株式会社ユニックス

株式会社ユニックス代表取締役の大貝範夫氏は、先代からの突然のバトンタッチという状況を乗り越えつつ、組織改革、評価制度の導入、そしてタイニーハウス構想や林業の六次産業化といった新たな事業展開を進め、会社をけん引する経営者だ。社長就任時の困難、経営者としての理念、そして未来への展望を聞いた。

大貝範夫(おおがい のりお)──代表取締役
1972年、熊本県生まれ。熊本商科大学付属高等学校卒業後、個人事業主を目指し大学を中退。その後、佐川急便での勤務を経て、顧客の紹介により株式会社ユニックスに派遣社員として入社。3年間の派遣期間を経て正社員となり、九州事業部次長、北関東事業部部長を歴任。2023年、代表取締役に就任。
株式会社ユニックス
1990年、設立。ツーバイフォー建築資材の製造・販売、建て方や木質燃料のチップ製造・販売などを展開。熊本県に本社を置く。
企業サイト:https://unix-k.com/

目次

  1. 「無敵の組織」づくりのための変革
  2. 社長退任の時期を決め、組織の仕組み化に先手を打つ
  3. 災害に対応する「タイニーハウス構想」とは?
  4. 「ユニックスファン」をつくり、次世代へつなげる

「無敵の組織」づくりのための変革

── 2023年9月の代表取締役就任は突然のバトンタッチだったそうですが、当時の思いを教えてください。

大貝氏(以下、敬称略) 本当に突然でした。

先代は木材以外にも、フィリピンでの外国人技能実習生の送り出し機関や、岡山での受け入れ機関の理事長、老人ホームや保育園の経営など、多岐にわたる事業、仕事を進めていた人です。経営について何の話をすることもなく先代が急逝してしまったため、当初はまさにピンチと感じました。

引き継ぎがなかった上に、後から関連企業に関する銀行借入れについて、会社の代表取締役として連帯保証の話なども出てきました。

就任して1ヵ月半は血便が出るほどストレスを感じ、大腸にクレーターもできましたが、困難を乗り越えたときこそチャンスがあります。代表になった以上、やるしかないという覚悟でスタートしました。

── そうしたゼロからのスタートで、社長として指針とするものや参考にしたものはありましたか?

大貝 私の生き方そのものが指針です。経営のスローガンに「無敵の組織をつくる」と掲げていますが、これは単に強いとか敵がいないという意味ではありません。最終的には弊社のファンをつくることにつながると考えており、敵をつくらない、相手を大切にし相手を思う精神が重要だと考えています。

そして、まず社員が幸せになり、周囲の方々が幸せになることで、自分も幸せになる。この根底にある考え方を前提に、スタートしました。

── 社長になって変えたことは何でしょうか?

大貝 評価制度の導入と組織運営の構築、この二つが変革の大きな柱です。

評価制度は、単に経験や知識を評価するのではなく、能力をできるだけ数値化、見える化した評価基準書を作成しています。

組織運営について、以前はフラットな組織でした。変革後は、役割と役職を明確にし、役割に基づいた評価を行う体制を構築しています。役職が上だから偉いとわけではなく、身分と役職は違うということを前提に、それぞれの立ち位置に合った役割を付与し、役割で評価するものです。

また、決算報告会を年に二回開催し、会社全体の利益や給与体系といった情報をすべてオープンにしています。

── そうした変化を起こした根底にある課題は何だったのでしょうか?

大貝 今までは、社員それぞれが自分で目標を決めて進んでいくという組織でした。しかし、それでは評価されない人間も出てきますし、間違った方向に進んでしまうこともあります。さらに自分で自分を評価してしまうなど、これは企業として、変えなければならないことだと感じていました。

このままでは企業が衰退してしまうと感じ、改善しなければならないと強く思ったことも背景にあります。

社長退任の時期を決め、組織の仕組み化に先手を打つ

── 会社に大きな変化を起こす中で、社員の反応はどうでしたか?

大貝 代表就任後、半年かけて全社員と面談を行いました。その中で、社員一人ひとりの要望を聞きつつ、私がこれからどのように経営するかを伝えました。

また銀行と連携し、「幸せデザインサーベイ」を実施しました。これは、社長を介さず、銀行側と専門家が社員に質問を行い、会社の現状を評価するものです。つまり私抜きで実施し、社員が本音で点数をつけてくれます。年に一度の会社の健康診断だととらえ、実施しています。

就任直後で61点という点数は、銀行側からも「就任してすぐの社長でこれだけの点数を取ったのは珍しい。また70点以上の会社は見たことがない」といわれました。今期は65点、来期は70点を目指したいと考えています。

この点数は、私が示すスローガンや経営方針に社員が納得してくれている証拠であり、期待してくれているからこその結果だと感じています。

── なぜそのような高い点数につながっているのでしょう?

