筑波大学在学中に家計簿アプリ「Dr.Wallet」の開発を始め、2012年に同社を創業。法人向けサービス「TOKIUM経費精算」や請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」を提供し、2021年から2022年にかけて約35億円の資金調達を実施。電子帳簿保存法やインボイス制度への対応、働き方改革やDX推進など法人の支出管理業務における課題解決に取り組む。今後も「未来へつながる時を生む」ためのサービス提供を目指す。
これまでの事業変遷について
ーTOKIUMの創業から現在に至るまでの変遷についてお聞かせいただけますか?
株式会社TOKIUM代表取締役・黒﨑氏(以下、社名・氏名略):創業は2012年のことで、当時私は筑波大学の学生でした。最初は「Dr.Wallet」という家計簿アプリからスタートしました。大学生として自分の家計を管理する必要があると感じたのがきっかけです。また私が情報学部で学んでいたこともあり、テクノロジーを用いて紙よりも簡単に家計簿をつける方法はないかということを模索していました。
初めは主婦を中心としたユーザーを想定していましたが、私は個人の支出がその人の人生に大きな影響を与えると考えていました。その後、資金調達を行い、事業を拡大していきました。東京に拠点を移した2016年には、法人向けの支出管理サービス「TOKIUM経費精算」をリリースしました。これが私たちの事業の大きな転換点となりました。
ー法人向けに参入した際の経緯を教えていただけますか?
黒﨑 : はい、私たちは家計簿アプリを展開していましたが、収益化に苦しみ、資金繰りにも悩んでいました。そこで、より直接的な価値提供を目指し、BtoBのSaaSモデルへと転換しました。我々は一つ一つの企業の課題を丁寧に解決し、その価値に対して報酬をいただく、という原始的なビジネスモデルに焦点を当てたのです。
ーユニークなビジネスモデルについてもう少し詳しくお聞かせいただけますか?
黒﨑 :もちろんです。当社はオペレーターを2000人抱えており、単なるソフトウェアではなく、人の力も活用して課題を解決するシステムを提供しています。これが他にはない特徴です。しかし、コロナの影響で交通費などの経費の処理が激減し、リソースが余ってしまいました。そこでお客様に直接連絡し、何かお手伝いできることはないかと提案したところ、経理の方が請求書の受け取りを会社で行わなければならずコロナ禍でも出社しなければいけないという悩みを持っていました。そこで私たちが請求書を代行で受け取ることをサービスとして始めました。これが「TOKIUMインボイス」として発展し、現在は会社の中心的なサービスとなっています。
自社事業の強み
ーTOKIUMの主軸となるサービスについて詳しくお聞かせいただけますか?
黒﨑: はい、TOKIUMの中心となるサービスはTOKIUMインボイスです。これはTOKIUMが請求書を代行受領・保管し、支払業務の完全ペーパーレス化を可能にするクラウドサービスです。また、TOKIUMインボイスとTOKIUM経費精算を併せて利用することで、一つのプラットフォームで請求書支払いと経費精算の一元管理を実現しているのが特徴で、会計クラウドやその他のサービスとは異なります。
ーコロナ禍での新しい取り組みについても教えてください。
黒﨑 :コロナ禍において、オフィスに届く請求書をTOKIUMのセンターで代理受領するという新しいオペレーションを導入しました。これにより、請求書を開封し、スキャンし、データ入力するプロセスが自動化され、お客様の負担も軽減されています。
ー具体的にはどのような特徴がありますか?
黒﨑: はい、私たちのサービスは、アウトソーシング会社やシステム会社とは一線を画します。例えば、請求書をダウンロードする形式の請求書をオペレータが代わりに受け取り自動でデータ化することもできます。また、請求書をダウンロードする形式の請求書を代わりに受け取ることもできます。これにより、顧客はTOKIUMインボイスを使用するだけで、会社の請求書がデジタル化され、システム上で一元管理ができるという価値を提供しています。
現在一番関心のあるトピック
ー現在最も関心を持っているトピックやその理由についてお聞かせください。
黒﨑:私は資産管理の奥深さに非常に関心を持っています。特に、企業がどのように意思決定をして物やサービスを購入するかについて興味があります。単に安価なものを選ぶというわけではなく、価値あるものを適正な価格で購入することの重要性を感じています。BtoB市場では、情報の流通がBtoC市場と比べて限られており、販売者と購入者の間には情報格差が存在すると感じています。企業によって購買部門が過去の意思決定履歴を活用できている場合と、そうでない場合があるのです。
ー購入決定において、このような履歴がどれほど役立っているのでしょうか。
黒﨑:新たな担当者が着任しても、過去の購買データを参照することで、迅速かつ適切な判断が可能になると考えています。過去のデータが現在の意思決定に生かされているのです。私は個人的に、過去の意思決定が資産となり、それが新たな決定に役立つほうが魅力的だと考えています。
ー経営判断におけるご自身の考え方についてもお聞かせいただけますか。
黒﨑 :意思決定をする際は事実を重視しています。特に新しいサービスを開発する際は、客観的なデータやベンチマークスタディを大切にしています。また、直接お客様の声を聞き、その課題を理解することも欠かせません。これらの情報を基に、最適な決定を下すよう努めています。
ーTOKIUMが新しいサービスや機能を開発する際にもそのような点を重要視しているのでしょうか?
黒﨑 :私たちは、顧客の声を正しく聞き、現地現物を重視しています。事実に基づいたデータ収集を行い、感覚や不確かなトレンドに流されない意思決定を心がけています。
思い描く未来像
ー黒﨑さんご自身が描くTOKIUMの未来像についてお聞かせいただけますか?
黒﨑: 当社はこれまで、請求書や領収書といった書類の効率的な管理サービスを提供してきました。今後は、書類の中身にまで踏み込んだサービス展開を目指しています。例えば、支出の妥当性や意思決定の改善点を明らかにすることで、より価値のあるインサイトを提供したいと考えています。また、請求書や領収書に限らず、契約書など他の書類の管理も、顧客にとって価値ある形で進化させていきたいですね。
ー現在重点的に取り組んでいるプロジェクトについて、具体例を挙げていただけますか?
黒﨑: 最近では、2023年10月に導入されたインボイス制度に対応するための機能開発などにあたっていました。これにより、取引先がインボイス登録事業者であるかを自動的に判別できるなど、お客様の経理業務における負担を軽減することが可能になるでしょう。 最終的には領収書や契約書、発注書など、さまざまな書類をTOKIUM上で一元管理し、分析までできるようにすることを目指しています。支出に関わる書類をオールインワンで扱えるようにすることが我々の目標です。
ZUU onlineのユーザーへメッセージ
黒﨑: 挑戦的な経験は人のポテンシャルを開花させます。新しいことを学び、チームワークを発揮して乗り越えていくことが大切です。リーダーには、このような経験を促進する仕組みを大事にしてほしいと思います。TOKIUMは無駄な業務を減らし、より良い世界を目指す人々のために、未来へつながる時を生むことに尽力しています。一緒に新しい時代を創造していきましょう。
- 氏名
- 黒﨑賢一(くろさき けんいち)
- 会社名
- 株式会社TOKIUM
- 役職
- 代表取締役社長