meviyの「全方位構想」と新サービス、エンジニアリングチェーンの非効率削減を目指す

工場の自動化設備や検具などに用いる機械部品を製造販売し、その品ぞろえの多さから「製造業のAmazon」とも呼ばれる、株式会社ミスミグループ本社。

2024年6月、ミスミグループが開発した、機械部品調達のAIプラットフォームmeviy(メビー)の新サービスが公開されました。株式会社ミスミグループ本社常務執行役員でID企業体社長の吉田光伸氏、meviy Lab ジェネラルマネージャーの芝田篤史氏によるプレゼンテーションから、meviyのこれまでの歩み、新サービスでmeviyが目指す今後の展開について、レポートします。

右より、株式会社ミスミグループ本社 常務執行役員 ID企業体社長 吉田 光伸氏、meviy Lab ジェネラルマネージャー 芝田 篤史氏
(右より、株式会社ミスミグループ本社 常務執行役員 ID企業体社長 吉田 光伸氏、meviy Lab ジェネラルマネージャー 芝田 篤史氏)
吉田 光伸氏
株式会社ミスミグループ本社 常務執行役員 ID企業体社長
国内事業・海外事業・新規事業を経て、機械部品調達のAIプラットフォーム「meviy」(メビー)の立ち上げに関わる。meviyはものづくり日本大賞にて最高峰である内閣総理大臣賞を獲得し、国内シェアは4年連続No.1、製造業におけるデジタルトランスフォーメーションを牽引する。
ミスミ入社前は、国内大手通信会社、外資系大手ソフトウェアベンダに籍を置き、インターネット黎明期からデジタルを活用した新規事業の立ち上げ・事業拡大に数多く携わる。
芝田 篤史氏
meviy Lab ジェネラルマネージャー
大学院修了後、ベンチャー企業に入社し、製造業のデジタル技術開発に従事。その後、2010年に株式会社ミスミに入社し、生産改革プロジェクトや海外での新規事業開発を担当。
meviy(メビー)の事業開発には立上げ時から携わり、その事業化に尽力。2022年よりmeviy Labのジェネラルマネジャーとして、2D図面のAI開発を推進し、meviy 2Dサービスの立ち上げなどを行う。
(所属及びプロフィールは2024年6月現在のものです)

目次

  1. グローバルNo.1へ向けて加速するmeviyの成長・進化と今後の取り組み
  2. 製造業のボトルネックに寄り添うmeviyの新サービス

グローバルNo.1へ向けて加速するmeviyの成長・進化と今後の取り組み

ミスミグループ本社 常務執行役員 ID企業体社長 吉田光伸氏

meviyの新サービス発表会ではまず、ミスミグループ本社 常務執行役員 ID企業体社長の吉田光伸氏より、「グローバルNo.1へ向けて加速するmeviyの成長・進化と今後の取り組み」をテーマに、meviyの概要や提供する価値などについてプレゼンテーションが行われました。一部を抜粋して紹介します。

ミスミグループ本社 吉田氏
「meviyというコアサービスから始まって、調達領域に留まらず、範囲をさらに拡大し、時間という価値を創出していきたいと考えています」(ミスミグループ本社 吉田氏)

調達領域の非効率解消を目指して生まれたmeviy

meviyは機械部品調達のAIプラットフォームです。meviyをお使いいただくと、3DのCADデータをアップロードし、条件を指定するだけで見積もりが完了し、その場で注文をすることができます。WEB上で寸法の精度や穴の形状など細かな指定ができるほか、製造の可否をその場で把握しmeviyからのフィードバックを設計に反映させることも可能です。

meviyの新サービスについて発表する前に、まずそもそもなぜ我々がmeviyというイノベーションを生み出したのか、meviyを通じて何を実現しようとしているかを改めてご説明したいと思います。

日本のものづくりが世界の中でも非常に強かった1980年代は、日本には豊富な働き手がいて、しかもその一人ひとりが猛烈に働いていた時代でした。しかし近年は、ご承知のようにどんどん人口が減少し、さらに働き方改革やワークライフバランスなどが導入され、総労働時間は大幅に減っています。たくさんの時間を使うことができたかつての仕事のやり方から、少ない時間で最大の効果を上げるやり方に変えること、つまり労働生産性の改革が、現代の製造業には求められています。

