エコロシティ株式会社

多様な業界で新規事業の立ち上げや、上場をけん引した経験を持つエコロシティ株式会社の山本麻理代表取締役社長。2024年7月の就任後、駐車場業界が抱える「無駄」「顧客体験の遅れ」「データ活用不足」という3つの社会課題に取り組んでいる。次世代パーキング「エコロパークプラス」への転換を推進し、キャッシュレス化、フラップレス化、データ連携による地域貢献を目指す山本社長に、業界が抱える課題をどう解決するのか、駐車場ビジネスを今後どのように発展させるのか、そしてそのために必要な「人」の重要性について、詳しく聞いた。

山本 麻理(やまもと まり)──代表取締役社長
1969年、神奈川県生まれ。広告代理店での勤務を経て、アドバンテッジリスクマネジメントにてメンタルヘルスケア事業を立ち上げ、事業計画、商品開発、マーケティング、営業戦略を統括。2014年に取締役、2017年には同社の東証一部上場をけん引。2018年より株式会社FRONTEOに参画し、取締役としてAIソリューション事業を統括。ライフサイエンスAI事業の推進や経済安全保障事業の立ち上げに尽力。2024年7月、エコロシティ株式会社代表取締役社長に就任。
エコロシティ株式会社
利用者にとって快適でストレスのない駐車体験を追求する「エコロパーク」を全国に展開。キャッシュレス精算やフラップレス機器、環境にやさしい部材や設計などを導入し、利便性と安心感を高める設備を整備。日常の移動をよりスムーズにする、スマートで快適なサービスを提供している。
企業サイト:https://www.ecolocity.co.jp/

目次

  1. 駐車場業界が抱える3つの社会課題
  2. 次世代パーキング「エコロパークプラス」が描く未来
  3. 変化を推進する「人」の重要性
  4. 駐車場事業の先にある「モビリティハブ構想」

駐車場業界が抱える3つの社会課題

── これまでの事業変遷と現在の事業内容について教えてください。

山本氏(以下、敬称略) 当社は1996年に創業し、コインパーキング業界の中では比較的長い歴史を持つ企業です。私は昨年7月に社長として着任したため、これまでの歩みに直接関与してきてはおりません。

着任にあたり、不動産色が強く男性がトップマネジメントを行う企業が多いこの業界において、多様性を持ち込むこと、そして前職のFRONTEOで培ってきたAIやデータ活用の知見を期待いただいたものと受け止めております。現在の主要事業であるコインパーキングを起点に、次世代モビリティインフラへと進化させていきたいと考えております。

── 就任の直接的なきっかけは何だったのですか?

山本 海外に留学している息子の近くに移住することも考えていたのですが、社長就任のお話をいただき、息子に「海外移住と、エコロシティの社長、どちらが良いと思う?」と相談したところ、「社長でしょう」と背中を押されたのが最終的な決め手です。

── これまでのキャリアで培われた強みは?

山本 私のキャリアの核は、アドバンテッジリスクマネジメントでの17年間と、その後のFRONTEOでの8年間です。これまで異なる業界に身をおいてきましたが、今後も同じ業界内で転職することは考えていません。むしろ、まったく人脈のない新しい環境で、いかに自分の価値を発揮し変化を導いていくか、という挑戦に面白さを感じてきました。キャリアを通じて蓄積された強みは、データ活用能力と、20年以上にわたり法人営業の領域で新規事業をゼロから立ち上げてきた経験です。この二つが私のキャリアの軸であり、専門性だととらえています。

── 御社の特徴や強み、競合優位性について教えてください。

山本 当社の優位性をお話しする前に、私がこの業界に来て一年、俯瞰して見えた大きな課題について触れたいと思います。

第一に、業界全体の「無駄」の多さです。駐車場には大型精算機、フラップ式車止め、ゲートバーといった過剰な部材が設置され、アスファルトの敷設と撤去も頻繁に行われています。この過剰投資は大きな社会課題です。現在、全国に約170万台のコインパーキングがありますが、当社の考える次世代パーキングへの転換により、CO2排出量を最低でも30%削減できます。これは三浦半島一つ分の森林が再生される規模に相当し、業界全体、ひいては国や自治体と連携して取り組むべき喫緊の課題だと考えています。

