さくらフォレスト株式会社

株式会社ココシスの通販事業部から分社化し、早期に成長を遂げたD2C企業のさくらフォレスト株式会社。D2C未経験のメンバーだけで事業をスタートしながらも、早くからのウェブ集客への対応、商品開発における「日本一」へのこだわり、そして大胆な組織体制の変革と内製化による「顧客の声」の循環が、成功の裏にある。

海外展開にも注力し、さらなる拡大を目指す髙島励央社長に、成長の軌跡と企業文化を守りながら組織を強くしていくための戦略を、聞く。

髙島励央(たかしま れお)──代表取締役
1980年、長崎県生まれ。2011年、株式会社ココシス入社。2014年、ココシス取締役、およびさくらフォレスト株式会社代表取締役に就任。2015年、美康櫻森有限公司董事に就任。
さくらフォレスト株式会社
2014年、株式会社ココシスから分社する形で設立。通販事業やフォトスタジオなどを運営。通販事業は16年目を迎え、200名を超えるスタッフとともに70種類以上の商品を展開。
企業サイト:https://sakuraforest.co.jp/

目次

  1. 海外展開にも注力、商品開発部なしでもヒットを生み出す
  2. 組織の成長で生まれた課題を解決する体制変更
  3. 競争優位性を築く内製化と「顧客の声」の循環
  4. 誰もが情報にアクセス可、当事者意識を醸成

海外展開にも注力、商品開発部なしでもヒットを生み出す

── 中核事業は通販ですね。

髙島 もともとは、ココシスの通販事業部として始まりました。2014年、通販事業部を分社化して運営しようと、さくらフォレストが設立。その時の売り上げが10億円弱でした。

最初に「きなり」、次に「めなり」という商品がヒットして、売上高が17億円まで上がりました。ここまでは、順調に右肩上がりで推移しています。その後、6年ほどは上がったり下がったりを繰り返しましたが、前期決算で停滞期を抜けた状況です。

── 売上高100億円を目指すと宣言しています。今後の事業拡大に向けて、既存事業の拡大と新規事業参入のどちらに比重を置かれていますか?

髙島 今ある事業を拡大する方に、より力を入れています。海外展開なども注力している分野です。

── D2C分野で、ここまで急成長できた要因は何でし ょうか?

髙島 実は、D2Cの経験者は誰もいなかったのです。つまり、全員未経験からのスタートです。ココシスの社長は以前、株式会社エバーライフで通販の経験がありますが、それ以外のメンバーは経験がありませんでした。

── 未経験からのスタートで、ここまで急成長できたドライバーは何だったのでしょうか?

髙島 分社する前に、ウェブでの集客という糸口が見つかっていました。ウェブで集客するという点で私たちは比較的、早い方だったのです。その先駆者としての優位性が大きかったと考えています。

15年ほど前からさくらフォレストは事業部として存在しており、当時はテレビやチラシがメインでしたが、ウェブに注力する企業はまだ少なかったため、そこで拡大できたことが成長面で大きいですね。

── 「きなり」のような商品開発の強みも、成長の要因ではないでしょうか?

髙島 商品開発においては、「日本一の商品をお客様にお届けしよう」と掲げています。商品開発担当者が「間違いなく日本一だ」と思える商品でなければ、世に出すことはありません。

── 一方、商品開発部がないそうですが、どのような体制で商品開発を進めているのでしょうか?

髙島 商品開発部はありませんが、企画部やマーケティング部はあります。基本的には、企画の担当者が商品開発をすることがほとんどです。

そして、「出したい商品があるなら、日本一の商品といえるものをつくってどんどん発売しよう」というスタンスです。ミーティングで「それは良い商品なのか」「本当に日本一なのか」「売れるのか」といった議論は当然、行いますが、基本的には担当者が「出したい」と思った商品を出すスタイルです。

決裁権は開発担当者が持っています。取締役とその他の役職者はいますが、代表(取締役)が最終の決裁権を持っているわけではありません。担当者の情熱と周りからの信頼という原則のもと、皆で話し合いながら進めていっています。

組織の成長で生まれた課題を解決する体制変更

── 組織面での課題感を教えてください。

髙島 組織が大きくなったことで、熱意を持って進めるための力が下がってしまったのではないかと感じています。ある程度の売り上げが出ると、伸ばすというよりも「守る」という感覚が強くなってしまう。そういう状態が続いていました。

── どのような対策を講じられていますか?

髙島 チーム体制を大きく変えています。これまでは企画部、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)部、コールセンターといったかたまりで運営していましたが、CRM部と企画部を商品カテゴリー別に割る形へ変更。この体制により、通販ビジネス全体を全員が考えながら行動できます。

通常の企画やCRMは、新規顧客獲得やLTV(顧客生涯価値)の向上といった部分だけを見ることが多いですが、そうではなく、一貫してビジネスを見れる状態にしたいとの考えによるものです。たとえば、企画やCRMが横長にあるとしたらそれを商品軸で縦に割り、商品ごとにCRM、企画、コールセンターが一貫して担当するイメージです。

── 組織変更によって、どのような変化を感じていますか?

髙島 特に、企画メンバーの視野が広がったと感じます。以前は新規顧客獲得だけを見るような状態でしたが、今は「再販はどうなのか」「2回目、3回目と、1年後のお客様は続けて購入してくれるのか」と考えられるようになり、それを含めて新規顧客をどう生み出すのか一貫して考えられるようになりました。

会社が小さかったころは皆が全体を見ていましたが、大きくなるにつれてどうしても分断される部分があり、「ここだけやっておけばいい」という状況になっていました。我々としては、会社全体を見られる人材を増やしていきたいと考えています。

競争優位性を築く内製化と「顧客の声」の循環

── 競争優位性はどこにあると分析していますか?