では、製造業で無駄な時間が生まれているのはどの段階なのか。設計、調達、製造、販売という、製造業のバリューチェーンを見てみると、過去に比べ、CADの設計や工場の自動化、Eコマースなど、幅広い分野でデジタル化が進展しています。一方、未だに壁となっているのがこの中の「調達」の領域です。

例えば製造業の調達では、一度3Dで設計されたものをわざわざ紙の図面に落とし、FAXで複数の会社に見積もり依頼を出し、そして見積もり結果を待って……というやりとりが日常的に発生しています。この調達領域における手間が製造業全体のボトルネックになり、膨大な時間の浪費、業務の非効率化につながっていると考えています。

meviy

この調達領域におけるデジタルトランスフォーメーションを目指して生まれたのが、meviyです。

meviyは国内オンライン部品調達サービスとして、4年連続シェアナンバーワンとなり、お陰様で、日本の製造業の最高峰と言われるものづくり日本大賞で、内閣総理大臣賞も受賞することができました。

内閣総理大臣賞受賞

さらに領域を拡大する、meviyの「全方位構想」

さらに最近のトピックとして、大きく3つの進化を実現しています。

まず一つは、グローバル展開です。meviyは2019年から本格的にサービス展開を始め、これまで、2021年にヨーロッパ、2022年にアメリカ、2023年に中国・アジアとその地域を確実に拡大してきました。現在、世界5極で多くのユーザーの皆様にmeviyをご利用いただいています。日本発・グローバルNo.1のものづくりプラットフォームを目標に掲げ、グローバルでサービスを展開している状況です。

それから二つ目は、より使っていただきやすい仕組みとして、納期や注文数に応じた割引サービスを開始いたしました。これまでmeviyは主に短納期のサービスを提供していましたが、お客様の事情によって、それほど納期を急ぐ必要がない場合もあるかと思います。そうした際に使っていただける、納期を長くすると3割安くなる納期割引サービスや、大量にご注文いただくと最大で7割引きとなる数量割引など、試作から量産までより多くの方に使っていただけるよう、お客様の声にあわせて仕組みを進化させています。

さらに三つ目は、これまでmeviyは板金部品、切削部品などの製品を主に取り扱ってきましたが、この対象範囲を拡大し、昨年からは板金の溶接も3Dデータだけで調達できるようになりました。現在、製造業で必要な機械加工部品をほぼ網羅しています。

我々がmeviyを通じて提供しているのは、部品や製品ではなく、「時間」という価値になります。meviyのミッションは「ものづくりに創造と笑顔を」です。ものづくり業界にこの時間という価値を提供することで、人間がより創造的な仕事に従事し、より良いものづくりができるようになる。そして、エンドユーザー様の笑顔につなげていく……それが我々の目指すところです。

meviy

エンジニアリングチェーンを考えると、製造業には、まだまだ多くの非効率が存在しています。今後は、meviyの「全方位構想」として、ミッションである「ものづくりに創造と笑顔を」提供する領域をさらに広げていく予定です。そのためには、meviyというコアサービスから始まって、調達領域に留まらず、範囲をさらに拡大し、時間という価値を創出していきたいと考えています。

製造業のボトルネックに寄り添うmeviyの新サービス

meviy Lab ジェネラルマネージャー 芝田篤史氏

続いて、meviy Labジェネラルマネージャーの芝田篤史氏より、meviyの新しい機能について、プレゼンテーションが行われました。一部を抜粋して紹介します。

meviy Lab ジェネラルマネージャー 芝田篤史氏

幅広い職種で今なお残る、非効率な業務課題

私がジェネラルマネージャーを務めている「meviy Lab」は2年前に創設されました。AI活用の加速をミッションとしたオープンイノベーションの組織です。創設前からAI研究で全米ナンバーワンとも言われる、カーネギーメロン大学と図面のAI解析等の共同研究を行っています。

このmeviy Labの活動から生まれたのが、meviy2Dで、3Dだけではなく2Dの図面でも見積もり発注いただける機能をちょうど1年前、2023年6月にリリースしました。1年経ち、これまでに約1万名のお客様にお使いいただけるサービスに成長しています。

