「国内不動産価値の最大化」を掲げ、未利用物件の再開発とリゾート再生に注力している株式会社カワムラ建設。創業以来、地道な情報収集と地権者との対話を強みに、潜在的な価値を持つ不動産を掘り起こし、新たな命を吹き込んできた。
2025年には自社クラウドファンディング「K-FUND」を設立し、投資家とともに事業を拡大。不動産と人、地域をつなぐ独自のビジネスモデルで持続可能な社会の実現を目指している。同社を傘下に持つカワケン・ホールディングス代表取締役社長の川村元洋氏に話を聞いた。
企業サイト:https://kawamura-const.co.jp/
目次
実家の工務店が源流 HDやリゾート事業会社も設立
── 川村社長はカワムラ建設の代表ではないとのことですが、現在の事業内容と経営体制について教えてください。
川村氏(以下、敬称略) 弊社は創業11年目です。私のキャリアは不動産業界で、約11年前に独立しました。不動産業の中でも、空き家や未利用の不動産を取得し、再開発する事業がメインです。2年ほど前からは、地方のリゾート物件をリノベーションし、宿泊施設にする事業を別会社で展開しています。
組織についてはおっしゃるとおりで、私が代表を務めているカワケン・ホールディングスがカワムラ建設の100%親会社で、実質的にすべての経営を私が担っています。
もともと実家が川村建設という工務店を営んでいたので、その屋号をそのまま使っています。建設業の許可は取得しておらず、宅地建物取引業を営むうえでこの屋号を使っています。
── 近年はリゾート事業に注力しているそうですね。
川村 はい。地方には空き家物件だけでなく、未利用の保養所も数多く存在します。これらを宿泊施設など、利用価値の高いものへ転用することが目的です。
宿泊施設を作ることで人の流れが生まれ、地方経済の活性化につながります。地方創生に貢献できる点が、この事業の大きなポイントです。
リゾート事業を展開する予定ですが、本業は都心部の物件取得と再開発が中心です。担保評価が出にくい物件の資金調達にクラウドファンディングが有効だと考え、3年前から準備を進め、ようやく許認可も取得しました。
「ローラー作戦」で掘り起こす潜在的物件:ベテラン社員が築く信頼
── 御社の強みはどこにあると分析していますか?
川村 私は不動産業界で30年近く経験を積んでいて、業者間のパイプももちろんありますが、弊社の強みは物件の情報ソースにあります。
土地の所有者である地主様に直接訪問し、まだ物件化されていないものを物件化する活動をしています。
たとえば、権利関係が複雑な土地を取得し、隣接する土地も買い増して規模を拡大することもあります。また、古い物件を取得して入居者の方と移転交渉を行い、新たな建物を建設するケースもあります。
空き家を目視で確認したら、登記簿を閲覧して所有者を特定し、「売却の意思はありませんか」と能動的にアプローチします。このように、市場に流通していない潜在的な売却物件を掘り起こし、情報自体を創造している点が弊社の大きな強みです。
── 独自のネットワークがあるのでしょうか。それとも、地道なローラー作戦で地権者を開拓しているのですか?
川村 地道なローラー作戦ですね。使われていない土地を見かけたら記録し、登記簿で所有者を特定します。地主の皆様のもとへ直接訪問し、「今お使いではないようですが、よろしければ譲っていただけませんか」と交渉する、非常に汗をかく仕事です。他社でも同様の取り組みはありますが、この地道な活動が弊社の最大の強みです。
── 地権者開拓において、効率化をはかる企業もありますが、やはり泥臭い手法が必要なのでしょうか?
川村 AIを活用して登記簿情報をデータ化する企業も存在しますが、不動産の売買はメールだけで完結しません。所有者の方を直接訪問し、売却の同意を得る部分はAI化が難しいと考えています。
不動産は、生まれ育った家や相続した土地など、情緒的な価値を持つものです。車のように簡単に売買できるものではなく、知らない人に媒介することには抵抗があるでしょう。将来的には一部自動化が進むかもしれませんが、最終的なクロージングは対面での交渉が中心になると見ています。
── やはり土地と人の関係は切り離せないものなのでしょうね。
川村 銀行の融資なども、担当者がついて交渉するケースが多く、最終的に人間が介在する取引は今後も続くと考えています。この点は弊社の強みでもあります。弊社には60代、70代のベテラン職員が多く、人生経験が豊富な彼らが地主様と直接対話することで、円滑な意思疎通が可能です。
都心再開発とリゾート再生 土地のポテンシャルを最大限に
── 直近、J-REIT指数が上昇していますが、デベロッパーにとってポジティブな影響があるのでしょうか。市場の動向についてはどう見ていますか?
