この記事は2026年1月16日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「最低賃金の全国平均額は大幅上昇、引き上げ傾向は今後も継続」を一部編集し、転載したものです。
(厚生労働省「地域別最低賃金改定状況」)
わが国において賃上げの流れが続くなか、最低賃金の動向も注目されている。本稿では、最低賃金の現状と今後の行方を分析したい。
最低賃金には、都道府県ごとに決定される「地域別最低賃金」と、特定の産業別に決定される「特定最低賃金」がある。最低賃金法では、そのいずれか高い方が優先されることとなっている。
本稿における最低賃金は、地域別最低賃金を指す。厚生労働省が公表している2025年度の「地域別最低賃金改定状況」を見ると、全国加重平均額が大幅に上昇していることが分かる(図表)。
最低賃金を巡っては、25年6月に石破茂政権が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)で「20年代に全国平均1,500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続ける」と掲げられた。最低賃金を上昇させることで個人消費が活性化すると期待され、好意的に受け止められた。こうした当時の政権の意向を受け、25年度の最低賃金の全国加重平均額は前年比で66円(同6.3%)も上昇した。
25年度の最低賃金(時給)の最高額は東京都で1,226円。最低額は高知県、宮崎県、沖縄県の1,023円で、全国加重平均額は1,121円となった。最低賃金には残業代や賞与、通勤手当、家族手当などは含まれず、基本給や職務手当などの合計額を1時間当たりに換算したものとなる。
そもそも最低賃金はどのように決定されるのか。まずは、厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会が、労働者の生計費と賃金、通常の事業の賃金支払い能力を総合的に勘案し、毎年6~7月ごろに最低賃金の目安を定める。その目安をもとに、各都道府県に置かれる地方最低賃金審議会で地域の実情を踏まえて調査・審議が行われる。その後、都道府県労働局長が地域別最低賃金を決定し、10月1日から翌年3月31日までの間に順次発効される流れだ。
今後の最低賃金はどのように推移するのだろうか。前述の石破政権時の「20年代に1,500円」という目標を前提にすると、毎年7.6%の引き上げが必要となる。これはいささか現実味に欠ける。
一方、高市早苗政権は石破政権の目標の撤回はせず、努力目標との認識を示したものの、企業が賃上げできる環境をつくるための政策を実行するとした。同政権は、26年度税制改正大綱でも物価高対策などに力を入れており、国民の所得増に関する感度は高い。筆者は、当面、物価上昇率を上回る水準で最低賃金の引き上げが続くとみている。
アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所 主席研究員/花村 泰廣
週刊金融財政事情 2026年1月20日号