本記事は、山崎 正典氏の著書『なぜ、赤字や債務超過でも3時間で資金調達できるのか?』(セルバ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
ファクタリング業界の「光と影」
急成長市場の裏に潜む、情報格差と利用者の不安
ファクタリング市場は近年、急速な成長を遂げています。中小企業の資金調達手段として注目を集め、多くの企業がこのサービスを利用するようになりました。しかし、この急成長の裏には、利用者にとって深刻な問題が潜んでいます。それは、情報の非対称性と、それに伴う利用者の不安です。
ファクタリング業界は比較的新しい分野であり、まだ十分な情報が整理されていません。多くの経営者にとって、ファクタリングは初めて利用する資金調達手段であり、どの会社を選べばいいのか、どのような条件が適正なのか、判断材料が不足しているのが現状です。
この情報不足は、悪質な業者にとって格好の隙を与えることになります。私がファクタリング専門会社で働いていた頃、多くの経営者から「他社と比較したいが、どこに相談すればいいかわからない」という声を聞きました。
特に初回利用の企業では、提示された条件が適正なのか判断できず、結果的に不利な条件で契約してしまうケースが少なくありませんでした。このような状況は、業界全体の健全な発展を阻害する要因となっています。
また、ファクタリング会社の数が急激に増加したことで、サービスの質にばらつきが生じています。優良な会社がある一方で、高額な手数料を請求したり、不透明な契約条件を提示したりする会社も存在します。利用者にとって、この中から信頼できる会社を見つけることは、まさに「宝探し」のような困難な作業となっているのです。
さらに、ファクタリング業界特有の専門用語や複雑な契約構造も、利用者の理解を妨げる要因となっています。「2社間ファクタリング」「3社間ファクタリング」「償還請求権」「債権譲渡登記」など、初めて聞く用語に戸惑う経営者も多く、十分な理解がないまま契約を進めてしまうリスクがあります。
悪質業者に騙されないための、経営者が知っておくべき最低限の知識
悪質なファクタリング業者による被害を防ぐためには、経営者自身が最低限の知識を身につけることが重要です。私の経験から、特に注意すべきポイントをいくつか挙げてみましょう。
まず、異常に高い手数料を請求する業者には注意が必要です。一般的に、2社間ファクタリングの手数料は売掛金額の8%から18%程度、3社間ファクタリングでは5%から10%程度が相場とされています。これを大幅に上回る手数料を提示する業者は、悪質である可能性が高いと考えられます。
次に、契約内容の説明が不十分な業者も危険です。優良な業者であれば、契約の詳細について丁寧に説明し、利用者の疑問に真摯に答えてくれるはずです。説明を求めても曖昧な回答しか得られない、急かすような態度を取る業者は避けるべきでしょう。
また、償還請求権の有無についても確認が必要です。ファクタリングは本来、売掛金の売買契約であり、売掛先が倒産した場合のリスクはファクタリング会社が負うべきものです。しかし、悪質な業者の中には、実質的に貸金業に近い契約を結び、売掛先の倒産リスクを利用者に負わせようとするケースがあります。
さらに、登録や許可の有無も重要なチェックポイントです。ファクタリング業務自体には特別な許可は必要ありませんが、関連する業務(債権回収業務など)には許可が必要な場合があります。また、会社の実態が不明確な業者や、連絡先が携帯電話のみの業者なども避けるべきです。
私が実際に目にした事例では、手数料30%を超える契約を結ばされた企業や、契約書に記載されていない追加費用を請求された企業もありました。このような被害を防ぐためには、複数の業者から見積もりを取り、条件を比較検討することが不可欠です。
ファクタリング専門会社での経験から見えた、「本当に信頼できるファクタリング会社」の共通点
私がファクタリング専門会社で働いていた経験から、本当に信頼できるファクタリング会社には共通する特徴があることがわかりました。これらの特徴を理解することで、優良な業者を見極めることができるでしょう。
