本記事は、佐々木 正悟氏の著書『人生が変わる自分時間の使い方』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
「二人になる」ための手段をスマホ以外で見つけよう
スマホは「一人でいても、誰かと一緒にいる気持ち」を、すぐに用意してくれます。すばやくて、手軽で、時間も場所も選ばないので、現代では欠かせないツールになりました。
ただ、その機能があまりに便利で強力なため、別の手段を使う機会が減っています。一人の時間が始まった瞬間に「スマホとの二人時間」へ切り替えるクセが、定着しつつあるのです。
この変化には、便利さと引き換えにデメリットが生じます。スマホが悪いのではなく、スマホだけが「二人時間」を作る方法になってしまうところに偏りがあるのです。スマホの外側にあった回復の時間、選択の時間、集中への入口が、少しずつ細っていくのです。
たとえば、読書は、以前から「一人で他の誰かと一緒に過ごせる」代表的な方法でした。本を開くと、作者や登場人物の声が心の中に入ってきます。一人で読書しているのに、自分と他者が対話しているような感覚になります。部屋に一人でいても、本を読むことで、まるで一人ではないように思わせてくれます。
もちろん、今でも読書を楽しむ人は多くいますが、「スマホを見る時間が増えたせいで本を読まなくなった」という調査結果も出ています。文化庁による「令和5年度国語に関する世論調査」によると、読書量が減っている理由の1位は「情報機器(携帯電話、スマートフォン等)で時間が取られる」でした。
私は統計的なデータを持ち合わせていませんが、ペットや子どもと同じ空間にいながら、スマホを見続けてしまう人は増えているだろうと思います。犬が飼い主を見上げていても、子どもが話しかけてきても、目線はスマホに向かっている。必ずしも無視をしているわけではなく、スマホが「誰かと一緒にいる感覚」を容易に与えてしまうことで、目の前の関係が疎かになるのです。結果、無自覚なネグレクト「スマホ・ネグレクト」が起こり、コミュニケーション不足による愛着形成の不全や、危険を察知する力の不足による事故の発生につながるとして医師が警告を発するまでになりました。
スマホがなかった時代、私たちは「一人の時間をどう持つか」「一人の時間をどうやり過ごすか」について、もっと工夫していたように思います。スケッチを描く、部屋を整理する、コーヒーを淹れる、勉強する、窓の外を眺める、そういう小さな行為の積み重ねで、自分の心と体を落ち着かせていたはずです。一人でいる時間の中で、心にもう一人の自分を呼びこみ、二人でいる感覚を作りながら自分を見つめ直す。すると自分を回復させる力が高まり、自分の行動を選ぶ力も強まり、集中のスイッチもきちんと入ってくれたのです。
ところが今は、その貴重な「自分時間」が急速に消滅しつつあります。スマホを見ていないと落ち着かないというより、もはや「見ている間だけ落ち着ける」ほどになっています。おかげで、ゆったりとした時間を過ごして自分の中に呼び出していたもう一人の自分すら、なかなか登場しなくなってしまいました。もう一人の自分がいなくても、その隙間をスマホで埋めて満足してしまうのです。絵を描くのも、勉強するのも、景色を眺めるのも、スマホで代替できます。それがあまりに効果的すぎるので、従来の他の方法が「弱く感じられる」ようになります。弱く感じられることは続けられなくなり、続かないから、ますますスマホに依存するようになる。この循環に巻き込まれてしまうと、一人の時間が単調になるばかりです。
スマホを敵にして完全に手放す話をしたいわけではありません。スマホが担っている「二人時間」の機能を理解した上で、スマホ以外の「二人時間」を少しずつ取り戻す提案をしたいのです。スマホを使いながらでも、一人のままで、心を回復する「自分時間」を増やせます。スマホをそばに置きながらでも、自分の行動を選ぶ力をとり戻せます。スマホがある状態でも、集中の起点を作れます。
次からは、そのために何を足していけばよいかを、できるだけやさしく具体的に見ていきます。スマホを手放せない自分を責めずに、「自分時間」をもう一度、取り戻していきましょう。
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