏)
配当に関しては、安定的な普通配当に加え、適宜特別配当・記念配当を検討。加えて自己株買いにより、総還元性向30%をめどにして実施する方針だ。24年3月期通期では、前期実績より10円増の1株40円を予定している。
2023年3月期 連結業績
売上高 | 390億9,500万円 | 4.2%増 |
---|---|---|
営業利益 | 55億6,000万円 | 9.5%減 |
経常利益 | 58億3,700万円 | 9.3%減 |
当期純利益 | 37億4,200万円 | 11.8%減 |
2024年3月期 連結業績予想
売上高 | 410億円 | 4.9%増 |
---|---|---|
営業利益 | 61億円 | 9.7%増 |
経常利益 | 63億円 | 7.9%増 |
当期純利益 | 42億円 | 12.2%増 |
※株主手帳24年2月号発売日時点