このようにmeviyは3Dから2Dに対応範囲を広げ、さらにお客様が今なお困っていることはないか、業務でかかっている時間を削りたいと考えているものは何か、改めて調査を実施しました。その結果が下図です。

meviy

上位の課題は作図作業や見積もり取得など、すでにmeviyによって解消をしている業務です。一方で、まだmeviyでは対応できていない困り事も回答の中に出てきました。それが、過去図面の検索、過去の類似品の見積もり結果の検索、そして図面の共有です。

例えば、図面を探したいけれど見つからない、どこにあるか覚えていない、といった状況があります。図面探しにどのくらいの時間を使っているか尋ねたところ、ひと月に平均3時間程度という回答結果になりました。そして、図面探しに課題を感じている方の職種を見ると、研究開発、設計、生産技術、購買と非常に幅広い職種に及んでいることもわかりました。お客様の声から、図面データの管理に関して、調達だけではなく、設計から販売まで幅広く非効率が存在しているということが推測できます。

AIを活用した新しいサービス「meviy Fider」とは

今回ご紹介する新しいサービスは、この未だ残る「負」を解消することを目的としたものです。それが機械部品の図面データ検索AI、「meviy Finder」です。

このmeviy Finderの一つ目の機能が、AI図面キーワード検索です。お客様が図面をアップロードすると、材質や外形サイズ、寸法公差などの情報をAIが解析して認識します。その認識した情報を構造化して整理し、データベースに貯めていきます。お客様が手入力でひとつ一つ登録しなくても、AIが情報を取得して自動登録してくれる仕組みです。そして、その登録した情報を元に、キーワードで簡単に図面を探し出すことができるようになっています。

2つ目の機能が、AI類似図面検索です。検索したい図面をクリックすると、お客様のデータの中から似たものを引き当てるという機能で、お客様のデータの中でこれは似ている、これは似ていないという類似性を判断し、類似結果を一覧でわかりやすく表示してくれます。お客様がひとつ一つのファイルを開いて、似ているかどうかを見る手間を省くことが可能になります。

meviy

そして3つ目が、これらの機能をチーム全体で共有する機能です。画面上にはクラウドストレージと同じようにフォルダのツリーがあり、ここにドラッグ&ドロップするだけで、図面をアップロードして共有することが可能です。

これらの技術は、もともとmeviy向けに開発してきた技術でもあります。そもそもAIには教師データが欠かせませんが、私どもミスミでは、カタログで培った膨大な商品情報と図面データを持っています。この膨大で良質な教師データ(AIが機械学習に利用するデータ)を使って、図面認識のAI、そして類似図面検索AIを以前から開発をしてきており、先ほどご紹介したようなmeviy2Dのサービスに適用し実用化を行いました。これらの技術を有効活用する形で、今回このmeviy Finderを新しいサービスとして発表したという経緯になります。

図面検索システムで最も重視する要素は何か、お客様に聞いたところ、当然なのかもしれませんが、一番多いのが「費用が無料」という回答でした。一般的に、図面検索サービスは初期費用が数十万から数百万円かかり、さらにここにプラスして年間で利用料が必要となります。新しいシステムを導入したくても、費用対効果があるのかを証明しないと導入が難しく、この費用がネックとなって使いたくても使えないというお客様の声が多くありました。

私どもミスミでは、ものづくり産業の社会インフラとして、これまでに数々のサービスを無償でご提供してきました。meviyの自動見積りも無償で誰でもいつでもお見積もりしていただけますし、ミスミのサイトに掲載されている全ての製品の3D CADデータも、全て無償でダウンロードできます。

そして今回の技術は、ご説明したように、すでに我々が開発しmeviyに適用しているものであるということを鑑みて、meviy Finderも無償でお客様にご提供したいと考えています。ご利用いただく際は、新たに契約を取り交わしたり、価格交渉したりといった面倒な手続きは一切不要です。メールアドレスで登録すれば、無償で即時に簡単に利用ができる、そのようなサービスになっています。

meviy Fiderは、2024年8月頃から順次ご案内をしています。また、2Dデータだけではなく3Dデータも検索できるようにするなど、さらなる機能の拡張も考えています。

meviyの全方位構想として、調達領域だけではなく、エンジニアリングチェーンのあらゆる非効率をなくし、時間を創出できるよう、さらに進化をしていきたいと思います。

【関連リンク】
株式会社ミスミグループ本社 https://www.misumi.co.jp/
meviy https://meviy.misumi-ec.com/ja-jp/
meiviy Finder  https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/finder-pre/

(提供:Koto Online