ホワイトナイトは5年ぶりだが…

前回、敵対的買収が進行しているところに第三者がホワイトナイトとして現れ、対抗TOBに乗り出した事例は2019年。ただ、このケースは対立関係が一転二転する異例の展開となった。

舞台はホテル・オフィスビル経営のユニゾホールディングス。旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)によるTOBを拒み、友好的な買収者として米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループを呼び込んでHISのTOBを阻止した。

ところが、その後、ユニゾがフォートレスのTOBへの賛同を撤回し、反対に回ったことで、フォートレスの立場が敵対的買収者に180度変わった。最終的には、別の米投資ファンドと組んで日本の上場企業で初めてのEBO(従業員による買収)が成立し、一連の迷走に終止符を打った。当のユニゾは昨年、民事再生法の適用を申請し、行き詰まった。

富士通はソレキア援護に失敗

2017年には情報機器販売会社のソレキアをめぐるTOB攻防戦があった。フリージア・マクロス会長で実業家の佐々木べジ氏によるTOBに反対を表明したソレキアの意向を受けた富士通がTOBで対抗した。買付価格の引き上げ競争の末、敵対的買収側の佐々木氏が勝利し、ホワイトナイトの富士通が敗れた。

ホワイトナイトは敵対的買収を仕掛けられた場合の買収防衛策の一つ。敵対的な企業に買収されるよりも、自らが好ましいと考える企業に買収されることを選ぶもので、買収対象の企業にとっては苦肉の策ともいえる。

実際、過去にそんなに例があるわけではない。敵対的買収の標的になった企業が新たな友好的な買収者を見つけるのは容易でないうえ、敵対的買収に際しては新株予約権の無償割り当てなどによる買収防衛策で対抗するのが主流になっているためだ。

オリジン東秀、明星食品が舞台に

ホワイトナイト成功の代表例となると、2000年代半ばにさかのぼる。一つは弁当店のオリジン東秀、もう一つは即席ラーメンなどの明星食品をめぐるTOB合戦で、いずれも2006年の出来事だ。

オリジン東秀はドン・キホーテ(現パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)の買収を拒否。イオンにホワイトナイトを依頼し、ドン・キホーテのTOBを退けて、同社の傘下に入った。

明星食品に対しては当時日本で猛威を振るっていた米投資ファンドのスティール・パートナーズが敵対的買収を仕掛けた。明星食品の要請で参戦した日清食品(現日清食品ホールディングス)が対抗TOBに勝利した。

今回のC&FロジをめぐるTOBは久々にホワイトナイトが登場して争奪戦が繰り広げられる。AZ‐COM丸和による買付期間は6月17日、SGHDによる買付期間は7月12日までとなっている。

◎「ホワイトナイト」が出現した過去のTOB事例

買収対象 敵対的買収者 ホワイトナイト
2006 オリジン東秀 ドン・キホーテ イオン→成功
明星食品 米スティール・パートナーズ 日清食品→成功
2017 ソレキア 佐々木ベジ氏 富士通→失敗
2019 ユニゾホールディングス エイチ・アイ・エス(HIS) 米フォートレス→※

※HISの敵対的TOBを阻止したものの、その後、ユニゾがフォートレスのTOBに対する賛同を撤回。

文:M&A Online