ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「介入の歴史・ポジション、効く介入と効かない介入。為替需給ギャップは」

ドル円=155-160、ユーロ円=169-174、ユーロドル=1.07-1.12

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨最下位(最下位)、株価3位(3位)、7月円高相場が進む。円買い介入は史上最高額更新。ただ円売り需給は存在」
(日銀介入で円高が進んだ)
7月の円高データもあったが日銀介入で円高が進んだ。緊張の夏。12通貨中、先週は2位、今月ここまで3位、年間では依然最下位。国民へのアンケートで円安による物価高を批判する声が大きいことが反映した介入。ただ円安のメリットは忘れ去られている。日経は7月12日、千円下落した。資産の下落に影響した。日本国債利回りは、円高や世界的な金利低下もあり1.05%、7月8日は1.09%をつけていた。

(円安について日銀は)
日銀大阪支店長は、2022年にかけて見られた輸入物価の大幅な上昇はドル建て価格の大幅上昇と大幅な円安進展が影響したが、足元の円安進行の幅はその当時に比べれば大きくなく「現時点で非常に大きなショックが発生しているということではない」と述べた。ただ、このまま円安がじりじりと続き、再び輸入物価の上昇圧力が高まることには企業の間でも懸念する声が聞かれていると述べた。

(今週の焦点は)
依然、赤字を続ける貿易統計、今週は6月分の発表。6月全国消費者物価では5月の2.8%上昇から2.9%へ上昇する見込み

(円買い介入、需給改善となるか。介入の歴史は)
円買い介入が実施された。今年は7月11日までの推定で約13.2兆円。12日も介入が推測されるので増加するだろう。既に年間の円買い介入額の最高額を更新した。ドル買い介入最高額は2003年の20.4兆円がある。

今年の貿易赤字は6月中旬までで約3.8兆円、オルカンなど外貨投信残高は約20兆円増加。これだけでも円売り23.8兆円、さらにGPIF、生保などの外貨投資がある(ドルドル投資もあるので為替に影響する数字は正確には掴みにくい)。まだ介入額では円売りの需給ギャップは埋められていない。こういう大きな円売り要因があるのに、財務省は円売りは投機筋のせいとするのは大きな疑問だ。オルカンが金融庁発の政策だけに指摘し難いか。

(介入の歴史、ポジションシート、介入大国、為替相場は市場に任せられない)
日本は介入大国だ。他の先進国の為替介入は極めて「マレ」だが、日本は市場に相場は任せられないといった「空気」がある。ただユーロ通貨統合前の欧州各国は、それぞれ頻繁に介入や金利操作をおこなっていた=効果はなかった。通貨政策で悩んでいた欧州各国は「ユーロ」誕生で安定を勝ち得た。また過去に2回のドル売り円買い介入があるが今回はあまり効果が出ていない。それは前2回が貿易黒字、今回は貿易赤字だからだ。

*米ドル「通貨3位(3位)、株価(NYダウ)15位(14位)、ドルは、成長減速、インフレ低下、日銀介入で弱い)」
(ドル弱い、金利低下と日銀介入で)
前回も触れたようにドルは5月の日銀介入から弱い。先週の介入も米景気減速とともにドル安を促した。年間では3位を維持しているが、首位のポンドには2%超引き離され、4位の豪ドルに迫られている。
先週は10位、今月はここまで11位。株価3指数は金利低下もあり小幅高。10年国債利回りは4.18%と前週末の4.28%から低下。

(CPI低下で9月利下げ観測高まる)
パウエルFRB議長は、インフレ率が2%を下回るまで利下げを待つ必要はない、インフレが2%の目標に向かって持続的に低下しているという確信は十分ではない、インフレ期待を示す指標はいずれも2%前後となっている、などと発言した。6月消費者物価は、前月比でマイナス0.1%と予想外に下落した。前月比でマイナスになるのは2020年5月以来約4年ぶり。ディスインフレが確実に軌道に戻ったことが示され、FRBの9月の利下げがさらに一歩近づいた。
 ミシガン大7月の消費者信頼感指数は660と、前月の68.2から低下。1年先と5年先のインフレ期待は、いずれも2.9%と、前月の3.0%から低下した。

(今週はパウエルFRB議長発言、ベージュブックなどに注目)
今週はパウエルFRB議長発言、7月NY連銀製造業景気指数、6月小売売上、輸入輸出物価、住宅着工、鉱工業生産、ベージュブック、景気先行指標総合指数などに注目したい。

(パウエル議長が利下げに慎重なのは)
7月に利下げをしてもいいのでは、という声もあるが、9月会合までに雇用統計とCPIが2回ずつあるのでもっと確信したいという建前がFRBにある。パウエル議長はコロナ禍前に、「インフレは一時的」などで失敗した苦い経験がある。