川村 私見ですが、世界的なマクロで見れば、東京の不動産はまだ上昇する余地があると考えています。円安の影響で外国人投資家の資金が流入しており、特に中華圏の投資家は、自国で所有権を持てないため、東京に土地を持つことを一種のブランドととらえています。こうした投資資金は今後も流入し続けるでしょう。
しかし、弊社は売却を決めていない地主様へアプローチするビジネスモデルです。情報の源泉にいるため、弊社が取得した物件を二次取得として購入する投資家は多いと見ています。
── バリューアップの成功事例について、具体例はありますか?
川村 バリューアップの概念として、都心部の高容積率の不動産の場合、容積を最大限に消化して高層化することが、床面積の増加とともに最も土地のポテンシャルを高め、価値を向上させます。
そのため、弊社は既存の古いビルを取得し、入居者の方と移転交渉を行ったうえで、その場所で建て替えることを重視しています。権利関係の調整を含めたこの再開発が、弊社にとって最も価値を出しやすいバリューアップの手法です。
たとえば、15階建てのビルが建てられる容積率の土地に町工場がある場合、工場を生かしてカフェにする選択肢もありますが、収益率を考えると、建て替えて高層化する方が有利です。その際、町工場の方には一時的に廃業していただくか、移転していただくこともあります。このように、土地のポテンシャルを最大限に引き出すことを優先しています。
── 平均年齢は52歳だそうですが、ベテラン社員が多いことも強みなのでしょうか。また、おにぎり屋を経営されている社員も在籍しているとか。
川村 平均年齢はおっしゃる通り52歳で、私を含め若い社員が平均年齢を下げていますが、ベテラン社員が多いのは事実です。
おにぎり屋を経営している社員もいます。これは、首都高速の工事で収用される予定の土地を弊社が所有しており、一般販売が難しい期間に、その土地の有効活用として期間限定で自社経営しているものです。メイン事業ではありませんが、保有不動産の有効活用の一環です。
少数精鋭で資金調達の苦難、コロナ禍を乗り越えた
── これまでの会社経営で直面した困難についても教えてください。
川村 最大の困難は資金調達でした。不動産を取得するには、自己資金だけでなく金融機関からの借り入れが必要です。創業から10年ほどは、ノンバンクなど多様な方法で資金を調達しており、たいへん苦労しました。
ここ3年ほどで、信用金庫などから返済履歴を評価してもらえるようになり、物件取得費用に対する融資は受けやすくなりましたが、資金調達は今もなお課題です。
── 創業期、組織や家族との間で、意見の対立などはありましたか?
川村 包み隠さずお話しすると、現在、父が(カワムラ建設の)代表を務めていますが、基本的には私の決定で事業を進めています。法人化も私がアドバイスして行いました。そのため、何かを引き継いだというよりも、実家の屋号を使い、私が創業し、父が代表として名を連ねる形です。
苗字と会社名が同じだと、社歴が長いという良い印象を与えられます。これはブランディング上のメリットだと考えています。
実は、企業経営は2回目で、最初に起業したのは29歳頃、約20年前のことです。リーマンショックの金融危機で事業をたたみました。その時は横文字の社名でしたが、自分の名前の方が気合が入ると感じ、実家の屋号をそのまま使うことにしました。
── 創業メンバーから従業員を増やす中で、組織運営における課題はありましたか。現在の従業員数は何人残っていますか?
川村 現在の従業員数は正式には11人です。役員には両親の名前も入っているので、実働している人数は少ないです。全員の顔が見える規模なので、お互いの人柄を理解し、私の考えや気持ちも直接伝えられます。
── 資金調達以外に、コロナ禍など特に大きな困難はありましたか?
川村 まさにコロナ禍です。創業11年の中で、一度だけ赤字決算を出した年がありました。所有していた物件について、マーケットが下火になったため、損切りを決断しました。弊社の規模としては約2億円の損失となり、売却したため、大変な時期でした。
不動産も株と同様に価格が変動します。あの時売却せず今も保有していれば、大きな黒字になっていたかもしれません。しかし、当時は高い金利で資金を調達していたため、利息負担が大きく、持ちこたえることができませんでした。
10月開始のK-FUNDで確かなリターン目指す
── 今後の経営や事業の展望について、特に注力したい新規事業や既存事業は何ですか?
