この記事は2026年3月20日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「日本経済の成長に不可欠な生産性の向上」を一部編集し、転載したものです。
(内閣府「潜在成長率」)
1990年代前半のバブル崩壊を境に、日本の経済成長は急減速した。バブル崩壊前の80年代は実質GDP(国内総生産)の成長率が平均で4%を超えていたが、90年代前半には1%前後へ低下。直近の10年間では平均0.5%と、さらに成長ペースが鈍化している。
こうした中で日本の経済成長率を再び上昇させることはできるのだろうか。その糸口を探るため、長い目で見た日本経済の成長力を示す潜在成長率を「労働投入」「資本投入」「生産性」の三つの要素に分けて考えたい(図表)。
労働投入は、経済活動を行うために費やす労働時間の総量(就業者数×1人当たり労働時間)だ。資本投入は、製品・サービスを生み出すために用いる資本(機械設備、ソフトウエア、建物、研究・開発など)の量から計算される。生産性は、経済全体で労働や資本をどれだけ効率的に使うことができるのかを表す指標である。
これら三つの要素がそれぞれどれだけ変化するかによって、実現可能な経済成長のスピードが決まる。すなわち、日本が今後さらに経済成長していくためには、労働人口や労働時間を増やすか、設備などの投資を増やすか、もしくは経済の効率性を高めるしかない。
しかし、日本では人口減少・少子高齢化や労働時間の削減などにより、労働投入の大幅な増加は期待できない。また、企業は成長余地のある海外への投資に資金を振り向けており、国内の資本投入が不足している。結果的に日本では、生産性の変化が経済成長に対して相対的に大きなインパクトを持つようになっている。
では、どうすれば日本の生産性を向上させることができるのか。カギとなるのは次の二つの要素だ。
一つ目は、企業の新陳代謝である。企業は、労働力や資本といった生産要素を用いて製品・サービスを生み出す役割を担っている。高い技術やノウハウを持つ新しい企業が増え、既存の企業を置き換えていく新陳代謝のプロセスが進むと、経済全体の生産性が向上する効果があるだろう。
二つ目は、投資から生産性への波及効果である。企業が行う投資は、資本投入の増加を通じて生産能力を拡大させるだけでなく、新たな技術の取り込みやプロセスの効率化、製品・サービスの高付加価値化などを通じて、生産性を向上させる副次的な効果を持つと考えられる。特に、機械設備や情報通信設備、ソフトウエア、人的・組織資本開発といった複数の種類の投資を組み合わせると、シナジーの発揮で生産性向上効果が得られやすい。
本連載では今回から、この二つの要因に着目して日本の生産性、ひいては経済成長率を高める方法を探っていきたい。
みずほリサーチ&テクノロジーズ チーフ日本経済エコノミスト/服部 直樹
週刊金融財政事情 2026年3月24日号