この記事は2026年4月3日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「生産性向上のカギを握る組織資本などによる「ビジネス革新」」を一部編集し、転載したものです。


生産性向上のカギを握る組織資本などによる「ビジネス革新」
(画像=everythingpossible/stock.adobe.com)

(Luiss Lab of European Economics “EUKLEMS & INTANProd”)

前回は、生産性向上のために企業の新陳代謝に着目した。今回は、効率的に生産性向上効果を生む投資の在り方について考察する。

企業が行う投資には、単に生産能力を拡大させるだけでなく、新技術の取り込みや、製品・サービスの高付加価値化を通じて生産性を向上させる効果もあると考えられる。特に、多様な投資を組み合わせることで、生産性向上効果が高まる傾向がある。企業の投資は、大まかに有形資産の「①機械・建物」と「②ICT」、無形資産の「③技術・著作物」と「④ビジネス革新」の計4種類に分類できる。

①有形資産(機械・建物)は、生産活動に長期間利用される工場や機械等の有形固定資産のことである。②有形資産(ICT)は、PCやサーバーなど、情報通信技術関連のハードウエアを指す。③無形資産(技術・著作物)には、ソフトウエアや研究開発のほか、映像・音楽などのコンテンツが該当する。④無形資産(ビジネス革新)には、組織資本や人的資本、デザイン、ブランドといったビジネス関連の資産が含まれる。

なお、組織資本は企業が業務を効率的に運営するための仕組みだ。例えば、業務過程の改善や組織改編等が組織資本投資に相当する。

図表は、日本における4種類の投資の増減を示したものだ。②有形資産(ICT)が年平均3.2%増と堅調に伸びている一方で、④無形資産(ビジネス革新)はマイナス圏にある。日本企業が人的資本や組織資本といったビジネス革新関連の投資を十分に行ってこなかった様子がうかがえる。

一方、4種類の投資の組み合わせが生産性に与える影響を統計的に分析した結果、④無形資産(ビジネス革新)を中心とした複数の組み合わせ投資が、生産性向上に好影響をもたらす可能性があると示唆された。

例えば、①有形資産(機械・建物)×④無形資産(ビジネス革新)の組み合わせ投資を考えてみたい。企業が生産拡大のために新工場を建設する(①)場合、稼働当初は生産体制が未確立で歩留まりが低い傾向にあると考えられる。

そこで、不具合が出やすい工程の把握や効率的な作業順序の確立といった組織知の蓄積・共有(④)を行うと、歩留まりを改善できるだろう。これは、①工場の建設×④組織資本投資による生産性向上のシナジー効果を意味する。

また、③無形資産(技術・著作物)と④無形資産(ビジネス革新)を組み合わせるケースもある。このケースでは、新規ソフトウエアの導入(③)や業務研修・組織改編(④)をそれぞれ単独で行うケースに比べ、ソフトウエア導入に合わせて使用方法の研修や業務フローの改善を同時に行うかたちになり、生産性の向上効果は大きくなるであろう。

このように、無形資産のビジネス革新は他の投資と補完関係にある。それ故、生産性向上の重要なカギを握っているといえよう。

生産性向上のカギを握る組織資本などによる「ビジネス革新」
(画像=きんざいOnline)

みずほ総合研究所 調査部 エコノミスト/阿部 大樹
週刊金融財政事情 2026年4月7日号