トヨタのMBOに必要な資金は80兆円台

トヨタのMBOには、どれぐらいの資金が必要なのか?トヨタの時価総額は61兆4900億円。豊田家全体の持株比率は1%程度と言われており、60兆円分を超える株式を取得しなくてはならない。しかも、これは現在の株価であり、MBOではプレミアムを上乗せしなくては応募してもらえない。

今年のMBOでのプレミアムは最低でも36.02%、平均では42.09%だ。トヨタに当てはめると、最低でも82兆円、平均では85兆円を超える資金が必要になる。2018年6月に完了した米AT&Tによる米タイム・ワーナーの買収総額は850億ドル(約12兆7000億円)なので、その6倍を超える超巨額案件となる。

実現すれば世界でも最高額となる買収だが、これだけの資金を創業家に融資できる金融機関やファンドは存在しない。豊田家によるMBOは、まず不可能だ。トヨタのMBOにここまで巨額の資金が必要なのは、発行株式数が多いことに加えて、創業家の持ち株比率が極端に低いからだ。

では、筆頭株主ならどうか。現在、トヨタの筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行で、持ち株比率は11.4%。これなら10%の株式を追加取得すれば、豊田家は筆頭株主になれる。市場で買い入れれば6兆1490億円で、国内では過去最高の武田薬品工業によるアイルランドのシャイアー買収の6兆2000億円に並ぶ。MBOならば8兆5000億円が必要で、国内最高額を更新する。

しかし、筆頭株主とは言え、この程度の持ち株比率では、少数株主やアクティビスト(物言う株主)からの影響を避けることはできない。豊田家としては、従来通り社内の人事権を掌握することで経営を動かし続けるしか、創業家支配を守る方法はなさそうだ。

文:M&A Online