LIXILの背中は遠のくばかりだったが…
建材・住宅設備業界ではLIXILが売上高1兆5000億円を超え、断トツのポジションを固めている。アルミサッシ大手のトーヨーサッシ(トステムなどを経て、現LIXIL)が2001年にトイレなど衛生陶器大手のINAXと経営統合。さらに2010年にはキッチン大手のサンウエーブ工業、アルミサッシ同業の新日軽を買収した。
アルミサッシではかつてトーヨーサッシ、YKKAP、新日軽、不二サッシ、三協アルミニウム工業、立山アルミニウム工業の大手6社体制が確立していた。トーヨーサッシと新日軽はLIXILに糾合され、三協アルミと立山アルミは統合で三協立山となり、再編が進んだ。
こうした中、建材の枠にとどまらず、水回り設備を含めた総合メーカーに飛躍を遂げたのがLIXIL。建材だけで勝負するYKK陣営にとってはLIXILの背中が遠のくばかりだった。
それが今回、パナソニックハウジングの買収により、住宅にかかわるリフォーム需要にほぼフルラインでこたえられる態勢が整う。
M&Aのスイッチが突如入る
YKKは1934(昭和9)年、創業者の吉田忠雄氏がスライドファスナーの製造に乗り出したことに始まる。昭和30年代前半からファスナーの海外生産に着手し、国内製造業としてグローバル企業の先駆けとなったことで知られる。現在では海外生産拠点はおよそ70カ国(建材事業を含む)に及ぶ。
ではM&AへのYKKの過去の取り組みはどうか。1990年後半にスナップボタン製造のスコービル・ジャパン(現YKKスナップファスナー、東京都台東区)の買収を最後に事実上、途絶えていたのが実情だ。
ところが今年は突如、M&Aのスイッチが入った。まず8月末、ドイツの窓・カーテンウォールメーカーのゾイファート・ニクラウス(バイエルン州)の全株式を取得し、子会社化したばかり。ドイツを起点に欧州の窓・カーテンウォール事業に本格参入する狙い。
YKKAPは現行の中期経営計画(2025年度~28年度)で、海外事業の成長を重点方針の一つに掲げており、その初年度に早速M&Aを実行。これに続くのが乾坤一擲ともいえるパナソニックハウジングの大型買収だった。
ライバルLIXILとの距離を今後さらにどう縮めていくのか。二の矢、三の矢にがぜん注目が集まりそうだ。
文:M&A Online