この記事は2025年10月24日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「企業業績改善を背景に、年度末にかけて日経平均5万円超えも」を一部編集し、転載したものです。


企業業績改善を背景に、年度末にかけて日経平均5万円超えも
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日本株は7月下旬の日米通商合意以降、米国の利下げ期待やAI関連の成長期待、さらには自由民主党の高市早苗新首相の経済政策への期待感もあり、10月にかけて上伸した。しかし直近では、米中貿易摩擦の再燃や、国内政局の混迷などで雲行きが怪しくなっている。

米中関税交渉について落としどころが早期に見つかるのかは不透明であるほか、国内政局も公明党の連立離脱で不安定感が増した。自民党と日本維新の会の連立が成立し、高市氏が首相に就任する運びとなったが、少数与党での政権運営は容易でないだろう。それ故、株価は短期的には下振れするリスクがある。

一方で、株価の中長期的な動きについては、筆者は楽観的に捉えている。国際通貨基金(IMF)が10月に公表した「世界経済見通し」では、トランプ関税の影響が想定を下回ることなどから、世界の実質GDP伸び率を前回の7月時点よりも上方修正している。来年にかけて底堅い成長が続く見通しだ。

とはいえ、直近の株価急騰による短期的な過熱感に加え、PER(株価収益率)の割高感も指摘される。この十数年間、TOPIXの予想PERはコロナ禍の時期を除き、おおむね13~17倍のレンジで推移していたが、足元ではレンジ上限に達し、上昇余地は乏しい(図表)。しかし筆者は、PERのレンジが以前よりも上方にシフトした可能性が高いとみている。その主な理由は二つある。

一つ目が、デフレからの脱却だ。消費者としては足元の物価上昇は厳しいが、企業による価格転嫁は相応に進んでおり、企業の収益環境はデフレ下よりも改善している。

二つ目が企業の自社株買いの増加だ。資本効率改善のための自社株買いにより、株式数が減ることで、増益率以上のEPS(1株当たり利益)上昇が可能となる。

こうしたマクロとミクロ両面の変化により、EPSの成長期待が以前より高まったのであれば、PERの切り上がりは自然といえる。実際、2023年の春頃から、PERの上昇を伴って株価は上抜けている。このタイミングは、東証が上場企業に資本コストを意識した経営を求めた時期や、2%を超える消費者物価の上昇が1年間続いた時期に当たる。足元のPER上昇は過剰な期待感ではなく、前向きな構造変化を受けたバリュエーション修正と捉えてよいだろう。

こうしたなか、国内企業の業績は、26年3月期こそトランプ関税の影響を受けるものの、来期以降は増益基調に戻るとみられる。株式市場は、業績改善への期待を背景に上昇基調を維持している。26年3月末にかけて日経平均株価は5万円を超え、TOPIXは3,500ポイント程度まで上昇する余地があるだろう。

企業業績改善を背景に、年度末にかけて日経平均5万円超えも
(画像=きんざいOnline)

ちばぎんアセットマネジメント 調査部長/森田 潤
週刊金融財政事情 2025年10月28日号