この記事は2026年3月13日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「旺盛な需要で成長する民泊市場、行政の制度調整を経て成熟化へ」を一部編集し、転載したものです。
事業者が国内で民泊を行うためには、旅館業法または国家戦略特別区域法(特区民泊)、住宅宿泊事業法(民泊新法)の三つの業法の中から一つを選択し、認可または届け出を行う必要がある。民泊新法に基づく届け出の住宅数の推移を見ると、新型コロナ感染拡大の影響で一時減少したものの、2022年ごろから再び増加し、直近では過去最高を更新している(図表)。
民泊の拡大に伴って関連事業が広く展開されており、民泊向け物件の新規開発や賃貸マンションの民泊への切り替えが行われている。東急不動産ホールディングスは25年に民泊サービスを提供する新会社を設立し、民泊の開業から運営、売買まで包括的に支援するプラットフォームの提供を開始した。新興系企業などでも、ITを活用した効率的な民泊運営を行っている。国からの一部出資を活用した民泊向けファンドの組成や、Jリートによる民泊向け物件への投資も後押しする。
民泊事業の成長の理由として、需要サイドでは、宿泊費の高騰やコロナ禍後の旅行需要の拡大のほか、国内外を旅しながら働く「デジタルノマド」に代表されるライフスタイルの多様化がある。こうした旺盛な需要を下支えするのが、国や地方自治体による空き家対策や、違法民泊解消に向けた取り組みだ。さらに、民泊事業から賃貸住宅事業への切り替え(撤退)の容易さや、民泊事業を支援する企業の参入活発化、在留外国人による民泊事業への参画も供給サイドを押し上げる。
一方、民泊の拡大に伴い、騒音問題やごみの廃棄方法に関する摩擦も周辺住民との間で顕在化している。大阪市では25年に、全200室以上を民泊として運用する新築マンションに対する周辺住民の抗議活動もあった。このように民泊に対する住民の不満が高まるなか、特区民泊では新規申請の受け付けを停止する動きがあるほか、民泊新法関係でも規制を強める地方自治体が見られる。
民泊は国内において未成熟な市場だが、宿泊スタイルの自由度の高さや低廉な宿泊コスト志向等への対応に加え、空き家対策と違法民泊解消などの社会的課題の解決も担う。それ故、民泊市場は拡大に向けた一定のポテンシャルを有しているといえる。今後、行政によるさまざまな制度調整や、事業者による新陳代謝の進展の下、民泊市場は成熟に向かっていくと思われる。
都市未来総合研究所 主任研究員/丸山 直樹
週刊金融財政事情 2026年3月17日号