第1に、透明性の高い情報開示を行っていることです。信頼できる会社は、手数料の内訳、契約条件、審査基準などについて、可能な限り詳細に説明してくれます。ウェブサイトにも十分な情報が掲載されており、利用者が事前に内容を確認できるよう配慮されています。
第2に、利用者の立場に立ったサービス提供を心がけていることです。単に売掛金を買い取るだけでなく、利用者の資金繰り改善や事業成長をサポートしようとする姿勢が見られます。相談に対しても親身になって対応し、最適な解決策を提案してくれます。
第3に、適正な手数料設定を行っていることです。市場相場を大きく逸脱することなく、サービス内容に見合った合理的な手数料を設定しています。また、手数料の根拠についても明確に説明できる体制を整えています。
第4に、迅速かつ確実な対応を提供していることです。審査から入金までのプロセスが効率化されており、利用者の急な資金需要にも柔軟に対応できる体制を構築しています。同時に、確実性も重視し、約束した期日には必ず入金を実行します。
第5に、長期的な関係構築を重視していることです。一回限りの取引ではなく、継続的なパートナーシップを築こうとする姿勢が見られます。利用者の事業状況を理解し、将来的な資金需要についても相談に乗ってくれます。
私が特に印象に残っているのは、ある優良ファクタリング会社の担当者が、利用者の資金繰り改善のために銀行融資の相談にも乗っていたことです。ファクタリングは一時的な資金調達手段であり、根本的な解決には銀行融資などの長期的な資金調達が必要であることを理解し、利用者の真の利益を考えたアドバイスを提供していました。
業界の健全化に向けた取り組みと、今後の展望
ファクタリング業界の健全化に向けて、様々な取り組みが進められています。業界団体の設立、自主規制ルールの策定、行政による監督強化などが挙げられます。
日本ファクタリング業協会をはじめとする業界団体では、会員企業に対する行動規範の策定や、利用者保護のためのガイドライン作成を行っています。これらの取り組みにより、業界全体のサービス品質向上と、悪質業者の排除が期待されています。
また、金融庁などの行政機関も、ファクタリング業界の動向を注視し、必要に応じて指導や監督を行っています。特に、貸金業法に抵触する可能性のある取引については、厳格な対応が取られています。
技術面では、ブロックチェーンやAIを活用した新しいファクタリングサービスも登場しており、より効率的で透明性の高いサービス提供が可能になりつつあります。これらの技術革新により、手数料の低減や審査時間の短縮が実現され、利用者にとってより魅力的なサービスとなることが期待されています。
今後のファクタリング業界は、より成熟した市場へと発展していくと予想されます。競争の激化により、サービス品質の向上と手数料の適正化が進み、利用者にとってよりよい選択肢が増えることでしょう。同時に、悪質業者は市場から淘汰され、信頼できる業者のみが生き残る健全な市場環境が形成されることが期待されます。
このような環境変化の中で、利用者にとって重要なのは、正しい知識を身につけ、適切な業者選択を行うことです。そのためのツールとして、ファクタリングベストのような一括見積もりサービスの価値は、ますます高まっていくと考えられます。
2017年、ファクタリング専門会社に転職し、営業担当として現場の最前線で活動。その後、営業企画チームへ異動し、ファクタリングサービスの新商品開発やセミナー企画に従事するようになる。また、経営者向けのセミナーを企画・運営することで、ファクタリングに関する正しい知識の普及にも貢献。2024年、ファクタリング関連の情報発信を目的としたブログメディア「ファクタリング賛否両論」を立ち上げた。
現在、ファクタリング会社の現場責任者や役員との情報交換を継続的に行いながら、ブログを通じて最新のトレンドやリスク情報を発信。業界の動向を常に把握し、中小企業経営者にとって有益な情報を提供することで、健全なファクタリング市場の発展に寄与している。
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