化学や鉄鋼、食品製造などが含まれるプロセス産業では、プロセスオートメーションにより自動化や省力化が実現可能です。しかし「具体的にどのような活用方法があるのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。

本記事では、プロセスオートメーションのメリットや業界別の活用例、活用できる制御機器について解説します。

目次

  1. プロセスオートメーション(PA)とは?
  2. ファクトリーオートメーション(FA)との違い
  3. プロセスオートメーションのメリット
  4. プロセスオートメーションで使用する制御機器
  5. プロセスオートメーションは生産性の向上に役立つ

プロセスオートメーション(PA)とは?

プロセスオートメーション(PA)とは?メリットやFAとの違いを解説
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

プロセスオートメーション(PA:Process Automation)とは、化学や鉄鋼、石油などのプロセス産業における自動化を指します。これまで人手で行っていた業務をデジタル技術の活用で自動化する取り組みです。2024年現在、製造業ではデジタル化が推進されていますが、プロセス産業においてもデジタル技術の活用が進められています。

プロセスオートメーションによる自動化は、省力化や品質の均一化に役立ち結果的に生産力の向上に寄与すると考えられます。

プロセス産業とは

プロセス産業とは、熱や圧力などを利用して化学・物理的な変化を起こし素材製品を製造する産業のことです。例えば食品製造業や醸造、化学・鉄鋼、紙・パルプなどの業種がプロセス産業に該当します。プロセス産業では、危険な作業が伴い温室効果ガスを多く排出する傾向にあるため、安全と環境問題が大きな課題でした。安全性を高めるためにも、さまざまなデジタル技術が活用されてきた業界です。

以降では、代表的なプロセス産業「食品製造業、化学工業、鋳物製造業、鉄鋼業、紙・パルプ業界」について解説します。

・食品製造業
食品製造業とは、食料や飲料、家畜の飼料などといった食品を製造する業種です。食品製造業には、プロセスオートメーションが可能な工程が多くありますが、「体内に入るものを製造する」という性質から高い安全性を維持しなければなりません。また果物や野菜などの個体差がある原料の処理や盛り付け時のトッピングなどは「自動化が難しい」という課題もあります。

・化学工業
化学工業は、化学的な処理を用いて製造や処理を行う業種です。化学的な処理を行う際には、反応の制御が、安全や品質の観点から重要です。これをプロセスオートメーションにより自動化できれば、高い安全性を持つ反応の制御が可能です。

・鋳造工場
鋳物製造業とは、鋳物を製造する業種です。鋳物とは、鋳型に鉄やアルミなどの材料を流し込んで目的の形状に固めたものを指します。鋳物製造業では、造型や注湯などの工程で機械が導入され、自動化が進められています。

・鉄鋼業
鉄鋼業とは、鉄や鋼の製造や加工を行う業種です。鉄鋼業では、高温で大量の粉塵がある過酷な環境で作業をしなくてはなりません。プロセスオートメーションにより機械が業務を代替できれば従業員の負担は低減しますが、自動化を進めるには、このような環境に耐えられる機器が必要です。

他の業種よりも強度の高い機器が求められますが、すでに多くのデジタル技術が計測や制御に用いられています。

・紙・パルプ業界
紙・パルプ業界とは、木材や植物、古繊維からパルプや紙を製造する業種です。紙・パルプ業界でも、計測や制御にデジタル技術がすでに用いられています。例えば商品の包装や紙質の測定などができる機器が登場しています。

ファクトリーオートメーション(FA)との違い

ファクトリーオートメーション

ファクトリーオートメーション(FA)とは、工場における生産工程の自動化を図ることです。一方で、プロセスオートメーション(PA)とはプロセス産業における自動化のことを指します。定義上は、どちらも自動化を図ることで共通していますが、目的や性質が異なるため注意しましょう。

ファクトリーオートメーションは、組み立て作業や製造を効率化するため、高速かつ高精度な製造体制を推進します。しかしプロセスオートメーションは化学反応を取り扱うため高速化には限度があります。反応を無理に進めると品質が低下するため、機器を用いて物体の状態を測定し適切に制御することが必要です。

このようにプロセスオートメーションは、物体の状態を確認しながら製造を制御する機能が求められます。またファクトリーオートメーションは、問題発生時にすぐ機器を止められます。しかしプロセスオートメーションの場合、化学・物理的な反応を扱うため、一度稼働すると簡単に止められない難しさもあります。

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プロセスオートメーションのメリット

プロセスオートメーションにより、以下のようなメリットが期待できます。

ファクトリーオートメーション

省力化・人材不足の解消

プロセスオートメーションを実施すると、プロセス業務を自動化できるため、業務に必要な人材が従来よりも少なくなります。人材不足が深刻化している製造業において、省力化は大きなメリットになるでしょう。

ヒューマンエラーの最小化

自動化が進めば人が携わる業務が少なくなるため、ヒューマンエラーのリスクを最小限に抑えられます。ミスが減るため、品質の向上や業務効率化につながるでしょう。

プラントの自動制御システムによる24時間稼働

自動化が進めば、従業員がいない間でも工場を動かせるため、24時間稼働が可能です。これにより生産力の大幅向上が期待できるでしょう。

作業員の安全確保

プロセス産業には、危険が伴う作業が多くあります。しかしこれらの作業をプロセスオートメーションで代替できれば、作業員を危険にさらす必要がなくなります。労働災害のリスク低減や労働環境の改善に役立つでしょう。

プロセスオートメーションで使用する制御機器

プロセスオートメーションには、以下のような制御機器が用いられます。

  • DCS
  • PLC
  • SCADA

それぞれの概要や利用するメリットを解説します。

DCS

DCSは「分散制御システム」と訳される工場の監視・制御システムです。主に大規模工場やプラントで危険性の高い流体を扱います。名前の通り、制御システムが分散されているため、「一部に不具合が生じてもシステム全体が止まらない」という点がメリットです。

関連記事:DCS・PLC・SCADAの違いとは?制御管理システムを比較

PLC

PLCとは、工場内の設備や機器を制御する装置です。DCSと同様に工場の制御が行えますが、表示装置がないため、人が工場の状況を確認することができません。そのため後述するSCADAの導入が必要です。主にPLCは、中規模から小規模の工場で用いられています。

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SCADA

SCADAとは「監視制御システム」と訳される工場のデータ収集・監視システムです。工場のデータをSCADAに集約することでデータの一元管理が実現します。SCADAは、工場全体を制御するDCSやPLCとは役割が異なり、主にデータの表示や通信のために用いられています。

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プロセスオートメーションは生産性の向上に役立つ

プロセスオートメーションを実施すれば、人手不足の解消や24時間稼働の実現などさまざまなメリットを得られます。今後は、労働人口の減少が予想されているため、生産力を維持するにはデジタル技術を活用して自動化を図る必要が出てくるでしょう。

またプロセス産業は、危険業務が多い傾向にあります。作業員の安全を守るためにも自動化を進めてみてはいかがでしょうか。

(提供:Koto Online