ひところは国内外でコンスタントに

2020年代に入ってM&Aから遠ざかる形となっていた丸全昭和だが、それ以前はコンスタントに手がけていた。

2002年、昭和電工(現レゾナック)傘下の運送会社である昭和物流(川崎市)、昭和アルミサービス(栃木県小山市)の両社を子会社化したのを手始めにM&Aを本格化した。

続いて2004年にライオン傘下のスマイルライン(東京都港区)を、06年に同じくライオン系列の武州運輸倉庫(東京都港区)を子会社として迎えた。

2018年にはボリビアの「マルゼンサウスアメリカ」の営業権を取得し、南米での物流ネットワークを獲得した。

海外事業をめぐっては東アジア(中国、香港、台湾、韓国)、東南アジア(タイ、ベトナム、シンガポール、インドネシア、マレーシア)、北米・中南米(米国、ボリビア)、欧州(ドイツ)の4エリアに物流拠点や現地事務所を構える。

M&Aのハイライトが訪れたのは2019年。すでに触れた国際埠頭の子会社化だ。筆頭株主の三菱商事などから株式を74億円で買い取り、約35%だった丸全昭和の持ち株比率を約85%に引き上げた。

国際埠頭は1966年に丸全昭和などが出資し、当時、東洋最大級のバルクターミナル(ばら積み貨物の陸揚げ拠点)として横浜港に開業。18万トン級の大型船舶が着岸可能な348メートルの岸壁を備え、東京ドーム3個分の敷地には屋内貯炭場、野積場、穀物サイロ、常・定温倉庫などの保管設備が並ぶ。

「国際埠頭」級の大型案件が飛び出すか

丸全昭和は1931(昭和6)年、横浜市で誕生。創業者・中村全宏が京浜工業地帯に立地する鉄鋼、化学メーカーの工場資材や原材料、製品の荷造り・運搬に乗り出したことに始まる。今日、「100年企業」の仲間入りが近づいてきた。

ただ、足元ではドライバー不足、トラックの多重下請け構造の見直し、倉庫建設コストの上昇など物流業界を取り巻く事業環境が大きく変化。ビジネスモデルの変容を迫られるとともに、業界再編のうねりも本格化しつつある。

こうした中、同社は最速のスピードで企業価値の向上が求められているとし、今までの手法、過去の成功体験を踏襲するだけでは、環境変化に対応できないとの認識だ。手立ての一つとして考えられるのがM&Aに他ならない。

現中計では3年間で100億円のM&A投資を想定している。創業2世紀の扉をどう開くのか、今度こそ枠を使い切るほどの大型案件が飛び出してもおかしくない。

M&A Online
(画像=「M&A Online」より引用)

文:M&A Online