不動産投資の経費や税金に関する裏ワザはある?

 
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)

不動産投資の経費や税金に関して、特別な裏ワザは存在しません。しかし、以下のように税法の範囲内で、税負担を軽減できる方法がいくつかあります。

  1. 青色申告特別控除の特典を受ける
  2. 減価償却費をうまく活用する
  3. 損益通算で利益を圧縮する

それぞれ詳しく解説します。

1. 青色申告特別控除の特典を受ける

不動産投資で青色申告を選択すると、最大65万円の特別控除を受けられます。複式簿記による記帳と貸借対照表・損益計算書の作成で55万円、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存を行うことで、65万円控除が適用されます。

55万円控除に該当しなくても、青色申告で「10万円の特別控除」を受けることが可能です。10万円の特別控除であれば、マンション1室でも認められるため、小さい規模で不動産投資をスタートする場合でも、青色申告のメリットを受けられます。

参照: No.2072 青色申告特別控除|国税庁

2. 減価償却費をうまく活用する

減価償却費は実際の支出を伴わない経費として計上できるため、キャッシュフローを悪化させずに節税対策が可能となります。中古物件であれば耐用年数が新築よりも短くなるため、新築よりも早期に多額の減価償却費を計上することができます。

さらに建物部分と設備部分を適切に分離することで、設備に対する短い耐用年数を活用し、より多くの減価償却費を計上可能となります。ここで重要なのは、躯体と設備に分けるのであれば“当初申告”で分けることです。

減価償却費は複雑ですが、税金マネジメントの肝となるので、ぜひ押さえておきたい項目です。

3. 損益通算で利益を圧縮する

不動産投資で赤字が発生した場合、給与所得や事業所得などほかの所得と損益通算することで、全体の税負担を軽減できます。損益通算とは、同一年度内で発生した各種所得の利益と損失を相殺する税制上の仕組みです。

物件を購入した初年度は、登録免許税や不動産取得税などの初期費用が多く発生します。多くの経費が発生するため赤字になりやすく、損益通算の効果が高くなります。

不動産投資で経費として落とせるもの一覧

 
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)

不動産投資で経費として落とせるものは、以下のとおりです。

  1. ローン金利
  2. 管理会社の管理委託料
  3. 固定資産税などの税金
  4. 保険料
  5. 減価償却費
  6. 修繕費・修繕積立金
  7. 通信費
  8. 司法書士や税理士に支払う報酬
  9. 旅費・交通費
  10. 広告宣伝費
  11. 交際費
  12. 仲介手数料

それぞれ詳しく解説します。

1. ローン金利

不動産投資用物件のローン金利は、全額経費として計上できます。元本返済部分は経費になりませんが、利息部分は必要経費として認められます。たとえば、毎月の返済額が10万円で、元本返済額が7万円、利息が3万円の場合、経費にできるのは利息の3万円のみです。

ただし、不動産所得が赤字で他の所得と損益通算する場合は、借入金のうち土地部分の利息は経費に計上できません。

利息は、金融機関から送付される返済予定表(利息と元本が区別して記載してある)で確認できます。

2. 管理会社の管理委託料

入居者募集や家賃回収、クレーム対応などを賃貸管理会社に委託した場合の管理委託料は、経費として計上できます。管理委託料は、賃貸経営を円滑に行うために必要な費用であり、一般的に家賃の5〜10%程度が相場です。

また入居者の管理以外にも、マンションなど建物の共用部分の清掃や照明の付け替えのメンテナンスなど、建物の管理業務も発生します。この業務も建物管理会社に委託するのが一般的です。委託した場合、建物管理会社への管理費が経費となります。

3. 固定資産税などの税金

投資用不動産の購入時にかかる不動産取得税や印紙税、所有する間にかかる固定資産税や都市計画税は、経費として計上できます。ただし、不動産所得にかかる所得税や住民税は経費になりません。

4. 保険料

火災保険や地震保険などの損害保険料は、経費として計上可能です。投資用不動産を自然災害や事故から守るために、必要な支出であるためです。

なお、経費計上できるのは、その年にかかった保険料のみです。保険期間が1年単位ではなく、10年のようにまとめて支払う場合には、各年度に対応する保険料を按分して計上します。

5. 減価償却費

減価償却費とは、固定資産の取得費用を一度に全額経費にせず、資産の使用可能期間(耐用年数)に応じて経費計上する費用です。建物や附属設備の取得価額を法定耐用年数で割って算出する減価償却費は、実際の支出がなくても経費計上できます。

耐用年数は木造22年、鉄筋コンクリート造47年など構造により異なります。

6. 修繕費・修繕積立金

原状回復や設備の修理にかかる費用は、修繕費として経費計上できます。

マンションなどの場合、将来の大規模修繕に向けて修繕積立金を用意する必要があります。この修繕積立金も経費計上ができます。

一方、一棟アパートのなかの2部屋をつなげて間取りを変更するなど、資産価値を向上させる工事は「資本的支出」とよばれ減価償却の対象になるため、修繕費と区別しなければなりません。

