日本の中古ブランド品を、eBayのプラットフォームを通じて輸出する株式会社JP.Company。当初は国内ECに参入し、そこでの成功を収め海外展開にシフトした。2012年の海外進出時は、1ドル=78円の超円高局面であったものの、円安へと状況が変わったことで、これが成長の原動力となった。
代表取締役の荒木淳平氏に、独自のシステム開発力など世界を舞台に戦うための経営資源や組織をどうつくっているのか聞いた。
企業サイト:https://monoshare.jp/
目次
事業を模索した末にeBayでのECを選択
── 設立当初はブランド品のレンタル事業を構想されていたところ、現在はEC事業にシフトしています。その経緯を教えてください。
荒木氏(以下、敬称略) 前職(海外学術書の輸入商社の営業職)とはまったく違うことをやりたいと考えていました。100、200とアイデアを考えていた中で、最初はシェアリングサービスに注目しました。CtoCのシェアリングサービスではどうかと検討しましたが、早々に諦め、その際に仕入れたものを販売したことがきっかけでEC事業に参入したのです。
ECは難しいだろうと身構えていましたが、実際にやってみると意外とできて、国内で一定の成功を収めました。もともと海外展開をしたいという思いもあったため、そこで海外へシフトした経緯です。
── 海外販売にあたり、AmazonではなくeBayを選ばれた理由や、Amazonとの違いについて教えてください。
荒木 日本のECで新品を買うならAmazonですが、中古品を買うならメルカリやヤフオク(Yahoo!オークション)ですよね。それと同じで、アメリカでは新品はAmazon、中古品はeBayがスタンダードになっています。フリマサイトも存在しますが、まだプレゼンスが弱いのが現状です。
そこで、中古品を扱うならeBayが最適だと考えました。
円安局面への転換が成長の原動力に
── 成長における転機となった出来事や時期について教えてください。
荒木 eBayを始めた2012年当時、為替は1ドル=78円でした。当時は輸入ビジネスが主流でしたが、東日本大震災後の日本人の購買意欲低下やリーマンショック後の冷え込みから、日本経済の復活は難しいと感じていました。
そのため、為替レートは悪かったものの、海外で売らなければまずいと考え、輸出に注力したのです。
開始から1年ほど経ち、為替が1ドル=100円を超えたことが、大きなターニングポイントです。それまで苦戦していましたが、100円を超えたことでビジネスのやり方を大きく変え、アクセルを踏めました。当社のビジネスは1ドル=100円を超えると、悪影響が及びにくくなります。
その後、円安が進みアメリカ経済も好調となり、物量を増やしシステム化による効率化を進めたことで、一気に成長できました。
── 現在の円安は追い風ですが、一方でプレーヤーが増えることによる影響もあるかと思います。その影響はどうでしょうか?
荒木 その通りで、必ずしも良いことばかりではありません。リサイクル業は不景気に強いのですが、景気が良いとプレーヤーが増え仕入れが難しくなります。中古品は一点もので状態も異なるため、プレーヤーが増えると競争が激化し、やりづらくなるのです。
円安とプレーヤー増加という背景を考えると、現状はそこまで望ましい状況とはいえません。
── 2021年はコロナ禍で逆風を感じたそうですね。
荒木 はい。コロナ禍では、仕入れ先の古物市場が一時閉鎖するなどしたので、たしかに影響がありました。しかし、その後に、リサイクルが注目され、ECの利用が増えましたので、結果的に元に戻りました。
朝令暮改のeBayに即対応できる、他社にはマネできない開発力
── 社内システムは自社開発しているのでしょうか?
荒木 はい、システムは私が一人で開発してきました。プログラミングができるため、当初はすべて自分で行っていました。現在はシステム部門に引き継いでいますが、外部に開発を委託することはほとんどありません。
── システム開発力は、他社との差別化において大きいかと思います。
荒木 大きいですね。特にeBayはルールやフォーマット、法律などが予告なく頻繁に変わります。その変化に迅速な対応ができるのは、自社で開発しているからです。外部に委託していては、スピードが追いつきません。
── 実店舗を持たず、オンライン中心で事業を展開されている理由を教えてください。
荒木 “一等賞”を取るまで、この分野でトップになるまでは店舗を持たないと決めていました。中小企業は資本や人材が限られているため、リソースを分散させたくなかったのです。また、店舗型は立地が重要になるパワープレーである一方、買取においては特に資本力が求められます。
そのため、初めから買取店をやる方がやりやすいと考えていました。今後は、自社のシステムなどを活用して店舗展開することも考えています。
── 日本のセラーが海外セラーに対して持つ強み、あるいは海外セラーから学びたい点はありますか?
