「不動産投資を検討しているものの、どのエリアを選べばいいのかわからない」。そんな方も多いのではないでしょうか?
本連載では、オリックス銀行においてアパートの融資取扱件数が多かった駅を取り上げ、駅周辺の特徴や人口動態、賃料相場の推移などを分析・紹介していきます。今回も、manabu不動産投資運営事務局のメンバーが現地の不動産会社にヒアリング調査も行いました。ぜひ投資エリア選びの参考にしていただければ幸いです。
今回ご紹介するのは、相鉄本線「上星川(かみほしかわ)」駅。2019~2024年にかけて、アパート融資取扱件数が多かった駅の1つです。相鉄本線は、2019年11月にJR線との直通運転で埼京線と乗り入れ、2023年3月にも東急東横線と直通運転を開始したため都心部へのアクセスがよくなりました。上星川駅は隣駅の西谷駅を経由して都心方面へのアクセスもしやすいほか、横浜駅へも約10分でアクセスできるうえに、豊かな自然を感じられる街です。
上星川駅周辺の平均家賃は、横浜市および川崎市全体の水準より月額2万円ほど低いものの、2024年と2025年で比較すると、賃貸物件の募集から成約までの平均募集期間が48.7日→33.9日、中央募集期間が29.5日→20.5日に短縮していますが、一方で高低差のあるやや特殊な地形でもあることから投資検討にあたっては注意も必要です。
相鉄本線 上星川駅ってどんな街?
はじめに、上星川駅のプロフィールや街の特徴について紹介します。
相鉄本線 上星川駅のプロフィール
| 上星川駅の所在地 | 神奈川県横浜市保土ケ谷区 |
| 主要ターミナルへのアクセス | ・横浜駅:約10分(直通) ・新横浜駅:約15分 ・川崎駅:約30分(JR経由) ・渋谷駅:約50分(東急東横線経由) ・東京駅:約60分(JR経由) ・新宿駅:約60分(JR経由) |
| 1日平均乗降客数 | 22,607人 (参考:上星川駅と乗降客数が近い都内の駅) 鶯谷駅23,234人、信濃町駅21,327人 |
| 駅周辺の特徴 | 横浜駅へ約10分の近さと、谷地形に広がる落ち着いた住宅街が共存するエリア。駅の南口には天然温泉やスーパー、ドラッグストアがそろい、日常の買い物からリフレッシュ施設まで徒歩圏内。坂や階段の多い地形も特徴。 |
| 周辺施設の情報 | ・天然温泉施設「満天の湯」 ・上星川商店会(商店街) ・そうてつローゼン上星川店(スーパーマーケット) ・サミットストア上星川店(スーパーマーケット) ・クリエイトS・D上星川駅前店(ドラッグストア) ・城南信用金庫上星川店(金融機関) ・横浜銀行 相鉄上星川駅ATM ・横浜上星川郵便局 ・横浜保土ケ谷中央病院(総合病院) ・横浜国立大学 ・横浜市水道局西谷浄水場 ・ゴールドジム横浜上星川 ・陣ケ下渓谷公園 ・帷子川 ・寿々㐂家(人気ラーメン店) |
相鉄本線の上星川駅は、横浜駅まで各駅停車で約10分の距離に位置し、日々の通勤・通学に便利な立地です。さらに、2023年に開業した相鉄・東急直通線により、西谷駅を経由して新横浜や渋谷方面へのアクセスが向上しました。
駅の「南口」には、スーパーマーケットの「そうてつローゼン」やドラッグストアの「クリエイトS・D」、天然温泉施設「満天の湯」、フィットネスジム「ゴールドジム」などがあり、日常の買い物からリフレッシュ施設までが駅前にそろっています。季節ごとの「かみほしさくらまつり」「かみほし夏まつり」など地域イベントもあり、落ち着いた住環境にありながらも、ほどよい賑わいがあるのも魅力です。
自然環境も身近で、駅から徒歩圏に横浜市唯一の渓谷公園とされる「陣ケ下渓谷公園」があり、帷子川沿いの遊歩道や木陰の散策で四季を感じられます。
少し離れると落ち着いた住宅街が広がり、単身者からファミリー層までさまざまな居住者が混在しています。
上星川エリアを歩いて現地調査してみた
上星川駅にどんな人が住むのか、どんな街なのか、manabu不動産投資事務局メンバーが実際に現地を歩き、不動産投資の視点から感じたことを紹介します。
※上星川エリア(上星川駅を最寄りとするエリア):上星川1~3丁目/東川島町/川島町/坂本町/釜台町/仏向町/仏向西
上星川駅の周辺は、駅を中心として谷地となっており、駅の北側と南側にはいずれも坂や階段が多く高低差があるのが特徴です。
前回取り上げた京急線「南太田」駅と同様に、擁壁がある場所も多く、擁壁がある場合には崩落の危険性がないか、擁壁の所有権がどの土地に帰属するのかといった部分に十分注意する必要があるほか、単純な駅からの距離や分数だけでは賃貸ニーズを把握しづらく、実際に現地に足を運んで検討するというのが非常に重要となってきます。
これはあくまでもメンバーの感想に過ぎませんが、現地に行くまでは「駅から離れた高台にある土地の居住ニーズは、駅近と比べれば落ちるだろう」と思っていました。しかし、実際にそうした場所に歩いて行ってみると、駅から10分強離れた高台の立地であっても外見から一定の入居率があると思われる物件が多く、建築中のものも含め新築戸建が多数建っていました。このことから、駅から離れた高台立地でも価格設定を間違えなければ、居住ニーズが見込めるエリアであるように感じました。
