地に落ちてしまった世界的名門ブランド「FUNAI」
(画像=「セブツー」より引用)

テレビなどの映像機器の製造・販売を手掛ける船井電機が、10月24日に東京地方裁判所から破産手続き開始決定を受けた。申請時点での負債額は債権者約524名に対して、約469億6482万円と見られている。

船井電機は、1951年に船井哲良が船井ミシン商会を創業し、1961年にトランジスタラジオの製造部門を分離して船井電機を設立したことから始まった老舗メーカー。1990年代に入るとテレビとビデオが一体化した「テレビデオ」が大成功を収め、「FUNAI」ブランドが世界的にも定着した。

世界展開にも成功した船井電機だが、2000年代に入ると台頭してきた中国メーカーとの価格競争が激化し、徐々に市場シェアが低下。2017年に創業者の船井哲良が死去すると、2021年5月に秀和システムホールディングスがTOB(株式公開買い付け)により船井電機の47.05%の株式を取得し、8月26日には上場廃止となった。

2023年3月に持株会社制に移行し、船井電機・ホールディングス(以下、船井電機HD)に社名変更するが、このあたりから様子がおかしくなっていく。船井電機HDは脱毛サロン「ミュゼプラチナム(MUSEE PLATINUM)」を展開するミュゼプラチナシステムズを2023年4月11日に数十億円で全株式を取得し完全子会社化する。「ミュゼプラチナム」で取り扱う美容機器の製造などを担うことで相乗効果を見込んでの買収だったが、翌年3月29日には買収からわずか1年足らずで全株式をKOC・JAPANに売却している。

船井電機HDはミュゼプラチナムを傘下に収めた2023年4月からアフィリエイト広告を実施してきたが、12月に入ると広告代理店であるサイバー・バズに対して入金の遅延が発生し、2024年5月時点で22億1500万円の未払いが発生している。サイバー・バズは2024年2月に取り引きを停止しているが、ミュゼプラチナムの親会社である船井電機HDの連帯保証を受けており、また同社の信用力を前提に取り引きを行なっていたため、多額の売掛債権となった。

さらに、船井電機HDが所有する本社ビルに対して、ミュゼプラチナシステムズを債務者として横浜幸銀信用組合が39億6000万円の根抵当権を設定していたことも明らかになっている。船井電機のTOBを主導し、社長に就任した上田智一氏は9月27日付で突如退任している。創業者船井哲良の遺族から経営を任された上田智一氏は、社長就任時に「読売新聞」の取材に「資産を切り売りせずに責任を持って事業を続けるという我々の姿勢を評価し、任せてくれたのだろう」と語っていたが、破産手続きの開始決定を受け、約2000人の全従業員が解雇されている。

「FUNAI」を世界的ブランドにまで育てた創業者の死後からわずか7年で地に落ちてしまった船井電機。あまりの杜撰経営に遺族は今、裏切られた気持ちでいるのではないだろうか。