荒木 中古ブランド品においては、日本人が物をきれいに扱うため、海外のセラーよりも有利です。特にヴィンテージ品などは、日本には大切に保管されているものが多く眠っています。
一方、海外のセラーは、アメリカ国内での取引であれば関税がかからず、配送も早いという利点があります。売り方という点で日本人は繊細であるものの、国民性の違いもあり、ブランディングや相互信頼の面でマッチしないケースがあるでしょう。場合によっては、不利になることもあります。
国ごとに異なる効果的なマーケティング手法にどう取り組むか
── 直近ではYouTubeやライブコマースに注力されているとのことですが、今後のマーケティング戦略について教えてください。
荒木 ライブコマースは当社の軸の一つですが、日本ではまだ文化として定着していません。
しかし、アメリカではライブコマースが受け入れられるようになってきており、eBayも注力しています。アメリカで成功したものは日本にも波及すると考えており、当社もその準備を進めているところです。
YouTubeは海外向けにも展開します。また、認知度向上や委託ビジネスへの連携も視野に入れています。
さらにリスクヘッジのため、中古ブランド品以外にも商品の幅を広げました。トレーディングカードやカメラ、着物など、多岐にわたる商品を扱うことで、ECでの販売における相乗効果を狙っています。
eBayでのトップを目指す一方で、中国やヨーロッパ、東南アジアなど、さまざまな国のプラットフォームを用いてグローバル展開。全方位的な戦略を進めています。SNSも重要視しており、注力しています。
── 商品の幅を広げることで、中古ブランド品以外の商材も展開されているのですね。
荒木 はい。中古ブランド品は世界中で嫌いな人が少なく、入り口として扱いやすい商材です。そこを入口に、他の商品へと展開することが比較的容易だと考えています。
── マーケティング施策において、国ごとに気を使う点はあるのでしょうか?
荒木 国や地域によってマーケティング手法は大きく異なります。たとえば、東南アジアでは申し込みフォームだけのシンプルなLPが効果的な場合もあるのです。これは、文化の違いによるものだと考えられます。国・地域単位でのマーケティングは非常に難易度が高いですが、取り組んでいます。
売上高1000億円達成の自信はある
── 組織面の強みはどこにあると分析していますか?
荒木 当社の強みは、システム力、仕入力、そして組織力です。特に仕入力においてはバイヤーの経験と知識で他社に比べて優れていると、自負しています。私自身も元々バイヤーとして培った経験を、現在のバイヤーたちに伝えています。
また、従業員の8割が女性であることも特徴です。これは意図した部分もありますが、自然とそうなった側面もあります。物流や倉庫業務は、女性の方がコツコツと正確に業務をこなすのに長けていると私は考えており、女性が働きやすい福利厚生や社内整備を進めた結果、女性が増えていきました。
もちろん男性の力も必要ですが、現在はより女性が活躍しやすい環境を整備する考えです。
── 将来的な目標として「1000億円宣言」を掲げていますね。
荒木 漠然とですが、売上高1000億円は達成できるという感覚があります。創業当初は100億円を目指しており、2025年9月期の売上高は72.4億円ほどです。今は1000億円という数字を目指すこと自体が楽しいとすら感じています。
ただし、家族の生活など事業以外で考えなければいけないこともあるので、最終的な出口戦略についてはまだ明確に考えていません。上場については、社員が望むのであれば検討する可能性はありますが、現時点では世界で独自性のあるサービスを展開するなど、より面白いことを成し遂げてからにしたいです。
当社の自由度の高さは良さであり、株主の意向に縛られることなく迅速な意思決定ができる現在のスタイルを維持したいと考えています。
── 経営者としてのこだわりや大切にされていることを教えてください。
荒木 会社を長く続けることを最も大切にしています。そのため、目先の利益だけでなく、長期的な視点で会社の存続を考えています。
私たちがどれだけ際立ったプレーヤーであったとしても、周りに悪影響を与えるような人材がいるのは望ましくありません。チーム全体のバランスを重視し、皆が気持ちよく働ける環境をつくることが重要です。
また、大きなチャレンジよりも、日々の小さなチャレンジを数多く行うことを大切にしています。失敗を恐れず、常に新しいことに挑戦し、そこから得られる経験の積み重ねが会社の成長につながると信じているからです。
失敗しても元に戻せば良いという意識で、社員にも積極的にチャレンジすることを奨励しています。
── 現状で懸念していることは、ありますか?
荒木 世界情勢の変化は懸念点です。特にアメリカ経済の動向は、当社の事業に大きく影響するからです。カントリーリスクを考慮しアメリカ以外の市場への展開も進めていますが、国際的な情勢が不安定になった場合、当社の強みである広く展開する力が生かせなくなる可能性を懸念しています。
しかし、システム開発力や商品力があれば、売上は自然と上がるので、何よりも良い商品との出会いを大切にしながら事業を継続することが重要です。
- 氏名
- 荒木淳平(あらき じゅんぺい)
- 社名
- 株式会社JP.Company
- 役職
- 代表取締役