第二に、決済やカスタマーエクスペリエンス(CX)といった利用者体験向上に向けた取り組みの遅れです。いまだに新500円玉が使えなかったり、インボイスに対応していなかったりする現場が当たり前にあります。看板に英語表記すらない。改善すべきポイントがいくつも見受けられます。他社も同様で、利用者の声に十分に耳を傾けられていないこの状況は業界全体として改善の余地があるように感じました。そして第三の課題が、データ活用の圧倒的な不足です。ある研究データによれば、都市部の渋滞の約30%は、駐車スペースを探して周回する車が原因だとされています。都心では駐車場が不足し、地方では空いているという需給のミスマッチがあるにもかかわらず、イベント時には地方でも大渋滞が発生する。データ活用や自治体との連携によって改善できる余地は計り知れません。

また、配送トラックが駐車スペースを見つけられず路上駐車している危険な状況も、データを活用した駐車スペースの提供で解決できるはずです。こうした業界が抱える3つの大きな社会課題を解決することが、我々の使命だととらえています。

次世代パーキング「エコロパークプラス」が描く未来

── その3つの課題にどのように取り組んでいますか?

山本 これらの課題に対し、我々が競争優位性を確立するための答えは明確です。既存の駐車場を次世代パーキングとして再定義した「EcoloPark⁺(エコロパークプラス)」へと刷新していくことです。

カメラによる車番認識によってQRコードでのキャッシュレス決済が容易になり、同時に利用ログ・データを蓄積できます。これにより、過去にトラブルを起こした車両の識別も可能となり、駐車場で発生する事件・迷惑行為の抑止や地域住民の安心にも繋がります。

「現金が使えないのは不便だ」という声もありますが、諸外国が先行しているように日本でも日常の多くの取引はすでに現金を必要としていません。特に法人利用者はクレジットカード決済が主流であり、利便性や経理処理の点でむしろ優位性があります。また、「高齢者が使えないのでは」という懸念も耳にしますが、中期的に見れば社会のデジタルリテラシーは確実に向上し、カメラ認識とクラウド決済がスタンダードとなる流れは避けられません。私たちはその未来を見据え、次の標準を先に形にしていきたいと考えています。

実際、当社のコールセンターへの問い合わせの上位2件は、「精算ができない」「お釣りが出ない」という現金精算に起因するものです。現金を扱う限り、釣り銭補充や精算機の不具合への対応といった作業負荷はなくなりません。

この状況をデジタル化へ転換することは、単なる社内のコスト削減にとどまらず、労働人口が減少する社会において、限られた労働力をより価値の高い業務に再配置することにもつながります。さらに、車番データを警察と適切に連携できれば、犯罪を未然に防ぐといった一歩進んだ社会貢献も実現できます。

利用者視点でのCX(顧客体験)の向上については、まだまだ取り組むべき改善点が数多く残されています。データ活用について、、当社では不正利用者に対応するためのブラックリストを独自に作成しています。カメラにより、料金を支払わずに出庫した車両は即座に把握でき、担当スタッフがその情報を蓄積し、リスト化しているのです。

つい先ほども、当社の駐車場にブラックリスト掲載車両が入庫したという通知があり、対応を行いました。今後は、こうした取り組みを業界全体で共有・連携し広く利活用していきたいと考えております。

── 料金を支払わずに出庫できるのですか?

山本 残念ながら、フラップがあっても乗り越えてしまえば逃げられます。悪質な利用者は、フラップのない駐車場や監視の甘い場所を狙う傾向にあります。一方で、日本人らしい素晴らしい側面もあります。支払い方法が分からず、わざわざコールセンターにお問合せくださったり、後日振り込んで精算してくださる方も大勢いらっしゃいます。戸惑うことなく精算が行えるよう、当社側の工夫も一層必要だと実感しています。

── 次世代パーキングへの入れ替えは、どの程度進んでいますか?

山本 まだ都内の一部に留まっていますが、今期より本格的な転換フェーズに入ります。新規開設の現場に限らず、既存の現場も対象に、数年かけて順次刷新する予定です。

── 現在全国に駐車場が5000ヵ所あるそうですが、今後の拡大計画は?

