本記事は、山崎 正典氏の著書『なぜ、赤字や債務超過でも3時間で資金調達できるのか?』(セルバ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
資金調達は、あくまで「理想の会社」を創るためのスタートライン
日々の資金繰りに追われる「作業」から、未来をデザインする「創造」へ
私がこれまで多くの経営者の方々とお話しする中で、最も心を痛めるのは、本来であれば会社の未来を描き、新しい価値を創造することに情熱を注ぐべき社長が、日々の資金繰りという「作業」に追われ続けている現実です。
朝一番に銀行の残高を確認し、支払スケジュールと照らし合わせながら一日が始まる。そんな状況で、どうやって新しい事業のアイデアを練ったり、従業員のモチベーション向上について考えたりする余裕が生まれるでしょうか。
私自身も銀行員時代に数多くの中小企業の経営者と会ってきましたが、資金繰りに追われている社長と、そうでない社長では、明らかに表情が違います。前者は常に何かに追われているような焦燥感があり、後者は落ち着いて将来のビジョンを語ることができるのです。
資金調達、特にファクタリングのような手法は、決して目的ではありません。それは、あなたが描く「理想の会社」を実現するためのスタートラインに立つための手段に過ぎないのです。
私がファクタリング会社で働いていた頃、ある製造業の社長からこんな言葉を聞きました。
「山崎さん、ファクタリングを利用するようになってから、初めて『経営』ができるようになったんです。それまでは『資金繰り』しかしていませんでした」
この言葉が、私にとって大きな転機となりました。資金調達支援の仕事は、単にお金を融通することではない。経営者が本来の役割を取り戻すお手伝いをすることなのだと、深く理解したのです。
社長にしかできない仕事とは何か? 情熱を注ぐべき、企業のコアバリューとは
では、経営者にしかできない仕事とは何でしょうか。私の経験から言えば、それは大きく3つに分けられます。
1つ目は、「ビジョンの創造と共有」です。会社がどこに向かうのか、何を実現したいのか、そのビジョンを描き、従業員や取引先、そして社会に対して明確に示すこと。これは、社長にしかできない最も重要な仕事です。
2つ目は、「重要な意思決定」です。限られた経営資源をどこに投入するか、どの事業に注力し、どの事業から撤退するか。こうした戦略的な判断は、会社の命運を左右する重要な決断であり、最終的な責任を負う経営者にしかできません。
3つ目は、「組織文化の醸成」です。どのような価値観を大切にし、どのような働き方を推進するか。会社の「らしさ」をつくり上げることは、長期的な競争力の源泉となります。
しかし、日々の資金繰りに追われていると、これらの本質的な仕事に集中することができません。
私がお会いした成功している経営者の方々に共通しているのは、資金調達を含めた財務管理を「仕組み化」していることです。
企業のコアバリューとは、その会社が社会に対して提供する独自の価値のことです。それは、技術力かもしれませんし、サービスの質かもしれません。重要なのは、そのコアバリューを明確に定義し、それを磨き上げることに経営資源を集中することです。
銀行員時代とファクタリング会社時代に出会った「理想の経営者像」から学ぶこと
私が銀行員として、そしてファクタリング会社の社員として働く中で、数多くの経営者とお会いしてきました。その中で、「この人のようになりたい」と心から思える理想的な経営者像に出会うことができました。その1人が、地方の小さな食品加工会社を経営されている田中社長です。
田中社長が素晴らしいのは、常に「お客様に喜んでもらえる商品をつくる」という軸がぶれないことです。売上や利益も大切ですが、それ以上に「美味しくて安全な食品を通じて、お客様の食卓に笑顔を届けたい」という想いが、すべての経営判断の基準になっているのです。
融資の相談を受ける際、田中社長は最初に、「なぜその設備投資が必要なのか」「それによってお客様にどのような価値を提供できるのか」ということを、熱を込めて語ってくださいました。数字や計画書以上に、その情熱と信念が、私に強い印象を与えました。
もう1人、印象深い経営者がいます。IT関連のサービスを提供している佐藤社長です。佐藤社長から学んだのは、「経営者は常に学び続けなければならない」ということです。
しかし、それ以上に印象的だったのは、佐藤社長が従業員の成長を何よりも大切にしていることでした。
「会社の成長は、従業員1人ひとりの成長の積み重ねです。私の仕事は、みんなが成長できる環境をつくることなんです」
これらの経営者の方々から学んだのは、優れた経営者は皆、明確なビジョンと価値観を持っているということです。そして、そのビジョンを実現するために、資金調達を含めたあらゆる経営手法を戦略的に活用しているのです。
常に問いかけたい「あなたの会社は、社会にどんな価値を提供したいですか?」
私が経営者の方々とお話しする際に、必ずお聞きする質問があります。それは、「あなたの会社は、社会にどんな価値を提供したいですか?」という質問です。この質問に対する答えが明確な経営者ほど、困難な状況に直面しても諦めることなく、創意工夫を重ねて乗り越えていく力を持っています。社会に提供する価値が明確になると、経営判断の基準も明確になります。
ある運送会社の経営者は、「私たちは単に荷物を運ぶだけではありません。お客様の大切な商品を、安全・確実・迅速にお届けすることで、お客様のビジネスの成功をサポートしているのです」と話してくれました。この明確な価値観があるからこそ、同社では単なる価格競争に巻き込まれることなく、サービスの質で差別化を図ることができています。
資金調達も、この価値提供を実現するための手段として位置づけられています。私自身も、ファクタリングベストを通じて、「中小企業の経営者が資金調達の悩みから解放され、本来の経営に集中できる環境をつくる」という価値を提供したいと考えています。この価値を実現するために、単にファクタリング会社を紹介するだけではなく、経営者1人ひとりの状況を深く理解し、最適な資金調達戦略をご提案することを心がけています。
あなたの会社が社会に提供したい価値は何でしょうか。重要なのは、その価値を明確に定義し、それを実現するために必要な経営資源を確保することです。
そして、資金調達は、その価値実現のための重要な手段の1つなのです。価値が明確になれば、資金調達の目的も明確になり、より効果的な経営判断ができるようになります。
資金調達は、それ自体が目的ではありません。それは、あなたの会社が掲げる価値という目的地へ向かうための、いわば「燃料」なのです。私が銀行で見ていたのは、主に燃料の残量でした。
しかし本当に大切なのは、その燃料を注ぎ込むエンジンの性能、つまり事業の本質的な価値そのものです。
2017年、ファクタリング専門会社に転職し、営業担当として現場の最前線で活動。その後、営業企画チームへ異動し、ファクタリングサービスの新商品開発やセミナー企画に従事するようになる。また、経営者向けのセミナーを企画・運営することで、ファクタリングに関する正しい知識の普及にも貢献。2024年、ファクタリング関連の情報発信を目的としたブログメディア「ファクタリング賛否両論」を立ち上げた。
現在、ファクタリング会社の現場責任者や役員との情報交換を継続的に行いながら、ブログを通じて最新のトレンドやリスク情報を発信。業界の動向を常に把握し、中小企業経営者にとって有益な情報を提供することで、健全なファクタリング市場の発展に寄与している。
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