この記事は2026年6月29日に配信されたメールマガジン「アンダースロー(ウィークリー):戦略投資の拡大のための財政余力は巨大」を一部編集し、転載したものです。
アンダースロー(ウィークリー):戦略投資の拡大のための財政余力は巨大
日銀資金循環統計では、2026年1-3月期の企業の貯蓄率(GDP%、4QMA)は+4.4%となった。高市政権は、日本経済の構造的な経済停滞の原因は、人口動態の悪化ではなく、国内の投資不足にあると判断している。官民連携の戦略投資の拡大で、企業を異常な貯蓄超過(プラスの貯蓄率)から正常な投資超過(マイナスの貯蓄率)に回復させ、日本経済をコストカット型から投資・成長型に移行させるマクロ戦略をとっている。1-3月期の財政収支は同ー1.8%と、財政赤字がほとんどなくなっている。1-3月期の家計の貯蓄率が同2.5%とかなり低く、税収の取り過ぎにより、家計のファンダメンタルズは悪化してしまっている。積極財政の方針で、官の戦略投資を拡大する余地はかなり大きいことが示されている。一定の財政赤字を許容することで、戦略投資の余地を拡大しようとしている先進各国と比較をすると、日本はグローバルな戦略投資の競争に後れをとってしまっている。
企業と政府の合わせた支出をする力であるネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支、GDP%、4QMA、マイナスが強い)が、経済が膨らむ力と家計へ所得を回す力となる。1-3月期のネットの資金需要は+2.6%と、まだ消滅した状態が続いてしまっている。それでも経済が縮小しないのは、円安で海外からの所得が拡大しているからだ。高市政権が目指す強い経済グランドデザインは、官民の戦略投資の拡大で、企業と政府の支出する力を十分に強くして、ネットの資金需要を回復させ、家計に所得が回る力を強くすることだ。日本成長戦略の官民投資額は、2040年度までに370兆円超、年間25兆円程度となり、今後の追加、地域未来戦略と高圧経済による、民間投資の誘発を含め、ネットの資金需要のトレンドを緊縮思考の0%から成長志向の-5%にするのに必要最低限の官民投資額になる可能性がある。
1-3月期の政府の純負債残高GDP比(負債-金融資産)は62.7%と、2020年10-12月期のピークの129.2%から大きく改善している。過去の国債格付けとの相関関係を見れば、既に3段階の格上げに相当するほどに、財政状況はあまりに早い改善をしてしまっている。かつてAAA格であった水準の50%程度まで、もう少しの距離しかない。高市政権の初の骨太の方針では、高市首相の施政方針演説のとおり、政府の戦略投資の拡大を制約するプライマリーバランスの黒字化ではなく、政府の戦略投資の拡大を可能にするより柔軟な財政規律のあり方に改革され、企業の予見可能性を高めるため、戦略投資を「新たな投資枠」として多年度で別枠管理する仕組みも具現化する。戦略投資の拡大のための、財政余力は巨大だ。これまでの緊縮志向が残り、国債発行による「新たな投資枠」が過小となり、官民投資額が不足すれば、グローバルな競争に劣後し、国民を更に困窮させるリスクとなる。
図1:ネットの国内資金需要(企業貯蓄率+財政収支)
図2:政府の純負債残高GDP比
以下は配信したアンダースローのまとめです
日本経済見通しのメインポイント(経済)(2026年6月23日)
① 異常であるプラスの企業貯蓄率が示す構造的な経済停滞圧力が残っているため、内需はまだ弱い。トランプ関税と原油価格上昇などによるグローバルな景気減速の下押し圧力を受ける。まだ弱い内需によって、コアコア物価上昇率(除く生鮮食品・エネルギー)は一時的に減速する。エネルギーのコストの上昇が、家計の購買力を削ぎ、需要の価格弾力性が上がる。地政学上のリスクの後退に加え、官民連携の戦略投資拡大が実質賃金の上昇につながり、内需を徐々に拡大させる力となる。企業貯蓄率が正常なマイナスに戻ったところで、日本経済は構造的な経済停滞から完全に脱却する。
図1:企業貯蓄率と消費者物価