一般的に、機能を維持するための修理は修繕費、機能を向上させる改良は資本的支出です。判断に迷う場合は、専門家である税理士に相談することをおすすめします。

7. 通信費

不動産投資の運用に直接かかった通信費は経費として計上できます。自宅兼用の場合は使用割合に応じて按分計算します。プライベートと事業の区別を明確にして、適切な割合で按分することが重要です。

8. 司法書士や税理士に支払う報酬

登記手続きや確定申告を専門家に依頼した場合の報酬は、経費計上できます。たとえば、司法書士への登記費用や税理士への申告書作成費用などです。契約書や領収書を適切に保管し、業務内容を明確にしておくことが大切です。

9. 旅費・交通費

物件管理のための交通費は、経費として認められます。距離や頻度に応じて適切に記録し、事業目的であることを明確にしておくことが重要です。

10. 広告宣伝費

入居者募集のための広告費用や看板設置費用は、経費計上できます。たとえば、不動産ポータルサイトへの掲載料やチラシ作成費、看板製作費などです。広告の内容や効果を記録しておくことで、適切な経費計上の根拠となります。

11. 交際費

不動産収入を直接得るためにかかった接待費や飲食費は、交際費として経費になります。具体的には、不動産投資会社の担当者や管理会社のスタッフとの飲食代や手土産代などです。

ただし、事業に直接関連する支出であることを示すためにも、相手や目的を明確に記録しておくことが必要です。プライベートな飲食との区別を明確にし、領収書には相手の氏名や打ち合わせの内容を記録することが必要です。

12. 仲介手数料

売却時に不動産会社に支払う仲介手数料は、経費計上できます。売却時の仲介手数料は、譲渡費用として譲渡所得の計算から差し引けます。

注意すべきなのは、物件の購入時に支払う仲介手数料は取得価額に含まれるため、経費にはならない点です。

不動産投資の経費として落とせないもの

 
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)

不動産投資の経費として落とせないのは、以下の3つが挙げられます。

  1. 所得税・住民税
  2. スーツや時計などの購入費用
  3. 自分への福利厚生費

それぞれ詳しく解説します。

1. 所得税・住民税

所得税および住民税は、給与所得や事業所得など、一定以上の所得がある人が納める税金です。これらは不動産投資をしてもしなくても発生する税金であるため、経費とは認められません。不動産所得も含まれますが、所得税は総合課税であるため経費にはなりません。

ただし、固定資産税や都市計画税などの不動産に直接関係する税金は、経費として計上可能です。

2. スーツや時計などの購入費用

スーツや時計、鞄などは、たとえ取引先との打ち合わせ時だけ使用する場合でも認められません。基本的に鞄や靴などのファッションアイテムは、不動産投資に関係ないと判断されるからです。

3. 自分への福利厚生費

企業に所属していると、従業員向けの保養施設やジムの福利厚生にかかる費用が、妥当な範囲内において経費計上できます。しかし、個人事業主である不動産投資家の場合は、自分用の福利厚生費を経費として計上できません。

たとえば旅行費用やマッサージ代、人間ドック費用などが該当します。これらは個人的な支出とみなされ、事業との関連性が認められないためです。

不動産投資の経費に関してよくある質問

 
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)

不動産投資の経費に関してよくある質問として、以下の2つを解説します。

  1. 経費に上限金額はある?
  2. 経費の相談は誰にしたらいい?

それぞれ詳しく解説します。

1. 経費に上限金額はある?

不動産投資の経費に法的な上限金額はありません。事業に必要かつ合理的な支出であれば、金額の制限なく経費として計上できます。

ただし、経費の内容によっては、税務署から「事業との関連性」や「金額の妥当性」について疑問視される可能性があります。特に高額な経費については、領収書や契約書などの証拠書類を整備し、事業目的であることを明確に説明できるよう準備しておくことが大切です。

2. 経費の相談は誰にしたらいい?

不動産投資の経費についての相談先は、税理士が最も適切な相談相手です。特に不動産投資に詳しい税理士であれば、節税対策や適切な経費計上方法についてアドバイスを受けられるでしょう。

これから不動産投資を始める方は、初めから税理士に相談するのではなく、まずは不動産投資会社に話を聞いてみるのがおすすめです。不動産投資の仕組みから、物件の管理や出口戦略などを総合的にサポートしてくれる会社に相談するとよいでしょう。

不動産投資の経費や節税に関しては専門家に相談しよう

不動産投資における経費には、特別な裏ワザは存在しません。ただし、青色申告特別控除や減価償却費の活用、損益通算など、税制を理解することで節税効果を高めることは可能です。

経費として計上できるものとできないものを正しく理解し、適切な記録を残すことが不動産投資の成功に欠かせません。複雑な税務処理については、不動産投資に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部
「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。