写真左がシー・アイ・エム総研の代表取締役である富田英史 右が取締役の東海林智
写真左がシー・アイ・エム総研の代表取締役である富田英史
右が取締役の東海林智
Photo by 新井 賢一

製造業向けの生産管理システムを提供している株式会社シー・アイ・エム総合研究所(CIM総研)は、2024年3月に株式会社シーエーシーに株式を譲渡し、CACグループの一員となった。

世の中が変容を重ねるなか、自分たちも変化を繰り返しながら変わりゆくニーズに応え続け、大きく様変わりした姿で2025年の創立30周年を迎えた。CACグループが持つAIなどの最新技術と融合することで、CIM総研は今後、どのような未来を切り開き、変わりゆく社会でどんな役割を担っていくのか。

代表取締役を務める富田英史と、CACからの出向で営業部門をリードする東海林智の対談を通じて、グループインから1年あまりの成果と今後の展望を紐解いていく。

富田英史(とみた・ひでし)
株式会社シー・アイ・エム総合研究所 代表取締役
HPやOracleなど外資系ソフトウェアベンダーにおいて部門長を歴任する一方、公認会計士として会計監査やコンサルティングの経験も持つ。政府系ファンド投資先の立ち上げを経て、2021年11月にシー・アイ・エム総合研究所の代表取締役に就任。同社は2024年3月にCACグループの一員となる。
東海林智(しょうじ・あきら)
株式会社シー・アイ・エム総合研究所 取締役
IT系のSIベンダーで営業職を担い、2008年に株式会社シーエーシーに転職。金融系のSI本部でメガバンク等のアカウント営業を担当した後、2018年からは新規や既存の顧客向けのソリューション営業のマネジメントを担当。2024年6月にシー・アイ・エム総合研究所に出向し、主に営業部門をリードする。

>>株式会社シー・アイ・エム総合研究所公式サイト

――CIM総研の事業内容や社内風土を教えてください。

CIM総研
Photo by 新井 賢一

富田 製造業向けの生産管理システムを自社開発し、販売からサポートまでをしている企業です。製造業は非常に幅が広いのですが、我々は個別受注、なかでも金型を製造している領域に専門性のある生産管理システムを作っています。

金型はいろいろな部品の生産で使われます。例えば自動車で使用する部品は車の生産台数と合わせ、何万個、何十万個と作るのですが、その部品を作るための金型そのものは世の中に1個、あるいはスペアを含め数個しかないのが通常です。その金型を効率的かつ高品質に作るために、我々が専門のソフトウェアを作ってサポートしています。

こういう話をすると、厳めしい専門家集団のようにイメージされると思いますが、会社はゆったり、じっくりといろいろなものに向き合っていくという雰囲気です。

――CIM総研は2024年3月にCACグループの一員になりました。その経緯をご説明ください。

富田 我々は金型の生産管理という専門性を高めてきたのですが、世の中は技術変化が激しく、経済環境も変わってきています。そのような現状のなかで、もう一歩二歩、会社を成長させようと考えると当時の体制では応えられない部分がありました。

CACさんはAI開発ができる研究開発部門を持っていらっしゃいますし、金融、製薬などのお客さまに関しても非常に強固なサービス基盤を持ちつつ、実際、お客さまに価値を提供し続けています。

そういった企業と一緒になることで、今までの我々になかったプラスアルファが加わり、我々のお客さまにももっと生産性の高いサービスを提供できるのではないかと考え、グループインさせていただきました。

――お二人が初めて顔を合わせたのはいつ頃、どのような場面だったのでしょうか。

CIM総研
Photo by 新井 賢一

東海林 正直、あまり覚えていないんですよね。いつ頃でした?

富田 昨年3月の初旬ごろに、オンラインのミーティングでお会いしたのが初めてだったと思います。営業やマーケティングのスペシャリストの方がCACさんから出向してくださると聞き、「どんな凄い方が来るのだろう」といろいろイメージしていたのですが、お会いしたらすごく穏やかな印象の方でした。

我々は先ほど申し上げたとおり、物事とじっくり向き合いながら進める企業なのですが、東海林さんも要望をしっかり聞いてくださって、やるべきことをじっくり考え、スピード感を持ちながらも丁寧に進めてくださる方だという印象を持ちました。

東海林 私は他の企業に出向するのが初めてで、なおかつ役員の立場でもあったので、どのように受け入れられるのか、ナーバスになっていた部分がありました。そのような状態のなかでお会いした富田さんは非常に頭の回転が速く、業界のこともよくご存じで、会社の未来像も語ってくださるなど、非常に誠実な方という印象を持ちました。

