2025年3月期決算のファッション&アパレル企業31銘柄を対象に、第1四半期(4〜6月期)の進捗率を調べた。進捗率は、第1四半期の最終利益の実績値を通期業績の予想値で割り出しており、今期計画に対して各四半期ごとにどの程度の進捗かがわかる。単純に考えると、計画通りであれば第1四半期での進捗率は25%前後になっているはずであり、その差異をベースにランキングをまとめている。31社のうち4社は業績予想を修正しているが、修正前の予想値を採用している。
まず、進捗率が25%前後である三越伊勢丹ホールディングスやZOZO、ワークマンなどは、期初計画に対して順調な滑り出しだと言える。一方、レディスインナーを主力とするシャルレや「ニューヨーカー(NEWYORKER)」を展開するダイドーリミテッドは、進捗率が大きくマイナスで、計画通りに進んでいないことがわかる。
上位の銘柄を見てみると、メンズシャツなどを展開する山喜が進捗率132.0%で第1位にランキングしている。ただ、為替差益7500万円を営業外収益、負ののれん発生益4900万円を特別利益として計上しており、営業利益ベースでの進捗率は53.8%だった。
進捗率101.8%で第3位のエイチ・ツー・オー リテイリングも、東宝など自社が保有する政策保有株式を同期間に売却しており、特別利益として248億円を計上している。そのため、四半期純利益が前年から大幅な増益となった。エイチ・ツー・オー リテイリングは、傘下に阪急阪神百貨店を持っており、インバウンド需要の急伸により百貨店事業は好調を維持している。
第2位は、進捗率121.4%でムーンバットだった。本業であるパラソル・洋傘事業が大きく躍進した。梅雨に入る前から猛暑が続いた今年は、パラソルマーケットが活況を呈し、晴雨兼用傘などがよく売れた。ムーンバットは、紫外線をカットする加工を施した日傘をいち早く開発したことで知られており、メンズ日傘の浸透やインバウンド需要の恩恵などもあり、洋傘部門の売上高は前年同期を大きく上回った。
ムーンバットはさらに、今年2月に新商品「マジカルテック プロテクション」と「ミラクルテック」のアンバサダーに元卓球日本代表の石川佳純を起用しており、かすみん人気も業績に貢献したようだ。超軽量傘である「マジカルテック」シリーズの3、4月の前年同期比の売り上げは約250%を記録している。
進捗率上位3社は、第1四半期で通期予想での最終利益を達成しており、エイチ・ツー・オー リテイリングはすでに業績予想を上方修正している。
今年は猛暑だけではなく、台風や豪雨を始めとする天候不順が続き、暖冬も予想されている。進捗率第10位のワークマンは、外気をシャットアウトする新素材「Xシェルター」を開発し、気温などの気象条件に左右されにくいウェアを展開する。「Xシェルター」を採用したウェアは、すでに8月26日から予約販売を開始している。ワークマンの空調服やムーンバットのUV加工傘など、過酷な天候に対応する機能性アイテムはまだまだ市場拡大の余地はありそうだ。