川村 都市開発事業は、都内や大阪の都心部における未利用不動産のバリューアップや再開発を指します。この事業は今後も継続し、拡大する余地が非常に高いと考えています。
また、これから実装するクラウドファンディングを資金調達に活用し、案件ごとに最適な調達方法を組み合わせることで、事業案件をさらに増やしていきたいです。
── リゾート事業については、今後どのように展開する予定ですか?
川村 リゾート事業は「アリビオシリーズ」と名付けています。もともとは私の地元で安く売りに出されていた保養所をリノベーションし、宿泊施設にする構想から始まりました。将来的には全国の都道府県に2施設ずつ、合計100施設近くまで展開したいと考えていましたが、現在は都心部の事業に注力しているため、具体的な時期は未定です。
カワケンリゾートという別会社で物件を長期保有しています。株式会社カワムラ建設の子会社的な位置づけです。この事業は地方創生の側面が非常に強く、利益追求はもちろん重要ですが、未利用の不動産をいかに有効活用し、地域を活性化させるかに注力しています。
── 民泊やNOT A HOTELのように、リノベーション後の物件販売や権利売却を想定しているのですか?
川村 NOT A HOTELさんのように分譲形式で権利を保有し、ハイブランドな宿泊施設を展開するモデルとは異なります。弊社のリゾートは、よりリーズナブルな価格帯で、皆で楽しく過ごせるようなブランディングを目指しています。
11月には伊豆に新築施設が完成します(注:取材は9月末に行われました)。これはバイクツーリング客などが集まって宿泊できるような施設で、土地の利用価値は低いものの、地域活性化につながることを期待しています。
── 将来的なM&AやIPOについての構想は?
川村 M&Aは、買収・売却ともに随時検討しています。財務やリスクの側面から慎重になりますが、相乗効果が見込める企業であれば積極的に考えます。以前、一級建築士事務所の買収を検討したことがありますが、弊社の規模ではデューデリジェンスでリスクを見抜けず、見送りました。建設設計や解体など、シナジーのある会社とのM&Aは今後も検討していく方針です。
また、IPOも検討したことがあります。証券会社と簡易的なデューデリジェンスも行いました。弊社の規模ではグロース市場はまだ難しいですが、プロマーケットであれば可能性はありました。上場することで代表者の個人保証が外れることや、地主様へのアピール力向上といったメリットも感じていました。
約1年前まで検討していましたが、上場にかかるコストや維持費、そして弊社の規模を考慮し、今は見送っています。ある程度の売上と利益のボリュームがあってこそのIPOだと考えており、無理にプロマーケットを目指すよりも、まずは事業内容の充実が先決です。
そのため、クラウドファンディングに注力することにしました。案件ごとに資金調達が可能で、会社自体は非公開でも案件は公開できるため、直接金融で物件を仕入れられます。これが軌道に乗れば、次のステップが見えてくるでしょう。もちろん、人材強化も不可欠です。
── クラウドファンディングに注力すると。
川村 はい。K-FUNDが10月1日に公開されます(注:取材は9月末に行われました)。不動産クラウドファンディングには課題を抱える企業もありますが、成功している企業も多く存在します。
弊社は投資家の皆様に、年利10%を超える高い配当利回りを提供することを目指しています。これは、弊社の物件仕入れ力に自信があるからです。情報の源泉から優良な物件を仕入れ、加工することで高い利益率を確保できます。
弊社のビジネスモデルを理解し、共感してくださる投資家の皆様には、ぜひK-FUNDを通じて共に利益を上げていただきたいです。
弊社の企業秘密とも言える点ですが、物件を取得した段階で、すでに売却先との出口契約がほぼ見えている状態でプロジェクトをスタートすることが多いです。そのため、投資に「絶対」はありませんが、非常に確度の高い案件であり、想定通りの高い利益率を確保できます。
デベロッパーが仕入れる物件は通常そのようなものが多いですが、弊社は特に高い利益率が見込める案件に注力することで、投資家の皆様に安定した高いリターンを提供できます。その裏には、地道なローラー作戦による情報収集があります。ほとんどの案件で出口が決まっていることが強みです。
- 氏名
- 川村元洋(かわむら もとひろ)
- 社名
- カワケン・ホールディングス
- 役職
- 代表取締役社長