――そんなお二人が、仕事をするうえで大切にしている価値観や信念を教えてください。

CIM総研
Photo by 新井 賢一

富田 我々はCIM総研のミッション・ビジョン・バリュー※のなかで「スピード」や「お客さまの期待に応える、期待を超える」を掲げており、私自身もそれらを大切にしています。

※ミッション・ビジョン・バリュー:企業や組織が活動するうえでの基本的な考え方を示すもの。ミッション(存在価値)、ビジョン(理想像)、バリュー(価値観や行動指針)

現実的には多くの課題があるのですが、お客さまの要望を理解し、かけられている期待を把握したうえで、それを超えるために何をすべきか、どれだけスピーディーに対応できるかを大切にしています。

また、もう一つ、「変化」も重視しています。世の中は大きく変化していますし、我々の会社も様々な経緯のなかでCACグループの一員になりました。その変化をうまく活かせないと、我々の価値を提供できなくなります。変わることは悪いことではない、変えられるものは変えてみよう、という考えを大切にしています。

東海林 私は、目標を高く掲げ、ゴールに向かって諦めずに進んでいくことを信条にしています。少し背伸びをすれば到達できるようなゴールや目標を設定するのではあまり意味がないと思っています。高めの目標を設定すれば、それだけチャレンジ意欲も湧きますし、目標に向けて周囲を巻き込みながら突き進んでいけば、成果を達成したときにみんなで達成感や喜びを分かち合えると考えています。

――日々、忙しくされていると思いますが、仕事以外で興味を持っていることやリフレッシュ方法はありますか?

CIM総研
Photo by 新井 賢一

富田 月並みですが、歩くことでリフレッシュしています。東京都内はJRや私鉄、地下鉄の駅がそれほど離れていない場所が多いので、帰宅の際に通常のルートではなく、あえて別の路線を使い、駅と駅の間を歩きながら考え事をするといったことを頻繁にやっています。歩きながら物事を考えたほうがまとまりやすいですし、リフレッシュできますね。

東海林 私もたまたま同じで、歩いたり走ったりしています。以前は朝、自宅周辺を歩いたり走ったりしてから仕事をするというルーティンでしたが、最近は妻がスマートフォンのウォーキングゲームアプリにハマっていまして(笑)。

妻と一緒に子どもを小学校まで送っていき、その後、一緒に1時間ぐらい歩いてから帰って仕事をするのが日課になっています。CIM総研に出向してからは出張に行く機会も増えましたので、出張先で走ることもあります。

――1年あまり一緒に仕事をされてきて、現在はお互いのことをどのように見ていらっしゃいますか。

富田 東海林さんは営業やマーケティングの面で、マネジメント役としてもプレーヤーとしても、本当にレベルが高い方だと感じています。我々は金型の生産管理という専門性を高め、システムという形でお客さまに届けるよう努めていますので、専門領域であれば深いところまで追求できる自負はあります。

ただ、一歩引いて広い視野で見たときに、お客さまがどのような困りごとを抱えているのか、お客さまの生産性をさらに高めるにはどうすればいいのか、といった周りの部分には目を向けられていませんでした。

東海林さんはそういった周りの部分についてもお客さまの状況を理解し、そのうえで「こういう提案はできないか」などと試行錯誤してくださいますし、チームのパフォーマンスが上がるようなマネジメントをしてくださいます。

今まで各従業員が個別にやってきたものを、組織として成長させるために引っ張ってくださる方だと感じています。

東海林 富田さんは製造業だけではなくて金融の分野にも携わっていらっしゃったので、本当に広い知識や知見をお持ちで、経験も豊富な方です。CIM総研の中では、私は主に営業とマーケティングを担当しています。他に開発担当や導入サポート担当のチームもあるのですが、富田さんはすべての部門に対して非常にきめ細かく見ておられますし、メンバーの方々も非常に厚い信頼を寄せています。

私自身、営業担当の立場ですのでいろいろな戦略を考えるのですが、富田さんのサポートがなければそれらを具現化することはできないでしょう。また、戦略を検討する際には様々な情報を提供してくださり、一緒に考えてくださるので、非常にありがたい存在です。

――お互いに対する要望はございますか。

CIM総研
Photo by 新井 賢一

富田 正式に出向する前の昨年5月から活動してくださっているので、ちょうど1年ほど経過しているのですが、これほどのスピード感で馴染んで頂けたのは予想外でした。すでに当社にとって不可欠な存在になっていらっしゃるので、出向と言わず、このままずっと携わっていただきたいですね(笑)。

