総括
FX「王者メキシコが4月最弱(年間では2位に後退)。外部から3連発食らう」メキシコペソ見通し
予想レンジ 8.8-9.3
(ポイント)
*王者メキシコペソが4月はここまで最弱通貨
*IMFの成長見通し下方修正、米金利上昇、中東緊張でドルに抜かれ2位に後退
*IMFの見方には矛盾もある
*ヒース中銀副総裁は追加利下げに慎重
*米企業のメキシコ投資は加速している
*USMCAでの為替介入はあるのか
*スーパーペソの批判はまだ大きくない
*大統領も強いペソを賞賛
*4月9日に年初来高値の9.339をつけた
*3月コア消費者物価は低下、米国のそれは上昇
*失業率が大幅改善、他の指標もまずまず
*次回政策金利決定は5月10日
*米とメキシコ、半導体サプライチェーンで連携
*利下げはインフレ対策終了のシグナルでない=中銀
*フィッチ、メキシコの2024年の成長予測を2.2%に下方修正
*政府の24年成長見通しは2.5-3.5%
*自動車輸出、郷里送金快調
*気になるのは財政支出拡大と財政赤字拡大
*トランプ大統領が誕生すればメキシコに一波乱あり
(王者メキシコが4月最弱(年間では2位に後退)、外部から3連発食らう)
2年連続で通貨最強、今年も通貨最強を誇っていたペソが、4月16日にドルに首位を奪われ2位に後退した。年初来、対円で9.04%高、ドル円が9.66%高。対ドルでは17台に乗せた。
ドルに逆転された要因は、IMFが2024年の成長見通しを2.7%から2.4%へ下方修正したこと、米金利の上昇(メキシコは利下げ)、中東緊張だ。
4月9日に対円で年初来高値の9.339をつけたが、その後発表された3月消費者物価のコア指数が低下したことで反落、一方、米消費者物価の上昇と、中東緊張で有事のドル買いが進みペソはやや弱含み推移している。そしてIMFの成長見通し下方修正が続いた。
メキシコ株価指数も金利上昇や中東リスク回避で下落、年初来2.87%安。10年国債利回りは10.4%へ上昇した。
(IMFの成長見通し下方修正)
IMFは4月16日、メキシコの2024年の経済成長見通しを1月の2.7%から2.4%、2025年を1.5%から1.4%へ下方修正した。IMFはロペス・オブラドール大統領時代の積極財政から、6月に始まる新政権が緊縮財政をとると見ている。また、昨年4QのGDPが3Qの3.5%2.5%へ減速したことを考慮したという。米国の雇用ひっ迫が今年緩和して、郷里送金も減額するとしているが、米の雇用はまだ強い。米国の成長見通しは0.6%上方修正している。米国が堅調になればメキシコにも恩恵があるが、下方修正したことは疑問が残る。メキシコ政府の24年成長見通しは2.5-3.5%だ。IMFは1月に2.1%から2.7%、そして現在2.4%とした。よくぶれる。やや矛盾する見通し修正だが、2.4%は冷静に見ると悪い数字でもない。
これにパウエル議長の「インフレ高止まりで利下げを急がず」との発言で米墨金利差の縮小が意識されたり、中東情勢緊迫で有事に強いドルが買われペソを下押しした。
ペソ安が暫く続いても、ニアショリングを基にするメキシコのファンダメンタルズは強固だ。いずれペソは上昇してくる。
(ヒース中銀副総裁は追加利下げに慎重)
ヒース中銀副総裁は「最低賃金をさらに引き上げると、平均賃金が上昇し始めるだろう。また拡張的な財政政策により、今年はインフレ抑制に向けた中銀の取り組みが複雑化している」と発言した。
副総裁は「前回の利下げは、実際に金融スタンスを緩和したわけではなく、現状を維持するために小幅な調整を行っただけである」と述べた。
3月の金融政策決定会合の議事要旨でも「利下げについては金融政策の正常化やインフレ水準に対する安心感として解釈されるべきではない、むしろインフレ状況とその見通しを踏まえた現行の制限的措置の調整である」との認識が示されている。
今後の中銀の金融政策については、国内のインフレ動向に加え、消費者物価が上昇し、利下げを急ぐべきではないという姿勢を示し始めたFRBの動向も影響してくる。
次回政策金利決定は5月10日(金)とデータチェックには時間はある。2月小売売上、経済活動指数、4月前半と4月全体の消費者物価、3月雇用統計、1Q・GDPなど重要指標が多数控えている。
(一方、ニアショアリングは好調、米企業の投資が加速)
経済省によると、年明けから3月15日までに発表された民間企業のメキシコ投資の合計は315億1200万ドルに達した。2023年の単年実績(年末時点の暫定値)の9割近くに相当する規模だ。
新規投資で最も多いのは米国企業で、全体の6割近くを占める。23年に労働争議が相次いだ米国では賃金水準が上昇し、メキシコ進出のコスト効果は大きい。米国の主要都市への配送ルートがすでに確立されているのもアドバンテージとなっている。
米中対立に収束の兆しが見えず、政策リスクを避けて拠点を再編する「ニアショアリング」では米国と長大な国境線を共有する優位性が生きる。1〜3月に発表された投資案件は4万人近い新規雇用を生み出すとみられており、巨額の投資の誘致を目指す自治体による綱引きも過熱している。
テクニカル分析
上昇に変調、ボリバン2σ上限から下限へ下落
日足、4月9日の年初来高値からボリバン下限へ下落。3月19日-4月18日の上昇ラインがサポート。4月16日-17日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き、20日線を下抜く。
週足、4月8日週、今週と上ヒゲが長く重くなってきた。ボリバン2σ上限へ上昇後に反落。1月1日週-3月11日週の上昇ラインがサポート。2008年10月6日週-2024年4月8日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、23年7月からの山なり状態を上抜いた。4月は現在陰線、上ヒゲ長い。2月-3月の上昇ラインがサポート。2008年8月-2024年4月の下降ラインが上値抵抗。
年足、23年で3年連続陽線。今年もここまで陽線。14年-22年の下降ラインを上抜く。22年-23年の上昇ラインがサポート。
VAMOS MEXICO
USMCAでの為替介入はあるのか
今週は、日韓米の財務相会合で日本円と韓国ウォン安が議論された。ただ結論は最近の日本円及び韓国ウォンの急激な下落に対する日本と韓国の深刻な懸念を認識しつつ、既存のG20約束に沿って外国為替市場の動向について緊密に協議し続けるとなった。
さてUSMCAという新しい米国・メキシコ・カナダの貿易協定でも為替についての取り決めがある。
①市場に基づく為替レートの達成と維持
②為替介入を含む競争的な通貨切り下げの自制
③経済の基礎的条件を強固にし、マクロ経済と為替レートの安定条件を強化する
為替介入のハードルは高い