ストライク<6196>は3月21日、スタートアップと事業会社の提携促進を目的とした交流イベント「第21回Conference of S venture Lab.」を都内のシェアオフィス「MIDORI.so NAGATACHO」で開催した。イベントでは「スタートアップM&Aのこれから」と題したトークセッションが行われ、ストライクの荒井邦彦代表と、独立系のベンチャーキャピタル(VC)、フューチャーベンチャーキャピタルの元代表で現在はABAKAMの松本直人代表が登壇。イベントには現地・オンラインを含め150人が参加した。
今回のイベントでは、買い手、売り手にスタートアップも含む成長戦略としてのM&Aを「イノベーション型M&A」と称し、スタートアップの現状や課題について議論した。
イノベーション型M&Aの今と課題
まず、イノベーション型M&Aの現状について、荒井氏は「普及は、まだこれから」と述べ、M&A仲介事業者が尽力することで増やせるはずと強調。一方で、2027年までにスタートアップへの10兆円規模の投資目標が盛り込まれた「スタートアップ育成5か年計画」が政府主導で進められるなど、政策のほうが進展していると指摘した。
松本氏がVCの視点から、イノベーション型M&Aの課題に言及。「IPOに比べ、プレミアムが付かない」「VCはマイナー株主なのでEXIT(出口戦略)の意思決定に影響を与えにくい」としたうえで、荒井氏は松本氏の意見に賛同しつつ、「昔はIPO以外、選択肢はないという人も多かったが、M&Aも視野に入れるベンチャー・キャピタリストが少しずつ増え始めている」と、変化の兆しが生じていると見解を示した。
松本氏も2022年、2023年のスタートアップの状況を振り返り、スタートアップが資金調達をする際、リソースやシナジーも考慮して、出資を求めようになっているとし、スタートアップ側にも意識の変化が生じていると指摘。その要求は、出資よりも、M&Aの考え方に近いとした。
イノベーション型M&Aのメリットとポテンシャル
KDDIがIoTプラットフォームを提供するソラコムを200億円で買収したM&Aも話題となった。荒井氏は、イノベーション型M&Aについて、大企業のヒト・モノ・カネのリソースを活用でき、大企業はスタートアップの突破力や勢いを生かすことができ、買い手と売り手の双方にメリットがあると指摘。「補完し合ったほうが事業の成長が早い」と述べた。
その後で松本氏が「スタートアップ育成5か年計画」の投資について言及。巨額の投資額が盛り込まれているが、投資額は明記されつつも、回収目標については触れられていないと松本氏は指摘した。その話題に荒井氏もうなずきつつ、IPOだけでは投資が成立せず、「絶対にM&Aをやらざるを得ない状況になる」と強調。要件を満たせば、最大200億円まで所得控除が適用される「オープンイノベーション促進税制」にも触れて、イノベーション型M&Aは拡大していくとの見解を示した。