(IMFも利下げ支持)
IMFのコザック報道官は、米国ではデイスインフレが進行しており、「FRBは年内に利下げを開始できる位置に付けている」という認識を示した。また「FRBのデータ依存型で慎重な金融政策アプローチを支持している」とも述べた。
コザック報道官はまた、米経済成長は「驚くほど力強い」としつつも、「財政赤字は大きすぎる」と指摘。「経済が好調な今こそ、債務対国内総生産(GDP)比を決定的に低下させる措置を講じる時だ。それには幅広い財政措置が必要になる」という見解を示した。

*ユーロ「通貨5位(5位)、株価6位(7位)DAX)、ユーロドルは3週連続陽線と強い、フランス情勢の捉え方」
(ユーロドルは3週連続陽線と強い)
 一時的かもしれないがフランスの政局の落ち着き、米国経済指標の弱さ、米金利の低下で、ユーロドルは3週連続陽線。対円でも3週連続陽線を続けていたが、先週は日銀円買い介入もあり、週足は陰線となった。フランス10年国債利回りは先週は3.15%、その前週末の3.21%、6月末の3.3%から低下。フランスCAC40株価指数は欧州議会選挙後に一時年初来マイナス圏に陥ったが、現在は2.4%高まで回復している。

(貿易黒字は維持、インフレ低下でまずまずの状況)
 ユーロ圏の貿易・経常黒字は維持されている。インフレはユーロ圏が2.5%で5月の2.6%から低下している。7月のユーロ圏投資家センチメント指数はマイナス7.3と、9カ月ぶりに低下したが、貿易・経常での需給面では安定しているし、物価も低下傾向にあることでユーロの安定感はある。

(今週の政策金利は据え置きか)
 今週は政策金利の決定がある。据え置きと見られる、クノット・オランダ中銀総裁は、ECBが7月に利下げする理由はないが、9月の理事会では利下げに対して「オープン」で、追加緩和に対する市場の期待は現時点で適切と述べた。市場が織り込む利下げ回数は年内で1-2回、今後18カ月以内では4回強となっている。
クノット総裁は「政策金利が3%を超えている限り、依然として制約的だ。それは当面の間続くだろうが、それ以上については意味のある発言はできない」と語った。インフレの道筋に対する主なリスクとして、急速な賃金上昇と平均的な生産性向上の組み合わせのほか、利益率の低下と労働コストの上昇を企業が吸収できるかを巡る不確実性を挙げた。

(フランスの政治対立は、経済ではなく移民政策)
 1980年代以前の伝統的なフランス政治社会では、右派、左派に明確なスタンスの違いがあった。主な対立軸の一つが社会経済政策。大まかに言って、再分配を重視するのが左派、市場を重視するのが右派。ところが90年代ごろから、グローバル化の競争に勝つため左派政党も再分配を犠牲にして、資本家や大企業に優しい政策を取らざるを得ない状況になってきた。
 伝統的な左右の区別があいまいになる中で、いま最も明確な対立軸になっているのは、移民への姿勢。「フランス文化」を守るためにイスラム系移民を排除しようとするのが右派、多様性を重視してこれを受け入れようとするのが左派だ(東京大学の中山洋平教授(ヨーロッパ政治史・フランス政治))=意外と経済政策は問題になっていないかもしれない。

*ポンド「通貨首位(3位)、株価11位(11位)、ポンドが首位に立つ」
(年初来で最強通貨へ)
ポンドは5月27日週以来の首位に立った。対ドルで3週連続陽線。対円では日銀円買い介入もあり5週ぶりの週足陰線となった。先週のFT株価指数は0.36%下げた。年初来では6.62%高、10年国債利回りは4.12%で前週の4.14%から僅かに低下した。

(強かった5月GDP)
5月の国内総生産(GDP)は前月比0.4%増となり、伸び率は住宅建設の拡大を受けて予想の0.2%を上回った。 サービス業、製造業、建設業の全てが成長。建設は1.9%増となった。
3-5月の経済成長率は0.9%と、予想の0.7%を上回り、2022年1月までの3カ月間以来の高い伸びとなった。英国統計局は「5月の経済は力強く成長し、全ての主要セクターで増加した。多くの小売・卸売業者は4月の低迷から立ち直った」とした。

(8月利下げの可能性は50%未満か)
今週は6月消費者物価の発表がある。予想は5月に続き2.0%、コアの予想は3.4%で5月は3.5%だった。英中銀チーフエコノミスト、ピル氏は、「利下げに近づいているが、サービス価格の上昇と賃金の伸びは依然として強いとの見解を示した。サービス価格や賃金の前年比上昇率は依然として6%近く、引き続き好ましくない基調的インフレの強さを示している」と指摘。ただ「最新のデータは、こうしたインフレ圧力が現在は抑制されており、インフレ目標の達成とより一致する水準に戻り始めている可能性があるとの見方とも一致している」とも指摘した。トレーダーらは8月利下げの可能性は50%未満と考え、利下げへの賭けを減じた。
 
(英中義マン委委員、ハスケル委員も利上げに賛同せず
英中銀マン委員は、英経済における物価圧力の強さを強調し、8月の利下げに賛成しない可能性を示唆した。 賃金とサービス価格の伸びは依然として英中銀の目標と一致していないとし、サービス価格の持続的な鈍化が確認されるまでは利下げを支持する立場にないとした。
ハスケル委員は、雇用市場でインフレ圧力が続き、物価上昇圧力がどの程度速く後退するか不透明なため、約16年ぶりの高水準にある政策金利の引き下げは望まないと述べた。