また、あくまでも参考程度ではありますが、インターネットで上星川駅周辺の治安状況について検索してみると、「比較的治安の良いエリア」とも出てきます。これは単なる偶然かもしれませんが、実際に街を歩いていて小さなゴミもほとんど落ちておらず、インターネットでの検索結果にも一定の信ぴょう性があるように思います。
上星川駅周辺の不動産会社にヒアリングした結果
駅北側は横浜国立大学があることから学生が多く、南側も社会人から一定の需要があります。約20年前までは、横浜国立大学など周辺の大学に通うために上星川駅周辺で一人暮らしをしている学生が7割、自宅から通う学生が3割程度の割合だったようですが、現在は逆転しており、親元から通う学生が増えて一人暮らしをしている学生は3割程度に減っているようです。とはいえ、家賃が5万円程度でバス・トイレ別など一定の条件をクリアしていれば、変わらず学生からの需要はあるようです。
社会人は横浜勤務の方や、みなとみらい線へ乗り換えてみなとみらいで勤務する方からの需要が高く、特に駅近の築年数が浅い物件の需要が高いようです。
相場賃料が低いことに加えて、相鉄本線と東横線などの直通運転が始まった恩恵もあって、横浜駅やみなとみらい駅方面だけでなく都内に勤務する社会人からの需要も近年は増えています。そのため、広めの物件や新築の物件は好まれやすいようです。しかしながら、築年数が古い物件になると賃貸付けに苦戦するケースも珍しくなく、1月~3月などのシーズンで入居者が決まらない場合には、空室が続いてしまうこともあるそうです。
また、賃貸情報サイトで上星川駅周辺の賃貸募集情報を検索してみると、1Rや1Kなどの物件は多数出てきますが、1LDK以上の間取りになると検索ヒット数はかなり絞られます。小さめの物件は供給も多く、賃貸付けに苦労しそうな印象がありますが、比較的広めの部屋であれば、賃料設定や建物管理など適切に運営していくことで、一定の需要が期待できそうです。
上星川エリアの人口ポートフォリオ
ここでは、上星川エリアの人口動態について、統計データをもとに紹介します。
人口推移
以下は、対象エリアの人口推移を示したグラフです。人口は、2000年の40,361人から増加を続け、2020年には43,351人に。2025年は43,151人(推定)とほぼ横ばいで、直近5年間では人口は変わっていません。2020年以降で見ると、比較的堅調な推移を続けていることがわかります。
男女年齢別人口
以下は、2020年の国勢調査における上星川エリアの人口を、年齢別および男女別に表示したグラフです。
2020年の男女別人口を見ると、最も厚い層は男性・女性ともに65歳以上で、男性4,052人に対し女性6,316人となっており、顕著に女性高齢層が多いのが特徴です。次点で35~49歳・50~64歳が大きく、現役~プレリタイア層の母集団も厚くなっています。
一方で、15~24歳、25~34歳は相対的に小さく、学生や若年社会人の居住者数は他の年齢層と比べれば限定的といえそうです。その一方で、15歳未満が15~24歳を上回ることや35~49歳のボリュームが多いことを踏まえると、子育て世帯の一定の流入があるようです。
単身世帯/家族世帯割合
以下は、2020年の国勢調査における上星川エリアにおける単身世帯・家族世帯の割合を示したグラフです。
2020年時点での総世帯数は20,117世帯で、そのうち単身世帯が8,390世帯で全体の約42%、家族世帯が11,727世帯で全体の約58%となっています。割合は横浜市平均とほぼ一致しており同等の構造となっています。
上星川エリアは家族世帯の比率が高めであることから、2LDK~3LDKのファミリー層向け物件の需要があることが見込まれます。一方で、単身世帯も約8,400世帯と母数としては大きく、駅近の1K・1LDKにも一定の需要があると想定されます。
人口増加率
以下のグラフは、2000年を基準とした上星川エリア・横浜市・川崎市の人口増加率を示したものです。
2000年比の人口推移を見ると、川崎市は爆発的な増加をしており、横浜市は2020年以降横ばいとなっています。一方、上星川エリアも横浜市全体の推移とやや似た推移をしており、2020年までは増加傾向、それ以降は横ばいで推移しています。
賃料増加率(家賃相場推移)と募集期間の相関性調査
上星川駅周辺の賃貸募集事例のデータを集め、賃料や築年数、徒歩分数や、物件情報サイトの掲載期間を集計し、まとめました。
成約事例ではなく、あくまでも募集事例をもとに分析したデータですが、マーケットの動向を把握するうえでの目安として活用してください。
平均賃料相場推移(1K~1LDK)
以下は、上星川駅、横浜市、川崎市それぞれの平均賃料相場の推移です。
横浜市・川崎市はいずれも右肩上がりで、2020年12月~2025年6月の上昇幅はおおむね15~20%となっています。一方、上星川駅はおおむね7万5,000円前後で推移しており、横浜市平均に対しては常に1~2万円程度の割安が続いています。
