経営者に法人名義の不動産投資がおすすめといわれる理由

 
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)

経営者に法人名義の不動産投資がおすすめといわれる理由は、次のとおりです。

  1. 経営の安定化
  2. 法人と個人の税率の違い
  3. 社宅としての利用

それぞれ詳しく解説します。

1. 経営の安定化

まず、経営そのものに与える影響についてです。法人の内部留保を不動産に転換することは、経営の安定化につながります。不動産は、インフレに強く、価値が安定している実物資産です。不動産として保有することで、会社の経営を安定させる役割をはたします。

また、保有する不動産は、万が一の際に事業を守るためのセーフティーネットとしても機能します。本業が不振に陥った際に不動産を担保として融資を受けたり、売却して事業立て直しの資金に充てたりと、危機を乗り切るための選択肢を増やすことが可能です。

さらに、長期的な視点では、事業承継を含めて考えることができます。世代交代という将来を想定し、会社の長期的な経営の安定化を実現させることが可能です。

法人で購入すると、相続のたびに登記する手間がかかりません。個人で持つ場合、相続のたびに登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)および登記費用がかかり、銀行借入の承継などにも手間がかかります。一方で法人で購入する場合は、登録免許税をはじめとした手数料と手間がかからなくなります。

2. 法人と個人の税率の違い

次に、所得の高い人にとって、法人名義での購入を行うと、税率差でのメリットが得られます。

なぜなら、個人と法人では税率に違いがあるからです。個人の所得税は所得に応じて税率が上がる「超過累進課税」であるのに対し、法人税は、利益額によらず税率がほぼ一定の「比例税率」です。中小法人の場合、実効税率(法人税・地方法人税・法人住民税・事業税などの総合的税率)は2段階です。個人の場合、所得税と住民税を合わせて税率は約55%に達しますが、法人の場合は実行税率約23%~35%の税率(年800万円以下の部分は約23%、年800万円超の部分は約35%)で、法人税率のほうが個人税率よりも大幅に低くなります。

同じ不動産を購入するにも、法人で購入するか個人で購入するかで税率が変わるので、高い税率の方には法人名義での購入も一つの選択肢となります。

3. 社宅としての利用

さらに、購入した不動産を社宅として利用することで、次の2つのメリットが得られます。

経費として計上が可能に

取得した不動産を社宅として提供すれば、維持費や管理費、減価償却費などを法人の経費とすることができるようになります。

法人名義で購入する場合、“豪華社宅”ではなく、かつ適正な社宅としての家賃を受け取れば、固定資産税・ローンの利息・減価償却費・その他初期費用など、維持費や管理費などすべてを損金算入できます。税金を圧縮する効果が期待できます。

会社は住む場所を提供するため、いわゆる給与的な役割ではありますが、社宅に対して給与所得課税は課されません。

福利厚生を充実させられる

法人で購入した不動産を役員や従業員の社宅として提供することで、福利厚生の一環としても活用できます。優秀な人材を確保し定着させるうえで、「住居費を軽減する」という福利厚生面の魅力として押し出すことが可能です。

経営者の不動産投資、法人名義・個人名義どちらを選ぶ?

 
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)

もちろん、法人名義で購入するほかに個人名義で不動産投資を行う方法もあります。

両者の違いは以下のとおりです。

比較項目 法人名義 個人名義
所有者 法人 個人
適用される税金
  • 法人税
  • 地方法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 所得税
  • 住民税
損益通算の対象 事業の利益全体 給与所得などのほかの所得
メリット
  • 本業のリスクヘッジになる
  • 税率が抑えられる
  • 経費として計上できる
  • 会社に関係なく収益がすべて個人のものになる
  • 相続税対策になる
デメリット
  • 融資が本業に影響する可能性がある
  • 個人の不動産投資より融資審査が厳しい場合がある
  • 高所得者は税負担が重くなる可能性がある

どちらが「正解」というよりも、個人の所得や不動産投資の目的、将来的な活用方法などによって適切な方法は異なります。

ここでは、それぞれが適している人を紹介します。

1. 法人名義での購入が適している経営者

法人で不動産を購入する方が適している経営者の特徴は、次のとおりです。

法人投資が適している経営者の特徴 メリット
所得税率が高い人 法人税の低い税率を活かして節税効果を高められる
会社の事業を発展させたい・内部留保を有効活用したい人 内部留保を不動産に転換することで、経営を安定化させる
長期的な相続対策を行いたい方 法人に不動産収益を帰属させることで相続財産の上昇を抑制できる

2. 個人名義での購入が適している経営者

個人で不動産を購入することが適している経営者の特徴は、次のとおりです。

個人投資が適している経営者の特徴 メリット
個人資産として確保したい人 会社の資産とは切り離し、自分の資産として老後や相続に備えられる
自由な判断で売却・運用したい人 経営と関係なく、個人の判断で柔軟に投資や売却ができる
法人と並行して個人でも運用したい人 法人と個人で役割を分け、資産ポートフォリオを広げられる
即効性のある相続対策を行いたい方 他の財産(現預金等)と相殺して相続財産を圧縮できる

経営者が不動産投資を事業として始めるときのポイント

 
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)

経営者が法人名義で不動産投資を始めるときのポイントは、次のとおりです。

  1. 出口戦略まで含めた事業計画を立てる
  2. プライベートとの線引きを明確にする

それぞれ詳しく解説します。

1. 出口戦略まで含めた事業計画を立てる

経営者が法人名義で不動産投資を行う場合、出口戦略まで含めた事業計画を立てることが重要です。

法人での物件購入は、時間が限られたなかで次世代へ財産を承継したい場合には、対策としてうまくいかないかもしれません。

個人でローンを使って物件を購入した場合、相続税評価は購入金額より圧縮されるため、債務(ローン)より財産(物件)の相続税評価額が小さくなり、圧縮された金額分マイナスが生じます。このマイナスを他の財産(現預金等)と相殺して相続財産を圧縮すれば、個人名義で不動産を持つ方が有利に働きます。

法人として相続対策が有効になるのは、法人にキャッシュを積み上げたあと、物件購入によるマイナスと相殺できる環境が整うまで時間がかかります。法人を設立し、10年〜20年という長い時間をかけることで、経営強化の手段として不動産が有効となります。

2. プライベートとの線引きを明確にする

法人名義で不動産投資を行う場合、プライベートとの線引きを明確にすることが大切です。

たとえば、法人名義の物件を役員や家族が私的に使うのは原則NGです。社宅として利用する場合でも、契約書や使用実態、家賃水準に整合性を持たせることが鍵となります。

個人資産との混同を避けるために、賃料収入や管理費、修繕費などのやり取りは法人の口座・契約に一本化します。法人の決算書に不自然な支出が載らないように注意し、必要に応じて税理士と相談しながら正しい運用ルールを整備することが大切です。

経営者は事業設計に注意しながら不動産投資を始めよう

経営者は、法人名義と個人名義のどちらか、または両方で不動産投資を始められます。名義の違いによってメリット・デメリットが異なるため、自分の所得状況と会社の財務状況を整理したうえで、どちらのメリットがより大きいか、または目的に合っているかを踏まえて選択しましょう。

法人名義で不動産投資を始める場合は、事業設計に注意が必要です。さまざまな目的があるとはいえ、事業として成り立つよう、税理士や不動産会社などのプロと相談しながら準備を進めると安心です。

この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部
「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。