東海林 富田さんは仕事が速いので本当に頼りになるのですが、社長としての業務もあるので、本当に忙しくされていると思います。なので、要望というか、少し休んでいただきたいと思っています(笑)。

富田 ありがとうございます(笑)。でも、全然大丈夫ですよ。

――CACグループに入ってから1年あまりが経過しましたが、CIM総研の社内の変化は感じていますか。

富田 いろいろな意味で少しずつ変化しているのを感じています。CACさんから新しい技術も取り込んでいますし、組織としての基盤も融合しつつあるので、会社としての基礎が強固になりつつあると各社員が感じていると思います。

コンプライアンス面など、バックオフィスの部分もCACさんにカバーしていただけているので、より本業の部分に集中し、新しいものに取り組むことができています。

――東海林さんが1年間ご覧になっての変化はいかがでしょうか。

CIM総研
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東海林 元々、CIM総研は「Dr.工程Family」という自社パッケージ製品を開発・販売していましたが、この1年間でCACが扱っているAI製品やDX技術を取り入たり、いろいろな技術や知識を持つCACの関係者と接したりしたことが刺激になっていると思います。

効果の一つは、従来のパッケージやサービス商材以外も取り扱えるようになってきたことです。「Dr.工程Family」というコアの武器を磨き、そしてAIやDXといった武器を増やすことで、同業他社との差別化を進めていけば、CIM総研はさらに成長できると考えています。

――2025年4月にインターモールド展※に出展されました。ブースの内容と、手応えについてお聞かせください。

インターモールド展にCIM総研は生産管理システム『Dr.工程PRO』を出展
インターモールド展にCIM総研は生産管理システム『Dr.工程PRO』を出展

富田 今回はAIを前面に打ち出し、それによって生産管理がどのように変わるかをテーマに出展しました。我々はいい意味でも悪い意味でも一つの物を磨き続けていて、それを毎年、出展してきたのですが、今回はガラリと切り口を変えました。

「これが、我々が考えている新しい形です」というものを少しでも市場で感じてもらおうと考えました。こうすれば良かったという改善点もありましたが、いろいろな反応を得ることができ学びも得られましたし、特に、CIM総研の変化を市場に訴える場としては非常に良かったと感じています。

※インターモールド展:金型技術や金属プレス加工技術に特化した大規模な展示会

東海林 これまで何度かCIM総研とCACの共同で展示会出展していて、ブースには両社のプロダクトやソリューションをそれぞれ展示していたのですが、今回は思い切って、すべて「AI」というキーワードで統一して出展しました。これは非常に効果があったと思います。

ブースへの来場者数も過去の回に比べてずば抜けて多かったですし、プロスペクトやメール閲覧者数も多かったので、今回の試みは成功だったと改めて感じています。変化するCIM総研を多くの人に知ってもらうため、今後も出展は続けていこうと思っています。

『Dr.工程PRO』のイメージ図
『Dr.工程PRO』のイメージ図

>>Dr.工程PRO 高精度の自動スケジューリング機能を備えた金型、試作、特殊装置製造等の個別受注向け工程管理システム

――お二人が思い描くCIM総研の未来の姿、そのなかでどのような役割を担っていきたいと考えているかを教えてください。

富田 我々は「製造業の生産性向上を担う司令塔的ソリューションベンダーへ」というミッションを掲げています。製造の現場や経営サイドから様々な情報を集め、何をすれば生産性が上がるかを考え、我々の視点でお客さまにフィードバックして、そのフィードバックによってお客様の生産性が上がっていく世界を実現したいと考えています。

我々がこれまでに積み上げてきた生産管理に関する知見を活かせる分野ですし、それにAIという技術を加えることで、さらに生産性の向上が期待できます。我々の知見とAIで製造業の生産性を高める、それをイメージではなく具現化していきたいと思います。

東海林 CIM総研は、以前は自社開発のパッケージを販売することに尽きていたと思いますが、CACグループの一員になったことによって、 AIやシステムの開発などを絡めたいろいろな提案ができる可能性が広がってきたと思います。今まではパッケージのカバー範囲外だったためにお断りしていたようなケースでも、CACグループと一緒にいろいろな提案ができる可能性を見出しつつあります。

まだまだ完璧な形ではありませんが、CIM総研は今後、いろいろなことができるようになってくると思います。製造業の全体的な課題を解決してくれる、まさに司令塔のような存在にしていきたいと考えています。

CIM総研
Photo by 新井 賢一

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(提供:CAC Innovation Hub