2020年10月、大学院生だった喬氏が創業したファンフォ(funfo)は、飲食店のためのPOSレジとモバイルオーダーシステムを主軸に、創業数年で累計全国6000店舗以上への導入を実現した。

コロナ禍での苦境を乗り越え、LINEヤフーとの提携やデリバリー事業からの撤退といった意思決定を経て、現在はAIを活用したデータ分析やtoC向け新規事業「food app」にも注力。「人と食をつなぐ」というミッションのもと、日本の飲食業界の未来を切り拓こうとしている。

喬 恒越(きょう こうえつ)──代表取締役
1993年、中国生まれ。2021年、大阪大学大学院経済学研究科修了。大学時代よりゲームメディアとWebサイトを企画・運営し、年間300万PVを達成するなど、企画力と集客力を磨く。2020年、大学院在学中に、飲食店が抱える人手不足をはじめとする経営課題の解決を志し、「人々のライフスタイルを変える」という信念のもと、あらゆる飲食店で導入可能なフリーミアムモデルとモジュール化をコンセプトに据えたモバイルオーダー・POSレジアプリ「funfo」を設計し、ファンフォ株式会社を創業。

ファンフォ株式会社

2020年、京都で創業。誰でも直感的に使えるモバイルオーダー&POSレジアプリ「funfo」を開発。 石垣島から東京、居酒屋からテーマパークまで、地域・規模・業態を問わず導入されるなど、全国数千店舗で利用され、飲食店の課題解決と価値向上を実現している。 さらに、集客課題と消費者ニーズを融合した事前購入チケットアプリ「food app」も展開し、人と食をつなぐライフスタイルカンパニーを目指している。

目次

  1. 創業から現在まで 強みは導入のしやすさと高い拡張性
  2. 飲食店に真に役立つ役立つAI POSを提供したい
  3. IPOを見据えた戦略

創業から現在まで 強みは導入のしやすさと高い拡張性

── 大学院に在学中に起業されたとか。

喬氏(以下、敬称略) 設立は2020年10月で、当時は大学院生でした。当初から飲食店のモバイルオーダーを主軸としていますが、モバイルオーダーにはPOSレジとの連動が不可欠だと感じ、外部連携か自社開発かの二択から自社開発を選びました。今のfunfoは、飲食店特化したPOSレジとモバイルオーダーを提供する会社となっています。

学生起業ゆえにコネクションも限られ、コロナ禍で思うように営業活動ができない中、飛び込み営業を重ね、多くの苦労を経験しました。そのような状況下でも、初期導入店舗のオーナー様と共にプロダクトの改良を重ね、ご紹介の輪が広がり、2020年には数十店舗への導入につながりました。

さらに、2021年8月からはLINEミニアプリを活用したモバイルオーダーの立ち上げにも携わりました。LINEヤフー社との提携を通じて、モバイルオーダーの可能性について議論を重ね、2022年前半からはLINEを活用したモバイルオーダーの推進を本格化させ、事業拡大へとつなげました。

当時、投資家から資金調達をしており、さまざまな方向性を検討する必要がありました。2021年から2022年にかけてはデリバリー事業も開始。システムは構築できたものの、限られたリソースにおいてスタッフ管理が困難で、2023年に撤退しました。当初からの主軸である店内モバイルオーダー事業に注力しているので、事業の根幹は変わっていません。

── モバイルオーダーサービスは他にもあるかと思いますが、御社の強みはどこにありますか?

喬 導入のしやすさ、高い拡張性、LINE連携によるマーケティングのしやすさが当社の3つの強みです。

当社は小規模の飲食店向けのサービスからスタートした会社です。中小店舗がシステムを導入する場合、予算が限られている場合が多いのですが、だからといって、単に安価に提供すれば良いという話ではありません。お客様が自ら設定できる、箱から出してすぐに使えるような体制が必要だと考えました。

2020年から2021年にかけてシステムを設計する際、アプリをモジュール化し、誰でも使えるようにすべきだと考えました。このシステム設計により、飲食店の基幹システムでありながら、訪問不要で導入できるのです。

2025年現在、全国数千店舗に導入いただいており、石垣島の個人店から東京都内のチェーン店まで。

その上、同じく「funfo」を使っていますが、連動端末台数と運用中機能が異なるので、対応できる場面が全然変わります。たとえば、居酒屋ではモバイルオーダーとQR決済を組み合わせ、カフェでは呼び出し番号つきのモバイルオーダーや、テークアウトを設定することもできます。店舗が必要な機能だけを導入できる仕組みです。

レゴのように組み合わせることで、さまざまな飲食業態に対応できます。

──振り返ってみて、 特に成長できたきっかけは何ですか?

喬 学生起業だった2020年頃は、飛び込み営業をしていました。最初の大きな転機となったのが、2021年後半のLINEヤフー社との提携です。

学生起業のため、最初は営業スタイルすら不明でした。LINEの担当者様と一緒に提案する際に、当社の提案内容が不十分だと指摘され、ビジネスにおける提案とは何かをLINE社の担当者様と議論し、学びました。

二つ目は、デリバリー事業からの撤退です。ある程度やってみて継続の難しさを感じました。限られたリソースの中、選択と集中としてデリバリー事業から撤退し、既存のモバイルオーダー事業にさらに集中する意思決定をしました。

そこで得た知識と経験は、モバイルオーダー事業以外に展開するプラットフォームサービス「food app」にも活かされています。新規プロジェクトにおける組織構成、投資方針なども、当時の経験から得られました。

飲食店に真に役立つ役立つAI POSを提供したい

── 今注目されていることといえばAIだと思いますが、特に注目されているのはどんなことですか?