上記データは1K~1LDK程度の比較的狭めの物件の募集賃料を平均したものですが、少なくとも、その視点での賃料相場はほぼ横ばいで推移しています。一定の築年数が経過した物件も多いこともあってか、目立った上昇は見られません。
2024年から2025年にかけての賃料等推移
| 1㎡あたり平均賃料 | 1㎡あたり 中央賃料 |
平均募集期間 | 中央募集期間 | 平均築年数 | 平均徒歩分数 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024年1〜12月 | 2,817円 | 2,860円 | 48.7日 | 29.5日 | 15.5年 | 5.8分 |
| 2025年1〜6月 | 2,854円 | 2,861円 | 33.9日 | 20.5日 | 15.8年 | 6.2分 |
2024年から2025年にかけての変化を見ると、賃料水準は1㎡あたり平均2,817円から2,854円と、1.3%の微増となっています。中央値は2,860円から2,861円で横ばいです。
募集期間は平均値で48.7日から33.9日、中央値で29.5から20.5日へと約3割短縮しており、年度末にかけて入居希望者が増加したことが推測されます。
平均徒歩分数は5.8分から6.2分、築年は15.5年から15.8年へと賃貸条件はわずかに悪化しており、本来であれば賃料の下降が想定されるものの、実際には賃料が維持・上昇していることから、実質的な賃料はわずかに上昇しているといえるでしょう。
賃料および募集期間の変動率
| 平均賃料上昇率 | 中央賃料上昇率 | 平均募集期間 | 中央募集期間 | |
|---|---|---|---|---|
| 2024年〜2025年の変動率 | 1.3% | 0.0% | -30.4% | -30.5% |
2024年から2025年にかけての賃料および掲載期間の変動率を見ると、賃料は平均が1.3%増加したものの、中央値は変動がありません。相場の中心価格帯は横ばいで、一部の高単価物件が若干平均を押し上げた形です。
募集期間は平均・中央値ともに約30%の短縮となっており、成約までのスピードが大幅に向上したことがわかります。平均と中央値の短縮幅がほぼ同じであることから、市場全体で成約スピードが均一に速くなっていることが伺えます。
投資のポイント
データから見た投資のポイント
相鉄線 上星川駅は横浜駅まで10分でアクセスできる利便性を有しながらも、豊かな自然に囲まれたエリアです。横浜市平均より1~2万円程度賃料が安いことや相鉄線の延伸もあり、一定の賃貸需要があります。このことは、募集期間が約3割短縮していることからも伺えます。
賃料相場が比較的安価であることに加え、相鉄本線と東横線などの直通運転が始まった恩恵もあって、横浜やみなとみらい方面だけでなく都内に勤務する社会人からの需要も近年は増えています。学生や社会人など単身者向けのニーズも期待できるほか、競合物件の少なさを踏まえれば、ファミリー向け物件での不動産投資という選択肢も考えられます。
一方で、賃貸募集期間で見ると、中央募集期間よりも平均募集期間の方が長めとなっています。新築や築浅の物件であれば比較的入居付けは良さそうですが、築年数が経過した場合には苦戦を強いられるリスクも高まります。そのため、購入段階における長期での収支シミュレーションや立地選定などを丁寧に行うことが、重要な鍵となりそうです。
通常シナリオの収支シミュレーションのみならず、実際の賃料が想定よりも下振れた場合に、どこまでの下振れであれば許容できるのか、そうしたワーストシナリオでのシミュレーションまで行った上で投資検討を行うのが良いでしょう。
現地調査から見た投資のポイント
駅を中心に谷地となっており、高低差も大きい特殊な地形のため、単純な駅からの距離だけでは賃貸ニーズを測り切れない部分も多いです。そのため、必ず事前に現地を調査した上で購入検討する必要があります。
駅近くの比較的フラットなエリアであれば、さまざまな層をターゲットにすることもできるかもしれません。しかし、駅から離れた高台立地の物件は、特に高齢者からは敬遠されてしまう可能性もあるため、立地も踏まえたターゲット選定とその戦略に合致した物件選定が重要なポイントになりそうです。
高低差などの立地を考慮すると、新築や築浅のうちは一定の賃貸需要が期待できる物件でも、築年数が経過すると賃貸付けに苦戦する可能性があります。将来的に売却をしようとしても購入希望者が現れないケースや、購入希望者が現れたとしても融資が付かずに結局売却ができなくなってしまうケースも想定されるため、十分な注意が必要です。
また、学生や若年社会人をターゲットにする場合、30㎡未満などの単身者向けの物件になることが多いと思います。単身者向けは競合物件が多いため、物件の立地や仕様などを考慮した上で、どのように差別化を図っていくかといった戦略は持っておいた方が良いでしょう。
(提供:manabu不動産投資 )
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