髙島 マーケットは年々厳しくなっており、CPO(顧客獲得単価)も数千円から1万円を超えるようになり、利益が出にくくなっています。サプリメントや機能性食品も昔より競合が多く、再販率も下がるようになりました。

そのような状況下で、私たちの強みは「全部内製化でやっていること」です。ロジスティクス配送以外は、企画、制作、CRM、コールセンター、経理など、ほぼすべて自社で行っています。

── 内製化によって、どのようなメリットがあるのでしょうか?

髙島 商品開発者の思いが全体に伝わりやすく、何か問題があった場合でも、すぐに共有して改善できます。コールセンターの応対も、すぐに変えられます。お客様の声がコールセンターから企画部やCRM部へダイレクトに伝わるため、そのままマーケティングやCRMに生かせるのです。

コールセンターを外注すると、ここまでスムーズに連携できないかもしれません。D2Cにおいて、お客様の顔が見えないことは課題となりがちですが、私たちは直接お客様の声を聞き商品開発やマーケティングに生かすことで、お客様にとっても会社にとっても良いものをつくり出せる人間を育てたいと考えています。

── マーケティングにおいて、特に力を入れていることは?

髙島 新規顧客の獲得とLTVの向上、そして「さくらの森」というブランドをお客様に認知していただくことに注力しています。

── CRMの観点では、どのような取り組みをしていますか?

髙島 100名ほどのスタッフで、お客様の誕生日に動画を送っています。また、1年間継続していただいたお客様には感謝の品を贈呈しています。最近では、お客様を会社にお招きしてファンミーティングを開催し、お客様同士や私たちとの交流を深める試みも始めました。お客様と一緒に、野球観戦や野菜の収穫体験なども行っています。

今後も、お客様と直接交流し、購入できる場を広げていきたいと考えています。

── マーケティング部門の担当者が、広告代理店とやり取りすることもあると思います。代理店と対等にやり取りするための取り組みはありますか?

髙島 代理店に依頼する場合、自分たちの売る力がないと、対等にやり取りできないと考えています。基本的にはまず自分たちで売れる状況を作り、その上で「一緒にやりませんか?」と、代理店と組むスタンスで進めています。

マーケティング部門の人が代理店との窓口になることが多いですが、私から「それは違う」「まったく意味がない」といったことも率直に伝えています。自分たちだけで売れる体制をつくることは難しいですが、それを少しでも実現しようとするのは常に必要な意識です。

誰もが情報にアクセス可、当事者意識を醸成

── 今後、健康食品のカテゴリーをどう拡大する考えですか?

髙島 サプリメントや栄養補助食品から始まり、機能性表示食品、そして医薬品も扱っています。今後、栄養補助食品は広告表現の制約からさほど出さないかもしれませんが、既存のものは拡大を狙います。

また、漢方分野にも力を入れ始めました。さらに、脇の臭いや尿漏れといったいいにくい悩みに関する分野、店で買うのは恥ずかしいといった分野にも挑戦したいです。女性向けのフェムケアといった分野も、挑戦すべきカテゴリーです。

── 組織面での強みについて教えてください。

髙島 組織の強みは、上下関係が薄く、部門間の隔たりが非常に小さいことです。役職の階層もほとんどありません。会社の数的な情報もすべて公開しており、決算書や給与情報などへの社員のアクセスも可能です。

情報が非対称になると上下関係や権限が生まれてしまい、情報にアクセスできる者が強くなるのが嫌だからです。誰もがアクセスでき、いつでも見られる状態にすることで、情報の非対称性をなくし、対等に話せる関係性を築きたいと考えています。能力に関係なく、誰もが情報にアクセスできることが重要です。

── 決裁権についても、社員それぞれにあるそうですが。

髙島 はい。取締役が選ぶのではなく、社員の投票で取締役を選んだという経緯もあり、社員を株主のように見ています。適性がないと感じられる役職者を辞めさせる権利も、皆が持っているような環境です。

── 会社として『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著、FCEキングベアー出版)をバイブルにされているとのことですが、なぜこの本を選ばれたのでしょうか?

髙島 もともとココシスの会長である岡部隆司が、私に「これを読め」とすすめられたからです。私が若いころの話です。迷ったときや新しいチームをつくる際、この本を読むとあるべきところに立ち返ることができます。

成功のための原則が順番に書かれているため、非常に分かりやすいです。『7つの習慣』を読む合宿なども行っています。

── 上場企業ではありませんが、四半期総会をずっと開催されているそうですね。

髙島 はい、昨日も四半期総会がありました。各事業部の業績発表や注力したことなどを発表し、MVPの選出や選ばれた人のプレゼンも行います。15年ほど前から業績報告会として開催しており、社員が数字に触れる機会をつくり、ビジネスへの当事者意識を芽生えさせることが目的です。

── 拡大、成長について、展望を教えてください。

髙島 D2C事業をさらに拡大していきたいと考えています。

しかし、それ以上に今の会社の風土をどれだけ残せるかが重要です。従業員が増えても、皆が成長でき、力を発揮できる状況を担保できるかが、一番重要だということです。売上が増えることはもちろん大切ですが、今とまったく違う会社になってしまっては意味がありません。

海外展開も進めており、台湾と中国は形になってきていますが、ベトナム、インドネシア、フィリピンなども3年以内に形にしたいです。日本の商品を海外で売る場合、単品リピート通販というモデルが合致しないことも多く、売り方を変える必要があります。現地のマーケットに合う形を模索しています。

氏名
髙島励央(たかしま れお)
社名
さくらフォレスト株式会社
役職
代表取締役

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