喬 もちろんAIは誰もが話題にするテーマですが、私としては、結果につながらなければ意味がなく、AIはツールに過ぎません。目指す未来は、当社の顧客である飲食店様に真に役立つAIエージェントを提供することです。

funfoは今年2月に、飲食店のデータ分析をAIがサポートする「AI POS」をリリースしました。これは業界でも世界的にも、最も早い飲食店に特化されたAI ツールの一つだと認識しております。実際、毎月かなり使われており、反応を見て日々改善を重ねています。

今年中にAIのアップデートも行い、飲食店の業務を助けるAI、つまりAIのためのAIではなく、経営者や店長、マネージャー、社長のためのAIを目指します。彼らの業務を理解したうえで、AIがそれを代行してくれる世界観です。

funfoは、流行っているからAIを導入するのではなく、お客様の課題を解消できるAIを提供します。さらに高度なAIプロジェクトも進めています。

── 顧客や店舗経営に影響がない部分をAIが担い、店長が考える時間を創出するようなイメージですか。

喬 AIはすぐにすべてを代行できるわけではなく、人間の判断が必要です。たとえば、AIがメールを作成しても、ほとんどの場合、修正してから送信します。ただもともとゼロから作成するよりは、手間を8割〜9割削減できるわけです。

店長のためのAIも同様です。たとえば、人間が行っていたデータ分析業務を、AIが考え方やデータ内容を理解し、レポートを生成する。店長はそれを確認し、店舗実態と合っているか検証します。レポート作成やデータ分析の時間が削減されるため、店長はデータや結果に基づいた行動に集中できるようになります。

── 2月にベータ版をリリースされたそうですが、飲食店からの反響はいかがですか。

喬 7割が好評です。分析の結果、funfoのAIは特定のパターン分析に特化しておりました。。日報作成の時間短縮や、店舗の状況把握を簡単にすることができました。その一方で、お客様からは分析の幅を広げてほしいというご要望をたくさんいただいています。

ただ7割の満足度では、正直まだ低い。ChatGPTのように誰もが「素晴らしい」と感じる革命的なものになっていない。つまりまだ革命性が足りていないと思います。

IPOを見据えた戦略

── 今後の新規事業の構想や既存事業の拡大プラン、経営戦略などはいかがですか?

喬 これはシンプルです。POSレジとモバイルオーダーに関しては、モジュール化したアプリで飲食業界における複数業態に対応できる自信があるので、成功事例を活かし、同じ課題を抱えるお客様への提案を強化します。

中小店舗から始まったfunfoは、代理店との協業で営業開拓を強化します。コスト負担の少ないキャンペーンなども実施し、複数ブランドや複数業態を持つ飲食グループも簡単に導入し容易な管理を実現できる世界観を目指し、代理店連携で中小店舗への導入を強化します。

新規事業としてAI以外に、プラットフォームサービス「food app」に注力します。新規事業は投資フェーズです。本業が順調なため、リソースを確保しつつテストを進め、適切なタイミングでさらにリソースを投入し、事業を伸ばしたいと考えています。

当社はリテールや小売、そして飲食といったローカルビジネスのオンライン化に大きな可能性を感じています。日本は消費大国で、遊びや食の分野は素晴らしく、オンライン化を一層推進すれば、さらなる進化が期待されます。現在、新しいプラットフォームサービスである事前購入チケットアプリ「food app」で、消費者の行動変容を促す取り組みも進めています。

── ファイナンス戦略ですが、IPOやM&Aなども含めて考えていますか?

喬 当社はベンチャーキャピタルや外部投資家から資金調達をしており、IPOを目指している会社です。IPOに向け、持続的な成長を実現し、さまざまなチャレンジをしていかなければなりません。IPOを目標とする企業は多いですが、当社はあくまで通過点に過ぎないと考えています。

持続的な事業成長と未来の可能性を追求し、人々のライフスタイルに大きなインパクトを与えた企業がIPOを達成できると信じ、当社もそうありたいと願っています。

今後は、投資家などからさらなる資金調達をし、POSレジとモバイルオーダーにくわえ、AIとプラットフォームも強化していきたいです。事業を拡張し、トップラインを伸ばし、成長の可能性を追求していけば、大きなIPOになると思います。

拠点を構える京都では、会社を100年やっても「まだまだ若いですね」と言われるほど、100年以上の歴史を持つ企業も多いです。そして京都に限らず、日本には素晴らしい経営者がたくさんいらっしゃいます。当社はまだまだ若輩者です。

その中で、funfoは新しい会社として、日本の飲食業界を変革したいと考えています。新しい技術を積極的に導入し、これまでの課題を解決できなかったものも、今後解決できるかもしれません。

新しい技術のAIも含めて協業アイデアがある方、議論したいとお考えでしたら、共に日本の飲食の未来、日本の未来を語っていきたいと思います。是非ご指導いただきたいです。

氏名
喬 恒越(きょう こうえつ)
社名
ファンフォ株式会社
役職
代表取締役