この記事は2026年1月23日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「名目GDP比22%台で高止まる社会保障給付費」を一部編集し、転載したものです。
(国立社会保障・人口問題研究所「社会保障費用統計の概要」)
2026年度の政府予算案において、医療や年金、介護などを合わせた社会保障関係費が過去最大になっている。
社会保障費用統計は、わが国における医療保険や介護保険、年金保険、生活保護などの社会保障制度に係る1年間の国民に対する金銭・サービスの給付等、社会保障全体の規模や政策分野ごとの構成を明らかにするもの。社会保障政策や財政等を検討する資料となる「基幹統計」に位置付けられる。その内訳は「医療」「年金」「福祉その他」で構成され、医療には医療保険給付、年金には公的年金給付、福祉その他には介護対策給付などが分類される。
社会保障(年金、医療、介護、生活保護、子育て支援など)に関する1年間の収支については、当該年度の翌々年度に公表される。厚生労働省が推計する25年度(予算ベース)の社会保障給付費について見ると、分類別規模は、医療が43兆4,000億円(総額に占める割合は30.8%)、年金が62兆5,000億円(同44.4%)、福祉その他が34兆9,000億円(同24.8%)となっている。いずれの区分でも増加傾向をたどっており、合計額では140兆7,000億円と過去最高額を更新した。名目GDPに対する比率は22.4%と高止まりが続く(図表)。
少子高齢化の流れにより社会保障給付費の増加は続くと見込まれる。現役世代の負担が今よりも重くなるならば、社会保障給付の抑制と高齢者の応能負担は必至だ。
こうしたなか、26年度の予算案では、医療分野について①医療費を一定額に抑える高額療養費の限度額引き上げ、②市販薬に似た成分や効果があるOTC類似薬の負担引き上げ、③1カ月間に何回診療を受けても一定額で済む70歳以上の外来特例の上限額引き上げが盛り込まれた。高額療養費制度では、がんや難病などの長期間の治療が必要な患者を対象とする多数回該当分は据え置かれるものの、高額療養費のテーブルが見直され、一時的に医療費が高額となる場合は負担が増える。
また、将来の年金財政の健全化を狙って、昨年6月に成立した年金制度改正法案においては、厚生年金保険の被保険者の適用拡大がさらに進められることが決定された。今後も「支え手」を増やす政策が継続されることになる。
人口動態を見ると、今年77~79歳になる団塊の世代を主に52~55歳になる団塊ジュニア世代が支える構図となっているが、団塊ジュニア世代が65歳以上となる40年の高齢化率(65歳以上人口比率)は約35%まで上昇する見通しだ。各分野において給付額を抑制する流れはさらに加速し、社会保障制度の改正は今後も続くとみられる。
アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所 主席研究員/花村 泰廣
週刊金融財政事情 2026年1月27日号