山本 具体的な数字は公表していませんが、社内では現在の倍を目指そうと話しています。現在、当社は業界3位ですが、仮に倍増しても上位2社には及びません。

しかし、業界に与える影響力は格段に大きくなります。駐車場事業は参入障壁が低く、特に地方には小規模な事業者が多数存在します。一方で、新紙幣対応やキャッシュレス・カメラ認識などへの設備投資が追いつかずデジタル化の波を前に足踏みしている事業者も少なくありません。まさに今、業界再編のタイミングに差し掛かっています。そうした地方の事業者の方々に当社グループに参画していただくM&Aの推進とオーガニックな成長との両輪で拡大を図っていきます。

── 新規開設にあたり、土地を選ぶ上で重要視する点は何ですか?

山本 第一に駅からの距離とその駅周辺の人流データ、第二に工事や再開発の需要、そして第三に駐車場として運営する場合の入れやすさや視認性の良さです。パークアンドライドの需要は根強く、駅周辺の稼働率は都内・地方問わず非常に高い。駐車場が不足しているケースも多く、工事車両が朝早くから場所取りのために待機している光景も珍しくありません。東京以上に高い需要と稼働率が見込める場所もまだまだ存在します。

変化を推進する「人」の重要性

── 経営者として、特に困難を感じていることは何ですか?

山本 前職のAI企業でも、現在のエコロシティでも共通していますが、最大の課題は、進化し続けるテクノロジーに「人」が追いついていないことです。

新しい技術やデータの活用は、以前より格段に容易になりました。問題は、それを活かす側の人間が変化のスピードに適応できるか。特に、サービスを提供する我々自身が、この変化を前向きにとらえ、楽しむことができなければ、新しい仕組みは世の中に普及しません。

日本の社会は、良くも悪くも協調性を重んじる文化があります。「皆と一緒が良い」という価値観では、イノベーションは生まれません。変化とは、「Better」(より良く)ではなく「Different」(違うこと)をどう実装するかです。この「Different」を推進できる人材をどう集め、どう育てていくか──これが今の私にとってとても重要であり、同時に挑戦的な経営課題です。

── その課題に対し、社内ではどのように対応していますか?

山本 当社は真面目で誠実な人材が多いのですが、最近、新しい挑戦に意欲的な社員も現れています。そうした自律的に課題解決できる人材を中心に、部門横断のプロジェクトチームを複数立ち上げました。私も週に一度ミーティングに参加し、現場から出てくる様々な提案を事業に反映させています。マネジメント層との摩擦を生まないような配慮は必要ですが、プロジェクトマネジメントという形で権限を委譲することで、組織は確実に活性化し始めています。一年で劇的に変えるのは難しいですが、必ず変えられるという手応えを感じています。

駐車場事業の先にある「モビリティハブ構想」

── 今後の事業展望について教えてください。

山本 いずれ駐車場の駐車需要は頭打ちになると見ています。自動車の保有台数が飽和に向かう中で「単に車を停める場所」としての需要は伸び続けません。その先を見据え、我々は駐車場の新たな活用法を構想しています。それが「モビリティハブ」構想です。

たとえば、全国5000ヵ所の拠点網は、都市と地方を結ぶ強力なネットワークです。その一部をドローンポートとして活用する。物流企業がそこから荷物を配送したり、ドローンが発着したりする拠点として提供できます。

また、いずれ日本でも解禁されるであろうロボタクシーの待機拠点としての活用も考えています。タクシーの稼働率は約50%と言われ、残りの時間は乗客を探して走行しています。このアイドルタイムに我々の駐車場を待機場所として使ってもらえれば、無駄な走行を減らし、CO₂削減にも貢献できます。都市部では渋滞緩和につながり、過疎地では高齢者の移動手段の確保といった社会課題の解決にも繋がるでしょう。この変化は、今後4、5年で起こると予測しています。

ぜひ、皆様からもご意見をお聞かせいただき、共に次世代の快適な駐車体験を創り上げていきたいと思います。

氏名
山本 麻理(やまもと まり)
社名
エコロシティ株式会社
役職
代表取締役社長

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