この記事は2026年6月26日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「中東情勢の影響で低迷する消費者マインドを資産効果が下支え」を一部編集し、転載したものです。
(内閣府「消費動向調査」)
2026年も賃上げ率が高水準を維持しており、実質所得環境が改善している。一方、中東情勢の不透明感から消費者マインドは低調に推移している。
米国によるイラン攻撃を受け、3月に消費者マインドは大幅に悪化した。内閣府の消費動向調査によると、消費者マインドの代表的な指標である「消費者態度指数(総世帯)」は3月に33.7となり、2月(39.7)から6.0ポイント低下した(図表)。その後、中東情勢の改善が見られないなか、4月は32.0と2カ月連続で前月から低下した。
消費者態度指数は、物価動向との相関が強い「暮らし向き」、賃上げ情勢を示す「収入の増え方」、労働需給の逼迫度合いと連動する「雇用環境」、消費者の購買意欲を表す「耐久消費財の買い時判断」の四つの項目の単純平均によって算出される。中東情勢悪化前の2月時点と最新の5月時点を比べると「耐久消費財の買い時判断」指数が33.8から23.7と悪化幅が最も大きかった。家計が消費に対して消極的になっていることがうかがえる。
また、原油価格の高騰を受けて「暮らし向き」指数は2月の39.5から30.7へと低下した。低下幅は消費者態度指数の四つの項目の中で2番目に大きい。3月のガソリン価格の高騰を受けた動きとも考えられるが、ガソリン価格指数は消費者物価指数(CPI)の1.82%を占めるのみだ。しかし、ガソリンは価格上昇を実感しやすい品目であることに加え、幅広い品目へのインフレ波及に対する先行き懸念などから、消費者マインドへの影響が大きいとみられる。
実際、同じく消費動向調査で調査項目となっている「家計の物価の見通し」における直近のデータを見ると、1年後に物価が「5%以上上昇」と予想する家計の割合が3月以降に増加するなど、消費者の期待インフレ率が上昇している。消費者マインドが低迷することで、実際の物価の上昇を受けた実質所得の落ち込みによる影響以上に、消費が減速することが懸念される。
もっとも、4月以降の株式市場の復調が消費の支えとなるだろう。消費者態度指数の構成指標には含まれないが、消費動向調査で「その他の意識指標」として調査されている「資産価値」指数は、5月に前月比3.4ポイント上昇した。株価の上昇は、家計が保有する金融資産の価値を増加させ、潜在的な所得の増加につながる。
このことが消費者マインドを間接的に下支えし、結果として現在の消費支出を拡大させる効果(資産効果)があることが知られている。こうした資産効果のほか、高水準の賃金上昇率がプラスに働き、個人消費は底堅さを保つことが期待される。
伊藤忠総研 副主任研究員/高野 蒼太
週刊金融財政事情 2026年6月30日号