大貝 私も叩き上げで、派遣社員から正社員になりました。本部長時代も5年間給料を上げずみ社員皆さんに先ず還元してきました。。給料の上昇額が決まっている中で、自分の給料を上げるよりもまず社員に還元することを優先してきました。私自身も苦い経験をしてきましたので、そんな思いを社員にさせたくないという気持ちでした。

また、「現場主義」も大切にしています。最近は一緒に現場で仕事をする機会は減りましたが、以前は外国人実習生と共に現場でハンマーを叩いて仕事をするなど、現場の社員と同じ目線に立つことを心がけてきました。そうした姿勢が、現場社員に伝わったのではないかと考えています。

── 業務のマニュアル化や外国人教育についても進めているとのことですが、どのような課題からこれらの取り組みを始めたのでしょうか?

大貝 仕組み化していかないと、会社の成長・拡大は望めません。私自身、65歳で代表を降りると決めており、残り12年しかありません。仕組み化とは、属人化をなくし、仕組みで回すことです。私自身がこのポジションに居座り続けることも、会社の成長を妨げる行為だと考えています。

属人化を防ぐには、マニュアル化が不可欠です。誰がつくっても同じ品質のものができるようマニュアルを作成し、現在、週に1つずつ現場の各ラインで作成を進めています。

外国人実習生については、24年ほど前から受け入れており、彼らが「ユニックスに居続けたい」と思うような環境づくりを心がけてきました。

誰も見ていなくても、時間になったらすぐに仕事に取り掛かるような実習生もおり、彼らが主体的に仕事をしてくれることは、教育というよりは、彼らの成長を支援できていると感じます。

── 仕組み化を進める上で、週に一度の見直し以外に気を付けていることはありますか?

大貝 毎週金曜日に必ず、私と本部長間でオンライン会議を行っています。朝7時から、今週の目標に対する実績報告そして来週の行動変化と目標について30分程度で話すシンプルな会議です。

その後、本部長と部長、部長と課長というように、階層ごとに必ず会議を実施します。これにより、情報伝達のズレを防ぎ、組織運営を円滑に進めています。

── 社長から部下への伝達において、情報の伝達効率を重視していますか?

大貝 責任と権限は同じでなければなりません。かといって、任せるのと丸投げは違います。本部長には職掌部分の権限と責任を任せ、週に一度の会議で情報を吸い上げています。

災害に対応する「タイニーハウス構想」とは?

── 熊本地震のご経験からスタートしたタイニーハウス(低価格でトラックなどでの運搬も容易な小屋)構想には、どのような思いがあったのでしょうか?

大貝 熊本地震の後、1ヵ月半、体育館での生活を余儀なくされました。段ボールの仕切りだけではプライベート空間にはならず、3週間後に畳が届いたものの一家族に2枚だけ。それでも、体育館の床よりは快適でしたが。

お風呂も、自衛隊がつくったプールのようなもので、これもないよりはありがたいですが、外から風呂場が見えるような状態でした。

自然災害は必ず起こります。そのときに、タイニーハウスを迅速に量産できる体制を整え、いち早く被災地へ届けたいとずっと思っていました。現在、日本ツーバイフォー建築協会(以下、ツーバイフォー協会)という加盟団体で、その体制づくりを進めています。

弊社の生産能力であれば、ほかの生産をすべてストップすれば、1日に50程度のタイニーハウスの躯体製造が可能です。被災者にプライベートな空間とトイレを提供できるような形で貢献したいという強い思いから、タイニーハウス構想がスタートしました。

── タイニーハウス構想は、全国的な体制として整っているのでしょうか?

大貝 ツーバイフォー協会は全国にありますので、これから体制づくりを進めるところです。タイニーハウス構想はうまくいけばアライアンスパートナーとして業務提携して、タイニーハウスを製造・提供できる工場を持ちたいと考えています。

── 会社としても、事業面で大きな影響は受けたのでしょうか?

大貝 震源地から離れていたため、会社として大きな被害はありません。自宅から会社まで40キロメートルほどあったため、私は会社に住み込むような形で、土曜日に帰宅し、月曜日に朝早く出発するという生活を続けていました。不幸中の幸いでした。

── 林業の六次産業化も進めていますね。

大貝 グループ会社を含めて見たとき、私たちは丸太から製材し、柱やパネルを製造・販売する企業集団です。端材はバイオマス燃料として、新しいエネルギーを生み出します。これは六次産業化に近い形ですが、最終的には伐採や植林まで行うことが本来の六次産業化です。

一方、林業分野では高齢化が進み、あと2~3年で引退を考える他社の社長もいます。そこで、ノウハウのある林業事業者とタッグを組み、実習生制度を活用して一気通貫での作業ができる体制を構築したいと考えています。九州エリアでは、すでに実習生受け入れをスタートしました。

── 六次産業化を進める上で、地域社会への貢献という点にこだわりはありますか?

