本記事は、横山 信弘氏の著書『正しく立てて成果につなげる 目標達成の全スキル』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

正しく立てて成果につなげる 目標達成の全スキル
(画像=marzan/stock.adobe.com)

モチベーション管理の「大いなる勘違い」
~ハーズバーグの二要因理論~

モチベーションは「上げるもの」ではありません。ハーズバーグの二要因理論を手がかりに、多くの人が勘違いしがちなモチベーション管理の本質を理解しましょう。

「満足」と「不満足」は対極の要因ではない

正しいモチベーション管理を行ううえで、ぜひ知っておいてほしい理論があります。心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論(Motivation-Hygiene Theory)」です。
ハーズバーグは、人が仕事で感じる「満足」と「不満足」は、対極にあるのではなく、まったく別の要因で生まれると説きました。

① 衛生要因(Hygiene Factors)

会社の方針、上司との関係、給与条件、作業環境など、「不満足」にかかわる要因です。
これらが不足すると強い不満を感じますが、満たされても「当たり前」と感じるだけで、やる気がそれほど上がるわけではありません。役割は「マイナスをゼロにすること(不満の防止)」です。

② 動機付け要因(Motivators)

達成感、承認、責任、成長の実感、仕事そのもののやりがいなど、「満足」にかかわる要因です。
これらがあると満足度は高まりますが、なくても「不満」には直結しません。役割は「ゼロをプラスにすること(意欲の促進)」です。

「水」と「アイスクリーム」で考える

わかりやすく言えば、衛生要因は「水」、動機付け要因は「アイスクリーム」です。喉がカラカラに乾いているとき(不満があるとき)に、「アイスクリーム(やりがい)あげるよ」と言われてもうれしくありません。まずは水で喉を潤す(不満を解消する)ことが先決です。

ところが多くの現場では、給与や人間関係(衛生要因)に不満がある状態で、「夢を持て」「成長しよう」とアイスクリーム(動機付け要因)を無理やり食べさせようとしています。これでは逆効果です。
まずやるべきことは、不満の解消なのです。

ハーズバーグの二要因理論

正しく立てて成果につなげる 目標達成の全スキル
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「ニュートラルな状態」を意識しよう

人のモチベーション状態は、大きく3つに分けられます。

(1) モチベーションが高い状態
(2) ニュートラルな状態(高くも低くもない)
(3) モチベーションが低い状態


多くの人は、(1)と(3)の2つしかないと思い込んでいます。そのため、「低いから、高くしなければ」と焦ってしまいます。
しかし、本来目指すべきは(2)の「ニュートラルな状態」です。これを人体の状態にたとえると、次のようになります。

【1】 高い= 興奮している状態
アドレナリン全開でテンションが高い状態です。一時的な馬力は出ますが、長続きしません。

【2】 ニュートラル= 健康で安定している状態
落ち着いて目の前のことに集中できる、最もパフォーマンスがよい状態です。

【3】 低= 病気で体調が悪い状態
やる気が出ず、思い通りに行動できない状態です。

つまり、目指すべきは「ニュートラル= 健康な状態」であり、「高モチベーション=自分を奮い立たせている状態」ではありません。興奮状態を維持しようとするのは、不自然なのです。

モチベーション状態とニュートラルの重要性

正しく立てて成果につなげる 目標達成の全スキル
(画像=正しく立てて成果につなげる 目標達成の全スキル)

「お腹が痛いからアクション映画を観る」?

「モチベーションが下がったから上げたい」という発想は、たとえるなら次のようなものです。

「お腹がキリキリ痛むから、アクション映画でも観て興奮したい!」

お腹が痛い(=衛生要因が欠けている)ときに、アクション映画(=動機付け要因)を観ても、痛みは治りません。むしろ悪化するかもしれません。
本来すべきことは、まずお腹を治すこと(衛生要因を整えること)です。
健康(ニュートラル)な状態に戻りさえすれば、自然と動けるようになります。アクション映画を楽しむのは、そのあとで構いません。

モチベーション管理の第一歩は、「上げようとすること」ではなく、「下がらない環境を作ること」です。
ハーズバーグの理論を軸に、まずは自分やチームの「衛生要因」を整えることから始めましょう。

モチベーションは「設計」で守る

大切なのは、モチベーションを感情の問題として扱わないことです。
やる気が出る日もあれば、出ない日もある。それ自体は自然なことです。重要なのは、「どうやって上げるか」ではなく、「下がる原因を取り除けているか」を点検することです。

目標が曖昧、成果が見えない、努力が評価されない── こうした状態は確実に意欲を下げます。逆に言えば、これらを整えるだけで人は自然に動きやすくなります。
モチベーション管理とは、気合いではなく環境や仕組みを整える技術なのです。

Point
☒ 不満を生まない環境・制度・人間関係を整える
☒ 健康的な精神状態を維持する
☒ 達成感・承認・やりがいなどをプラスする

正しく立てて成果につなげる 目標達成の全スキル
横山 信弘(よこやま・のぶひろ)
株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役会長。企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。15年間で3,000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラム、昨今はYouTubeチャンネル『予材管理大学』を通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。『日経ビジネス』『東洋経済』『PRESIDENT』など、各種ビジネス誌への寄稿、多数のメディアでの取材経験がある。メルマガ「草創花伝」は3.8万人超の企業経営者、管理者が購読する。著書は『絶対達成マインドのつくり方』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズを含む26冊。累計50万部超。多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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