この記事は2026年6月5日に配信されたメールマガジン「アンダースロー:食料品の消費減税 来年4月から1%とする案が有力に」を一部編集し、転載したものです。

アンダースロー
(画像=years/stock.adobe.com)

目次

  1. 食料品の消費減税 来年4月から1%とする案が有力に
    1. 食料品の消費税を来年4月から1%とする案が有力となっていることについてはどうご覧になっていますか?
    2. 「実質0%」を達成する案についてはどうみていますか?
    3. 消費減税の効果についてはどうでしょうか?
    4. 財源確保についてはどうお考えですか?
    5. 植田日銀総裁が利上げの可能性に言及したことについてはどう受け止めていますか?
    6. 中東情勢が不透明な中、利上げのタイミングについてはどうご覧になっていますか?

食料品の消費減税 来年4月から1%とする案が有力に

  • 食料品の消費税を来年4月から1%とする案が有力となっていることについてはどうご覧になっていますか?
  • 「実質0%」を達成する案についてはどうみていますか?
  • 消費減税の効果についてはどうでしょうか?
  • 財源確保についてはどうお考えですか?
  • 植田日銀総裁が利上げの可能性に言及したことについてはどう受け止めていますか?
  • 中東情勢が不透明な中、利上げのタイミングについてはどうご覧になっていますか?

以下は会田がコメンテーターとして出演している文化放送の「おはよう寺ちゃん」の内容の一部をまとめ、加筆・修正したものです。

食料品の消費税を来年4月から1%とする案が有力となっていることについてはどうご覧になっていますか?

問(寺島):政府と与野党による社会保障国民会議の実務者会議が、食料品を対象にした2年間限定の消費税減税について本格的な議論を始めました。政府側は、税率「1%」への引き下げであれば、半年程度の準備期間で実現可能との見解を示しています。政府内では、早期実施を優先して、来年4月から1%とする案が有力で、高市総理が今月中にも最終判断するとされています。消費減税の実施に必要な準備期間について、政府が、レジシステム事業者や小売事業者への聞き取り調査結果を公表しました。税率「1%」への引き下げなら半年程度で対応できるが、「ゼロ」だと1年程度かかるといわれています。早期実施を優先して、来年4月から1%とする案が有力となっていることについてはどうご覧になっていますか?

答(会田):消費税の減税は、高市政権の日本経済再生のマクロ戦略の重要なピースです。サナエノミクスの主軸は、官民連携の戦略投資の拡大です。バラマキではありません。投資の拡大が、供給能力の回復としての国力の回復となり、労働生産性の上昇よる実質賃金の強い上昇として、景気回復の果実が国民に回ります。しかし、投資の拡大から国民に果実が回るまでには、時間がかかります。その間は、積極財政によって、国民の生活を支える必要があります。今年度は、所得税の減税、エネルギーコストの軽減策などで支え、来年度と再来年度は消費税減税で支えることで、3年間の支援パッケージとなります。4年目からは、投資拡大の果実がみのることを目指します。消費税の減税なしではこのパッケージは完成しませんから、減税の早期実施を優先することもあり得ますし、合理的です。

「実質0%」を達成する案についてはどうみていますか?

問(寺島):自民党と日本維新の会は2月の衆院選で、2年間の食料品の消費税ゼロに向けた検討加速を公約に掲げたわけですが、政府内では、税率を1%とする場合、1%分の6000億円を補助金などで国民に還元して、「実質0%」を達成する案も浮上しているとされています。高市政権は「公約破り」との批判を警戒していますが、0%の公約との整合性についてはどうみていますか?

答(会田):消費税の減税の早期実施で1%のスタートとなっても、減税の2年目まではレジシステムの対応の時間が十分にあるわけですから、2年目からは0%にすることはできるはずです。また、1%分は、エネルギーコストの軽減策などで、国民に還元することは合理的です。投資の拡大から国民に果実が回るまで、国民の生活を支えることが非常に重要です。内需が腰折れてしまえば、国内投資からのリターンが期待できなくなり、企業は投資を拡大できないからです。内需を支えることによって、投資の拡大が可能になります。その意味で、消費税の減税は、バラマキではなく、投資であることになります。

消費減税の効果についてはどうでしょうか?

問(寺島):国民会議は今後、数回議論を重ねて、今月下旬の中間とりまとめを目指します。高市総理はこれを踏まえ、減税の実施を表明する見通しです。議長を務める自民党の小野寺・税制調査会長は、「消費税減税についての考え方は賛同する党が多かった」と述べました。ただ、会合では野党から「本当に物価高対策になるのか」といった懐疑的な意見も出たようですが、その効果についてはどうなのでしょうか?