(財政再建は難しそうだ、新財務相)
リーブス財務相は、経済成長を実現するため、住宅建設の促進やインフラ事業の障害解消、民間投資呼び込みを新たな「国家ミッション」の一環に位置付ける方針を明らかにした。「一夜にして事態を好転させることはできない。私たちは悲惨な状況を引き継いでいる。無駄にしている時間はない」と述べた。「難しい決断はこれまでの14年間、避けられたり先送りされたりしてきた」と述べた。

*豪ドル「通貨4位(4位)、株価16位(16位)、インフレ懸念と消費低迷で迷うRBA」
(対ドルで5週連続週足陽線、対円では5週ぶり週足陰線)
 対ドルで5週連続陽線、対円では円買い介入もあり5週ぶり陰線、年間ではドルに次いで4位と、まずまずの展開。株価(全普通株指数)は16位と弱い。10年国債利回りは4.3%と前週末の4.35%から低下。

(消費者信頼感と企業景況感は悪化)
 7月消費者信頼感指数は82.7で、前月比1.1%低下した。6月は1.7%の上昇。粘着的なインフレやさらなる金利上昇への懸念が消費者を再び圧迫し、減税などの財政支援措置による浮揚効果を帳消しした。 RBAは政策金利を据え置いたものの、物価の上振れリスクを警告しており、必要なら追加利上げに動く可能性がある。
こうした中で住宅ローン金利が向こう1年で上昇すると予測した人は全体の約60%と、前月の48.3%から増加。1年前と比べた家計の状況を示す指数と、1年後の家計見通しを示す指数はいずれも急低下した。 6月の企業景況感指数は前月から2ポイント低下し、プラス4と長期平均を下回った。

(今週は6月雇用統計)
今週は6月雇用統計の発表がある。雇用者数は2万人増加の予想、5月の3.97万人から減少か。失業率は4%の予想で前月と変わらず。

(RBAも気迷い、インフレと消費低迷懸念)
 次回政策金利決定は8月6日。RBAの6月議事録では、インフレ率を目標の2~3%に戻すために必要なことを行うと改めて表明し、今後の政策変更については「実施も除外も難しい」と述べた。
 5月消費者物価が4%に加速し、目標である2~3%を大きく上回ったことを示したことを受けて、8月6日の会合で引き締め政策を再開するのではないかという懸念が高まった。一方、RBAは、家計支出の低迷が今年も続くと予想しており、「多くの世帯が経済的ストレスを経験しているという明確な証拠がある」と指摘している。政策金利決定の前の7月31日に6月と2Qの消費者物価の発表がある。

(最大貿易相手国の中国の経済指標が弱い)
 最大貿易相手国の中国の経済指標が弱い。6月の消費者物は前年比0.2%の上昇で、5月の0.3%から伸びが鈍化。6月の中国貿易統計によると、輸出は前年同月比8.6%増加したが、 輸入は2.3%減と、予想外の減少となり、4カ月ぶり低水準を記録した。今週は2Q・GDPの発表があるが、1Qの前年比5.3%から5.1%へ低下する見込み。

*NZドル「通貨8位(7位)、株価17位(17位)、中銀のハト派的な声明でNZドル下落」
(豪ドルに水をあけられたNZドルは年初来8位)
 年初来で12通貨中4位の豪ドルに水をあけられたNZドルは8位。先週は11位、7月はここまで8位。10年国債利回りは4.52%で前週末の4.74%から低下、株価指数(NZ50)は年初来3.1%高と弱い。

(中銀のハト派的な声明でNZドル下落)
 NZ中銀は、政策金利を5.5%に据え置いた。中銀はインフレが予想通りに鈍化すれば、制約的な金融政策を徐々に緩和する可能性があることを示唆、予想よりもハト派的な声明となりNZドルが下落した。
5月の会合では政策が長期間にわたり制約的にとどまる見通しだとし、インフレが抑制されなければ利上げもあり得るとしていた。
短期金融市場では、8月の利下げの可能性が60%にまで高まっており、金利決定前の33%を大幅に上回っている。

(製造業PMIは大幅悪化)
 なお6月の製造業PMIは41.1で5月の47.2から大幅下落した。2021年8月以来の最小値であり、製造業が15か月連続で縮小している。急激な低下は主に生産(5月の44に対して35.4)と新規受注(43.9に対して38.8)の大幅な低下によるものだ。

(今後の指標、まずはCPI)
 今週は2Q消費者物価の発表がある。1Qは前年比で4.0%であったが、2Qは3.5%の予想。食品価格などの一部の項目は毎月発表されており、直近のデータによると軟化し始めている。さらに、インフレ期待は緩和傾向にあり景況感も弱い。8月2日には雇用統計の発表があり、8月14日の政策金利決定となる。