大貝 自社で一貫して六次産業化を進めている企業は少ないのが現状です。地域社会の財産である木材を活用し、地域材の価値向上、地域雇用の創出、そして地域社会で貢献することで、不動の地位確立を目指したいと考えています。

── 熊本という地域にこだわる理由や、熊本の強みは何でしょうか?

大貝 熊本は九州の中心に位置しているため他県にアクセスがしやすい、またTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)の2つ目の工場が着工するなど、今まさに活気がある地域です。九州全域から、バイオマス燃料の材料を集めることもできます。私も熊本出身ということもあり、この熊本から事業展開を加速させたいと考えています。

── 今後、どのようなパートナーと組んでいきたいですか?

大貝 パートナーを選ぶ上で最も重視するのは、人間性です。その会社の代表の方がどういう人物かというのが鍵になると考えております。私自身も含め、ユニックスの上層部や管理職と合うかどうかも重要です。また、どれだけ仕事ができる方であっても、人間としてつまらない人々とは組めませんし、組んだとしても良い方向には進まないと確信しています。

── 今後のグループ拡大のビジョンについて教えてください。

大貝 現状維持は停滞と同じです。常に2割増しで拡大・成長することを目指しています。具体的には、10年後に100億円企業を目指します。現在、グループで約50億円規模ですので、10年後には倍増させるということです。

「ユニックスファン」をつくり、次世代へつなげる

── 最近ではカナダを視察されたそうですが、そこで感じたことは何でしょうか?

大貝 50年前に北米からツーバイフォー工法が伝わりましたが、現地を訪れると安全基準や品質の面で50年前のままのやり方をしている企業が一部ありました。一方で、進んでいる企業は、工場でパネルを製造し現場で組み立て、アパートや家が1日で建つようなレベルに達しています。

しかし、「ジャパンクオリティ」とはかけ離れていると感じました。特に、先ほどの安全、品質の面が該当します。また、スピード感と現場での迅速な組み立てという点でも、本場とは異なる日本人ならではの強みがあるかもしれません。

すぐにというわけではありませんが、5年後、10年後といった将来的なチャンスがあれば海外展開に挑戦したいと考えています。

また現在、ランバー(製品)をサプライヤーから購入しますが、工場と直接取引ができればコスト削減につながります。今回、2社ほど紹介頂き、大手工場から直接仕入れが可能になったことは、大きな進歩です。

── 日本ならではの強みを海外で再現する際に、最初に取り組むべきことは何でしょうか?

大貝 やはり「品質」です。現地で見たアパートは、荒っぽさを感じ「これでいいのかな」と思わされる部分が目立ちました。スピード感は理解できますが、日本人ならではの繊細さ、きれいな建物の仕上がり、そして安全性が受け入れられるかもしれません。

現地で足場がない新築現場を見たときには驚きましたが、安全面で社員を守りつつお客様に素晴らしいものを提供できることが日本の強みです。

── 海外展開において、どのような人材にチャレンジしてほしいですか?

大貝 前向きな気持ちを持つ社員には、さまざまなことに挑戦してもらいたいと考えています。今期から始めた交流会などを通じて、頑張っている社員や前向きな社員には、海外でのチャレンジも含め、刺激や発見を得られる機会を設けたいです。

── 今後、熊本、日本、そして世界において、どのような存在になりたいですか?

大貝 「ユニックスといえば対応力があり、ファンが多い」といわれるような企業になりたいです。「ユニックスのパネルでつくりたい」と思っていただけるお客様を増やし、最終的には「ユニックスファン」と呼べるような存在をつくりたいと考えています。

「共創」という言葉があるように、お客様と共に‘無敵のユニックス‘をつくることを目指しています。その第一歩として、熊本だけでなく全国のツーバイフォー工法に携わる大工さんや工務店さんにユニックスの名前を知ってもらうことからスタートしたいです。

── 経営者としての今後の取り組みを、あらためて教えてください。

大貝 65歳で引退するという宣言には、会社を仕組み化し、属人化をやめ、次の世代にきっちりとバトンを渡したいという思いがあるからです。時代の流れに合わせて、経営を改善改良し、次世代へ引き継げるようにしたいと考えています。

私たちが今行っている社内改革は、私たちのためだけでなく、次の世代のためであります。‘組織運営の構築と評価制度の確立‘この形さえ整備できれば、後は時代の流れに沿って手を加えながら、その時代に合った経営ができるでしょう。この様な形で会社の仕組化を整えた上で、次世代にバトンを渡せればと思います。

氏名
大貝範夫(おおがい のりお)
社名
株式会社ユニックス
役職
代表取締役

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