TOB(株式公開買い付け)戦線で5年ぶりに、ホワイトナイト(白馬の騎士)が登場した。ホワイトナイトは敵対的買収の対象となった企業に救い手を差し伸べる友好的な第三者を指す。中堅物流のC&Fロジホールディングスを舞台に攻防戦の火ぶたを切った。
敵対的買収のAZ‐COM丸和に対抗
ホワイトナイトに名乗りを上げたのは、佐川急便を傘下に持つ物流大手のSGホールディングス(HD)。同社は6月3日、C&Fロジの完全子会社化を目的にTOBを始めた。C&Fロジには「桃太郎便」で知られる同業のAZ‐COM丸和ホールディングスがTOBを先行して実施中で、SGHDの参戦で買収合戦に突入しのだ。
渦中のC&Fロジは5月31日、SGHDの対抗TOB開始に賛同する一方、これまで意見を留保していたAZ‐COM丸和のTOBに対して反対を正式に表明した。SGHDはC&Fロジ株の買付価格としてAZ‐COM丸和の3000円を倍近く上回る5740円を提示した。
TOB初日の3日のC&Fロジ株終値はストップ高の5570円に急伸した。4日も連騰が予想され、買付価格のぎりぎりまでサヤ寄せされるのか、それとも買付価格を上回る高値圏まで跳ね上がるのか、株価の行方が注目される。
一方、買付価格3000円のAZ‐COM丸和は到底勝ち目がないのが実情。SGHDに対抗して買付価格の引き上げに動くことになるのか、その出方に関心が集まる。
AZ‐COM丸和はC&Fロジの同意を得ないまま、5月初めにTOBを開始した。これに対し、C&Fロジは意見表明を留保。「複数の真摯な対抗提案が寄せられている」とホワイトナイト出現の可能性に含みを持たせるとともに、「株主の利益を確保するために必要と判断される場合、買収防衛策などの対抗措置の導入を検討せざるを得ない」と態度を硬化していた。
物流業界ではトラック運転手の残業時間規制に伴う「2024年問題」を背景に輸送力不足が懸念される中、輸送力の確保や物流の効率化が共通課題となっている。SGHD、AZ‐COM丸和はいずれも冷蔵・冷凍の低温食品物流を得意とするC&Fロジを傘下に取り込み、成長が期待されるコールドチェーン(低温物流)分野を強化する狙いがある。
【追記】AZ-COM丸和ホールディングスは6月6日、C&Fロジホールディングスに実施中のTOBについて、現在1株3000円としている買付価格を引き上げないことを決めたと発表した。買付期間は6月19日までだが、これを前にC&Fロジの買収を事実上断念した。