2024年も下半期に突入し、四半期決算の発表が続いている。コロナ禍からの回復が鮮明で、高額商品の売り上げも好調を維持し、インバウンド需要の恩恵もあり、前年同期比を超えるファッション&アパレル企業が多い。
今回、日本国内のファッション&アパレル関連企業の2024年上半期の時価総額ベスト80社をランキングにまとめた。この80社の時価総額の合計は29兆円を超える。ランキングは上半期の株式市場最終日の6月28日の終値をベースに集計した時価総額による。
まず第1位は、圧倒的なポジショニングをキープし続けているファーストリテイリング(以下、ファストリ)で、時価総額は約12兆9070億円。「ユニクロ(UNIQLO)」や「GU(ジーユー)」を世界展開するファストリは、「ザラ(ZARA)」を手掛けるスペインのインディテックスに次ぐ世界第2位の時価総額を誇っている。SPA企業として世界第3位だった「H&M(エイチ&エム)」を展開するヘネス・アンド・マウリッツの時価総額は約2395億スウェーデン・クローナ(約3兆6883億円)」で、「ルルレモン(lululemon)」を展開するカナダのルルレモン・アスレティカ(約360億ドル=5兆7960億円)」にすでに追い越されており、御三家の顔ぶれも実は入れ替わっている。
ファストリの柳井正会長兼社長は、昨年4月の決算説明会で「10年後に売上高10兆円を目指す」と掲げており、グローバル展開を加速していく考えだ。インドには、2019年10月に首都ニューデリーに「ユニクロ」の1号店を出店して進出を果たし、その後は店舗数を13店にまで増やしている。すでにインド事業は黒字化しており、人口14億人超をターゲットにしたインド戦略を含め、アジア全域における海外戦略をさらに強化していくとみられる。「GU」も今年秋に米国ニューヨークに常設店舗を出店し、オンラインストアも開設して米国全土に商品を配送する。時価総額ランキング第1位のポジションは当面、ファストリが留まるだろう。
第2位は、ディスカウントストア「ドン・キホーテ(Don Quijote)」などを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以下、PPIH)だ。時価総額は約2兆3900億円。2023年6月期の売上高は1兆9367億円で、今期はすでに2兆円を超える勢いで、中期経営計画で掲げた売上高2兆円の目標を1年前倒しで達成する快走ぶりだ。業績を支えているのはインバウンド需要だ。2024年6月期の免税品の売上高は1100億円と過去最高を見込み、訪日外国人の取り込みが業績に直結している。
第3位は、インテリア業界最大手のニトリホールディングス(以下、ニトリHD)で、時価総額は約1兆9443億円。ホームセンター業界第7位の島忠を傘下に収め、収益を拡大している。直近の2024年3月期の売上高は8957億9900万円で、2032年には店舗数3000店で売上高3兆円の中長期目標を掲げている。ニトリHDも今後有望な市場と捉えている東アジアと東南アジアへの出店を強化している。2023年度までにタイに5店舗、ベトナムに1店舗、マレーシアに11店舗、シンガポールに2店舗、台湾に61店舗、中国に95店舗を出店している。ニトリHDは、インドやインドネシアへの進出も念頭に、店舗物件の調査を重点課題としてあげている。今年2月には、創業者でニトリHD会長の似鳥昭雄氏が10年ぶりに事業会社のニトリの社長に就任している。
第4位は、2023年12月期の通期連結決算で売上高とすべての利益で過去最高を記録したアシックスだ。時価総額は約1兆8690億円で、2兆円達成も目前だ。「アシックス(asics)」のグローバル展開が好調で、中国や東南・南アジア、欧州、北米などすべての地域で増収を達成しており、売上高に占める海外の割合は約77%にまで上がっている。海外での「アシックス」人気はインバウンド需要にも直結しており、特に人気の高い「オニツカタイガー(Onitsuka Tiger)」は東京・銀座で3店舗を展開している。
第5位は、ファッションECサイト「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を展開するZOZOで、時価総額は約1兆2103億円。2024年3月期の通期連結決算は、売上高は1970億1600万円(前年比7.4%増)、営業利益は600億7900万円(同6.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は443億4100万円(同12.2%増)と増収増益で、営業利益は過去最高を達成している。LINEヤフーの連結子会社になってからは、「Yahoo!ショッピング」内にも出店するなど、連携を強化し、幅広い層にリーチしている。今期は売上高が2000億円を突破する見込みだ。
第6位には三越伊勢丹ホールディングスがランクインし、ここまでが時価総額1兆円超え企業だ。第7位以下は、良品計画、エービーシー・マート、しまむら、丸井グループと続いていく。第36位で時価総額約475億円のスノーピークは上場廃止が決定しており、今後のランキングからは除外される。
ランキング上位を眺めると、国内市場での高い成長に胡坐をかくことなく、果敢に海外マーケットを攻めている姿勢が時価総額に反映されているといえる。第13位のゴールドウインや第20位のアダストリアなども海外マーケットで積極的にビジネスを展開しており、今後はさらにランキングを上げてくるのではないだろうか。ファッション&アパレル企業の今後の動向には目が離せない。
*1ドル=161円換算、1スウェーデン・クローナ=15円(7月4日時点)