メキシコペソ見通し
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「後戻り出来ない米墨関係がある。司法改革での混乱あるも」メキシコペソ見通し

予想レンジ 7.0-7.5

 (ポイント) 
*ペソ続落、司法改革での混乱長引く
*メキシコ、司法改革をめぐる論争で米国、カナダ大使館との関係を凍結
*中銀、成長見通し引き下げ
*メキシコへの工場建設は続く
*後戻り出来ない米墨関係
*格付け引き下げでペソ下落
*市場は司法改革をネガティブなものと捉えている
*経済指標は弱い
*トランプ大統領なら経済摩擦拡大か
*王者メキシコペソが4年振りに年足陰転
*弱い2Q・GDPで米墨成長見通しが逆転か
*6月は貿易赤字、黒字が定着しない
*円買い介入にテスラショックで続落
*2026年USMCA改定への議論開始、米国大統領選挙でも言及されよう
*メキシコの格付けはジャンク債の手前

(続落、司法改革での混乱長引く)
 年初来安値の7.073から回復も20日線越えられず反落。雲の下。7月の日銀介入後は最弱通貨、8月も最弱。年間は11位。ボルサ株価指数は年初来7.4%安。10年国債利回りは、政策金利の引き下げもあり10%を割り込んでいたが再び10.06%へ上昇。
 メキシコ経済の減速と財政赤字拡大懸念、米経済の減速や11月の米大統領選をめぐる不透明感が続く。日銀円買い介入や日銀の利上げで円高が進んだ。さらには今週は、司法制度改革で米国とカナダと対立、またモルガン・スタンレーの格付け引き下げで失速した。

(メキシコ、司法改革をめぐる論争で米国、カナダ大使館との関係を凍結)

  ロペスオブラドール大統領は8月20日、大統領が支持する司法改革案を米加両国の大使が批判したことを受け、メキシコ政府は米国およびカナダ大使館との関係を一時停止したと発表した。「一時停止だ」とロペスオブラドール大統領はで述べ、凍結は各国ではなく大使館に対するものだと明らかにした。
 大統領は、最高裁判事を含む裁判官を国民投票で選出する改革を推進している。メキシコ議会下院の委員会はこの提案を可決し、9月に新たに選出された議会が発足する際に承認される道を開いた。
サラザール米国大使は、この改革は「メキシコの民主主義の機能に対する大きなリスク」であるとし、米国とメキシコの貿易関係に対する潜在的なリスクについて警告した。
カナダの駐メキシコ大使クラーク氏も投資に関する懸念を警告した。
 メキシコにある大使館に限定されたこのような一時停止がどのような影響を及ぼすかは完全には明らかではない。米国とカナダの大使館はコメントの要請にすぐには応じなかった。
 司法改革賛成派は、この改革は民主主義を促進し、国民に役立たないと主張する制度の是正に役立つと主張する一方、批判派は、この改革は行政側に権力を偏らせ、裁判官のキャリアを断ち切り、裁判所を犯罪者の影響を受けやすくするだろうとしている。
 大統領は、「大使館が、メキシコの独立を尊重すると確認されるまで」この「一時停止」は続くだろうと述べた。大統領の発言を受けて、メキシコペソは8月27日午前中の取引で1.3%下落した。

(中銀、成長見通し引き下げ)
メキシコ中銀は四半期報告で、今年の経済成長率見通しを1.5%とし、前回も2.4%から引き下げた。2025年も1.5%から1.2%に下方修正した。外需の低迷と根強いインフレを反映させた。
中銀は、2Qの成長率が予想を「顕著に」下回ったと指摘。建設や米製造部門が軟化するとみられることから、外需は弱い状況が続くと分析した。
2Q・GDPは前期比0.2%増。昨年後半以降の景気減速傾向が鮮明になった。
中銀はインフレ見通しについて、3Qのインフレ率を4.4%(前回は4%)に上方修正。コアインフレ率は3.9%(同3.8%)に引き上げた。 一方、25年3Qまでには目標の3%に収束するとの見通しを維持。今後のインフレ環境は追加利下げの議論を許容できる程度だとの見方を示した。

(メキシコへの工場建設は続く、ニアショアリングの勢い衰えず)
*スウェーデンのボルボ、メキシコ北部モンテレイに約7億ドルを投じてトラック製造工場を建設すると発表した。2026年の稼働を見込む。
*中国電気自動車(EV)大手BYD(比亜迪)は、メキシコでの生産工場立地の最終候補を3州に絞り込んでおり、これらの州から提案されたさまざまな優遇措置を分析していると述べた。
メキシコでは2024年上半期に外国直接投資(FDI)が著しく増加し、過去最高の310億ドルに達した。これは昨年の同時期と比べて7%の増加に相当する。米国はメキシコへの最大の投資国となり、FDIの44%、137億ドルを占めた。その他の主な投資国としては、ドイツ(42億ドル)、日本(30億ドル)、カナダ(24億ドル)、ベルギー(15億ドル)などがある。

(中銀議事要旨、利下げは5人のうち2人が反対)
メキシコ中銀の8月の金融政策決定会合の議事要旨によると、利下げに反対した政策委員2人は、拙速な利下げによって中銀の信頼性が損なわれるとの懸念を表明していた。
 会合で、中銀は政策金利を0.25引き下げて10.75%としたが、政策委員5人のうち2人が利下げに反対票を投じていた。中銀はまた、インフレ率の予想を引き上げた。議事要旨によると、大半の委員は、これまで実施してきた金融政策に加え、コロナ禍やウクライナ戦争が引き起こした世界的ショックの減衰を踏まえると、インフレ見通しは大きく改善したとの認識を示した。「インフレ見通しに照らすと依然として引き締め的な政策姿勢が必要だが、見通しは進展しており、引き締めの度合いを下げるのに十分だ」としている。
ただ、金利据え置きに投票した2人の副総裁は、インフレ動向を見極めるのにもっと時間が必要だと指摘。ヒース副総裁は「過去5カ月間で総合インフレ率が上昇し、5%に達していることを考えると、金融政策姿勢を緩和する決定はわれわれの信頼性を損なう」との意見を出した。