答(会田):消費税の減税は、投資の拡大から国民に果実が回るまでには、時間がかかることへの対応です。物価上昇の国民負担を軽減するには、実質賃金を強く上昇させる必要があります。そのためには、投資の拡大が必要です。投資の拡大なくして、物価上昇を上回る持続的な賃金上昇はありません。投資の拡大による実質賃金の上昇という本当の意味での物価高対策が効果を発揮するまでの期間の家計支援として、消費税の減税が位置づけられます。消費税の減税が「本当に物価高対策になるのか」というのは、本筋の議論ではありません。

財源確保についてはどうお考えですか?

問(寺島):税率を現行の8%から1%に引き下げると年4.3兆円ほどの税収減が見込まれるため、穴埋めの財源確保も課題となっています。財政悪化を懸念して、円安が進んでしまい、せっかく食料品の消費税を減税したのに効果が半減ということにはならないのでしょうか?

答(会田):消費税を減税しても、2028年度の税収は、2026年度を上回るとみられます。財源の問題はほとんどありません。税収は、社会保障費を含む義務的支出を上回っていて、消費税が減税されることによって、社会保障費の減額が必要となるものではありません。2014年度の消費税の増税以前と比較し、2026年度の消費税収は16兆円程度も増加しています。一方、社会保障費は10兆円程度しか増えておらず、消費税を取り過ぎています。2028年度の税収が十分大きいことが確認できれば、2029年度から毎年1%ずつの引き上げるなど、ゆっくり戻すことも可能だと考えます。

植田日銀総裁が利上げの可能性に言及したことについてはどう受け止めていますか?

問(寺島):一方、日銀の植田総裁は講演先で、中東情勢が改善せずに「不透明な状況」が続く場合でも、物価が上振れするリスクが高まると判断すれば利上げを議論する可能性に言及しました。日銀は15、16日に金融政策決定会合を開く予定で、市場では利上げ判断を示唆した発言との見方が出ています。物価高や円安を懸念して、利上げの可能性に言及したことについてはどう受け止めていますか?

答(会田):高市政権は、日銀の利上げ自体については、反対していません。サナエノミクスの主軸は、官民連携の戦略投資の拡大です。投資の拡大の動きを含む、景気の状態をしっかり確認しながら、慎重に利上げをしてもらいたいということです。円安は、これまで投資を怠り、供給能力が棄損してきたことが原因です。円安を円高に変えるには、投資の拡大が必要です。物価高の負担を克服する実質賃金の強い上昇のためにも、投資の拡大が必要です。そこで政府は、投資の拡大を確かなものとするため、日銀に対して、「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」の両立という二つの責務を課しました。デュアル・マンデートと言われます。政府との連携を重視する植田総裁は、このバランスを見ながら、利上げの是非を決めることになります。

中東情勢が不透明な中、利上げのタイミングについてはどうご覧になっていますか?

問(寺島):高市政権は物価高対策を最優先としているわけですが、日銀の植田総裁は「物価上昇は一時的なものにとどまらず、基調的な物価上昇率が上振れていくリスクも意識せざるを得ない状況」とも指摘しています。物価が上振れするリスクが現実のものとなって経済に悪影響を及ぼすことを、「日銀としては、より警戒する必要があると考えている」と述べました。中東情勢が不透明な中、利上げのタイミングについてはどうご覧になっていますか?

答(会田): 日銀内で、「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」の両立という二つの責務のデュアル・マンデートが、まだ浸透していないとみられます。「安定的な物価上昇」の一つの責務の下での古い考え方がまだ残っています。拙速な利上げで、投資が腰折れれば、供給能力の更なる棄損への懸念で、円安と物価上昇はより強くなるリスクがあります。単純に、利上げを急げば、円安と物価上昇の問題が解決するわけではありません。当然ながら、景気悪化という代償を払うリスクもあります。デュアル・マンデートの下で、常識的に考えれば、中東情勢が不透明な中では、利上げは控えることになります。しかし、原油価格の上昇は更なる物価上昇につながりますので、「安定的な物価上昇」の一つの責務の下での古い考え方で、拙速な利上げをしてしまうリスクも高まっています。


会田 卓司
クレディ・アグリコル証券 東京支店 チーフエコノミスト
松本 賢
クレディ・アグリコル証券 マクロストラテジスト

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