本記事は、佐々木 正悟氏の著書『人生が変わる自分時間の使い方』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

人生が変わる自分時間の使い方
(画像=Ticha/stock.adobe.com)

「二人で一人」を実現するのが集中力

集中力を発揮するとき、人は一人で戦っているように見えて、実際には「二人以上」で協力体制を組んでいます。集中とは「二人で一人」を達成しなければ実現しません。
つまり「集中する」とは、個人技に見せかけたチームプレイだと言えます。

たとえばダンサーが舞台で踊りに没頭しているとき、客席もまた固唾かたずをのんで見守っています。観客が集中しているからダンサーも集中し、ダンサーが集中しているから観客も集中します。互いが互いの集中を引き上げ合って、その瞬間にだけ生まれるパフォーマンスがあるのです。
学校の講義も同じで、聞き手が散漫なら話し手の集中は削られ、話し手が散漫なら聞き手は集中しません。だからこそ、小中学校の先生は子どもたちに向かって「もっと集中して聞きなさい」と繰り返すのです。

集中は、二人の間に生じる相互作用の産物です。ただし私の言う「二人」は、必ずしも目の前にいる相手に限りません。ダンサーと観客、教師と生徒のような「具体的な人間たち」ではなく、むしろ集中を支える「二人」は、自分の内側にいることも多いのです。

たとえば「現在の自分」と「未来の自分」。この二人が手を組むと、強力な集中力が発揮されます。今の自分がやっている行動は、少し先の自分を助けると確信できているとき、人は驚くほど集中できるでしょう。

さらに例を挙げると、マラソンランナーがレース中に集中して走るのは、数十分後の自分も崩れずに走り続けるためでもあります。ペースを守る、給水を取る、フォームを整える、それらの一つ一つが未来の自分の好結果につながると確信しているのです。数十分後の走者がよいコンディションで走れているなら、それは数十分前の自分が「未来の自分の味方」として動いた結果です。現在の自分が未来の自分を裏切ることなく、未来の自分は現在の自分の努力を受け取れる「協調関係」が成立しているとき、人は「二人で一人」になっていると言えます。そして、この「二人で一人」の感覚が集中を持続させているのです。

反対に、現在の自分と過去の自分が協調できないとき、集中はすぐにとぎれます。
朝の自分の振る舞いが今一つだったとき、それを思い出して後悔ばかりしていると、目の前の作業に気持ちが乗りません。手は動いていても心がこもらず、焦りが増すばかりです。
後悔とは、過去の自分を敵として扱ってしまう状態です。「あのとき、ああしていれば」「ああ言わなければ」「ああしなければよかった」といった思考は、過去の自分を裁き、現在の自分を責め、未来の自分を萎縮させます。二人ならぬ三人が互いに足を引っ張り合うため、集中など、まず成立しにくくなります。

この状態を、私はよく「隣の乗客」で考えます。
電車の中で読書に集中したいのに、隣の人が何度も体を揺らしたり、肘をぶつけたり、スマホの音を鳴らしたりすることがあるでしょう。本を読みたいあなたは「やめてくれ」と願いつつ、気が散るたびにページへ意識を戻す作業を繰り返します。けれども、集中しようとすればするほど妨害への怒りが増幅し、ますます集中できなくなるのです。

後悔にとらわれているときの過去の自分は、まさにこの「隣の乗客」のようなものなのです。現在の自分は読書に集中したいのに、過去の自分が騒いで邪魔をするのです。結果、今やるべきことが目の前にあるのに、心は過去への対応に引きずられます。
そのような状態で生じる問題は「協力体制の不備」による集中力欠如です。

つまり、集中を一人称の「根性」や「我慢」で説明しようとしても、あまりうまくいかないものです。集中は、誰かとの協力が成立しているときに自然と生まれ、協力が崩れているときにはどうしてもばらけてしまうものだからです。
もし集中できないなら、自分に腹を立てる前に「今、自分は誰と組めているか」を見直してみるといいでしょう。
未来の自分と組めているでしょうか?
過去の自分に足を引っ張られていないでしょうか?
あるいは、現実の誰かとの関係が集中を阻害していないでしょうか?
集中を取り戻す近道は、集中力そのものを直接いじることではなく、「二人で一人」の協力関係を建て直し、回復させることにあるのです。

人生が変わる自分時間の使い方
佐々木 正悟(ささき・しょうご)
ビジネス心理コンサルタント。心理学学士。実験心理学の博士課程に進学するも中退し、執筆者として活動。行動科学と心理力動の間を往復する著作を執筆。代表作に『いつも先送りするあなたがすぐやる人になる50の方法』『先送り0』。精神分析的視点から「感情の流れ」を読み解くオンラインプログラム『3ヶ月チャレンジ!』を運営。ポッドキャスト『ライフハック時代の精神分析』(配信回数1,000回以上)を配信中。

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