建設業界にてキャリアをスタートし、コンストラクションマネジメント業務に従事。 その後、不動産業界へ転向し、不動産流動化、不動産ファンド設立、案件ソーシング等幅広い経験を積む。また、不動産ファンド事業における投資家対応、ファイナンス業務、物件取得及び売却業務等を経たのち、2014年に当社に参画し、自然エネルギー事業の立ち上げを推進。2015年に代表取締役に就任。
これまでの事業変遷について
ー貴社の事業内容と事業変遷についてお聞かせいただけますでしょうか?
霞ヶ関キャピタル株式会社代表取締役・河本氏(以下、社名・氏名略): 当社は現在、複数の事業を展開しており、物流施設(冷凍冷蔵倉庫)、ホテル、ヘルスケア施設などの開発事業を行っていますが、前提として私達は人から応援され、世の中の役に立つ事業しか展開しないと決めています。これがリクルーティングや社内のカルチャーの醸成にも役に立っています。また、逆にこのような考えが無いと、会社の一体感や世の中にファンは作れないと考えています。
当社は2011年設立で、東日本大震災で被災したショッピングセンターの再生からスタートしました。その当時は世の中に役に立つというのはそこまで意識はしてはいませんでしたが、もちろん良いことをやろう、その上で大前提として利益が出ることをやろうと考えていました。世の中に役立つという考えは、ショッピングセンターの再生がうまくいき、自然エネルギーを手掛けるようになる中で、「自分たちがやっていることは正しいし、事業化できる」という確信とともに徐々に醸成されていきました。
当初は小川と二人で合同会社としてやっていました。2015年には事業拡大や信用力を向上するためには上場すべきであると考えて株式会社化し、2018年10月にマザーズ市場(現グロース市場)に上場しました。2023年10月からはプライム市場に区分変更して現在に至ります。
自社事業の強み
ー貴社のビジネスモデルについてお聞かせいただけますか?
河本: 当社は通常の不動産開発会社と比べて、独自性のあるビジネスモデルになっています。
通常は土地を購入後、建物を建て、それを投資家に売却することで利益を得ます。しかし当社が自己資金で仕入れるのは土地だけです。そしてその土地を不動産ファンド投資家ではなく、開発ファンド投資家という方に売ることで土地の売却益を得るのです。(画像①:収益ポイント①)
開発ファンド投資家に売却後、建物の建設は開発投資家の資金を使用します。その際にプロジェクトマネージャーとして材料の発注や必要な手続きなどを実施します。ここでプロジェクトマネジメントの報酬を開発ファンド投資家からいただくのです。(画像①:収益ポイント②)自社の資金で建物を建てているわけではないので、自社開発に比べて多くの案件の開発を手掛けることができます。
建設が完了したら、開発ファンド投資家から不動産ファンド投資家に売ります。その際、期待収益を超過した分に対して成功報酬をいただくのです。(画像①:収益ポイント③) 通常の自社開発では、建物を売却するまで最初の報酬を得ることができません。プロジェクトが始まってから2年〜3年ほどかかります。しかし当社のモデルでは、土地売却時点で収益を得ることができるのです。
ー今までにない画期的なビジネスモデルですね。このビジネスモデルにおいて、貴社の強みになっているのはどのような点でしょうか。
このモデルによってリスクを低減し、短いサイクルで収益を得ることができる点が強みになっています。短期間で収益を得られる構造であるため、土地を売却する度に、利益が積み上がり、さらに大きなプロジェクトに着手することができるのです。
これまでは収益ポイント①の土地売却益が利益の大半でした。開発物件が竣工や稼働して、開発ファンド投資家から不動産ファンド投資家に売却するステージの物件が増えてきたことで成功報酬(収益ポイント③)が増えてきました。なお、土地売却後の案件が増えてきているので、今後のストック収入(収益ポイント②、④)も増加していく予定です。
ーありがとうございます。開発アセットの多様化も進んでいるようですが、こちらについて詳しく教えてください。
河本:現在では物流事業、ホテル事業、ヘルスケア事業、海外事業の4つを柱にしています。
2021年に中期経営計画を策定した際には、物流施設開発における収益を中心として考えていました。ヘルスケア施設や海外(ドバイ)については、中計策定時には存在しませんでしたが、想定以上に社員が頑張ってくれたことで立ち上がった事業です。
また、コロナ禍を経てホテル事業は急速に回復、物流事業とあわせて当社の主力事業へと成長してきました。今後はヘルスケア事業と海外事業の4本柱で中期経営計画を当初より1年前倒しで達成したいと考えています。
現在一番関心のあるトピック
ー現在、世の中全般や事業で関心があるトピックについて教えて下さい。
河本: まず、世の中全般に対して考えていることとしては、私たちの世代が日本をおとしめてしまったと考えています。私は50歳ですが、私の祖父の世代は戦後日本を作り、父は昭和バブルの強い日本を作ってくれました。しかし、私たちの世代が失われた30年を作ってしまい、その結果として下の世代の活気がなくなってしまっていることに申し訳なさを感じています。そして、これは私たちの世代でどうにかしないといけないと考えています。
このような考えから、一人ひとりが変わっていかないと次の世代から後ろ指さされる、と思い私たちの会社ではスローガンとして「変化を起こす側へ、回れ。」という言葉を採用しています。
そして、このような考えを持っている中で現在関心のあることが3つあります。
1つ目は、既成事実化されている見えない壁をどれだけ溶かしていけるかです。壁を壊すというよりは溶かすことだと考えています。やってはいけない、できない、越えられないと思い込んでいることを溶かしていくことが大事だと考えています。
2つ目は事業承継です。こちらは世の中の大きな課題であるため、真剣に取り組まないといけないと考えています。
3つ目はインフレです。インフレを経験していない方の方が多いと思いますが、ようやく日本が今来ているインフレのチャンスに対して、好循環を回せるかということに関心があります。うまく使ってインフレの世の中を作りにいくことにワクワクドキドキしています。
思い描く未来像
ー今後どういう未来のプランを描かれているのかお聞かせいただけますでしょうか?
河本: いろいろやりたいことはありますが、建物づくりだけでなく、オペレーション体制を構築するところまで力を入れていきたいと考えています。
今私達の本業はデベロッパーとして建物づくりをしていますが、まだまだ建物の価値の最大化や最適化はされていないと思っています。生産性に直接つながるような物流倉庫や、満足度に直接つながるホテル、生産性と満足度の両方につながるヘルスケア施設では自らオペレーションをやりきらないと最適な形での建物づくりはできないと考えています。そのため、現在はオペレーション体制や最適なシステムをどう追求できるかという点にすごく力を入れ始めています。
デベロッパーだからといってシステムを作っていけないというルールはないので、自らシステムを作ろうと考えて進めています。それによって、業界の縦割り感や見えない壁をどんどん溶かしていき、それによって世の中をもっと最適化していきたいです。そして、私たちはその成功モデルを日本で作り、海外にも展開したいと考えています。
- 氏名
- 河本 幸士郎(こうもと こうしろう)
- 会社名
- 霞ヶ関キャピタル株式会社
- 役職
- 代表取締役社長