② 積極財政と緩和的な金融政策の継続によるリフレの力が、名目GDPを大きく拡大させてきた。日銀のこれまでの拙速な利上げに加え、グローバルな景気減速と交易条件の悪化で、名目GDPの拡大は一時的に減速する。
図2:名目GDP
③ ネットの国内資金需要(企業貯蓄率+財政収支)が回復し、リフレの力で、名目GDPを拡大させた。高市政権の官民連携の戦略投資と時限的な消費減税による積極財政の推進が内需を回復させ、地政学リスクの後退の後のグローバルな循環的景気回復も見込まれる。企業の国内支出の増加によって、企業貯蓄率が低下を始め、積極財政の動きと合わせ、消滅してしまっているネットの資金需要が再回復し、構造的な経済停滞の完全脱却に向かう力になる。
図3:ネットの資金需要
④ 設備投資サイクルの上振れが企業貯蓄率を正常なマイナスに戻す力となる。設備投資サイクルが上向いている限り、将来の供給能力の拡大の期待があるため、円安の更なる強い圧力はかかりにくい。企業貯蓄率の低下が設備投資サイクルに追い付いていく局面で、実質賃金の上昇が強くなる。経済・政策・企業・マーケットの重点が外需から内需にシフトする。
図4:設備投資サイクル
日本経済見通しのメインポイント(政策)(2026年6月25日)
1.グローバルな循環的景気回復の局面と高市政権の官民連携の戦略投資による内需拡大で、設備投資サイクルの上昇が牽引役となり企業貯蓄率は低下の動きとなる。2026年の骨太の方針で、新たな投資枠を中心に戦略投資の積極財政への動きが始まる。コアコア物価上昇率(除く生鮮食品・エネルギー、消費税の影響)は景気停滞による減速の後、2%の物価目標に向かって再拡大。2027年には、設備投資サイクルの上振れと実質賃金の上昇による内需の回復。2028年には、内需の回復が加速し、企業貯蓄率は正常なマイナスに戻り、構造的デフレ圧力を払拭し、経済停滞を完全に脱却する。
図1:日銀とCACIBのGDP、CPI見通し
出所:日銀、クレディ・アグリコル証券)
2.高市政権の戦略投資拡大による高圧経済の方針の下、日銀には「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」のデュアル・マンデートが課されている。中立金利に向けた利上げは、半年に1回の緩やかなものとなる。2%の物価目標に向けた物価上昇率の再拡大で、ゼロ%程度の実質金利に合わせた利上げを継続。実質金利ゼロの維持が、経済活動を促進。2028年には、企業貯蓄率がマイナスに戻り、実質政策金利は物価目標対比でマイナスを脱する。2029年に2.25%%のターミナルレートに達する。
図2:日銀の政策金利
3.高市政権は、衆議院選挙での大勝を背景に、骨太の方針で、経済・財政政策の大転換を試みることになる。高市政権では、需給ギャップが十分に大きくなるまで、積極財政と緩和的金融政策、官民連携の戦略投資・需要の拡大によって、「高圧経済」の方針で、経済規模の持続的な拡大にコミットする。企業の国内支出の増加によって、企業貯蓄率が低下を始め、積極財政の動きと合わせ、消滅してしまっているネットの資金需要が再回復し、構造的経済停滞の完全脱却に向かう。実質賃金上昇までの家計の負担は、消費税率引き下げなどの家計支援の財政政策で軽減することになる。
図3:政府の経済政策の方針
4.地政学上のリスクが高まる中でのグローバルな景気減速の下、金融・財政政策の後押しが不十分で、信用サイクルと設備投資サイクルが腰折れれば、内需の鈍化で企業貯蓄率は上昇し、構造的不況に戻るリスクに。日銀の拙速な利上げによって、雇用・賃金・消費を含む内需の回復が遅れることがリスク。設備投資サイクルが腰折れてしまえば、グローバルな戦略投資の競争から脱落し、将来の供給能力の棄損によって、円安と金利上昇に歯止めがかからなくなる。円安のコストを、為替介入や補正予算で軽減しながら、設備投資サイクルの押し上げを続けることが重要である。
図4:信用サイクルと失業率
図5:日本経済見通し
出所:日銀、内閣府、総務省、Bloomberg、クレディ・アグリコル証券)
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