この記事は2026年7月3日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「人口減少が加速する日本で経済成長を続けるための必要条件」を一部編集し、転載したものです。
(総務省「国勢調査結果(人口速報集計)」ほか)
総務省が公表する「2025年国勢調査(人口速報集計)」によると、25年の日本の人口(外国人を含む、25年10月1日時点)は、前回調査(20年)から2.5%減の1億2,305万人となった。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が、23年に作成した「日本の将来推計人口」では、標準的なシナリオにおいて、25年の人口減少率は20年対比で2.3%減と推計されていた。わが国の人口減少ペースは加速しているが、おおむね事前に想定されたペースで進行しているといえる。
もっとも近年の人口変動、とりわけ人口の自然増減は、社人研の標準的な想定とは大きく異なっている。特筆すべきは出生数の落ち込みである。厚生労働省公表の「人口動態統計」によると、25年の日本人の出生数(概数)は、20年対比で20%減の67万1,236人となった。社人研による25年の出生数の推計値は、標準的な中位推計が74万9,000人、悲観的な低位推計が65万8,000人である。足元の出生数はおおよそ悲観シナリオに接近している。
では、人口減少は国内の経済成長にどの程度のインパクトを及ぼしているのか。一国の経済規模を測る上で代表的な指標である実質GDP(国内総生産)を、1人当たりGDPと人口に分解して分析した(図表)。
人口減少が一国の経済成長にマイナスに作用することは確かだが、人口がピークを打った10年から20年にかけては人口減少率が小幅だったこともあり、日本の成長率に及ぼすマイナスの影響は年平均▲0.1~0.2%ポイント程度と軽微だった。しかし、20年から25年にかけては人口減少が加速。日本の成長率に及ぼす影響も年平均▲0.5%ポイントとマイナス幅が拡大し、成長率を下押しするインパクトが大きくなっている。
1人当たりGDPが十分に増加していれば、人口減少下でも経済全体が成長を続けることは可能だ。しかし、わが国では1人当たりGDPの成長ペースが高まっていないことも課題として挙げられる。統計の振れが大きく趨勢が読み取りにくいため、1人当たりGDP成長率の長期トレンドを計算すると、過去30年平均が0.80%、直近10年平均が0.82%であり、トレンドの変化は見られない。人口減少によるマイナスの影響が大きくなるなか、心もとない成長ペースである。
社人研の標準的な推計に基づけば、わが国の人口は30年に25年対比2.6%減、35年に30年対比で2.9%減と、人口減少率の拡大が続く見通しである。出生数の下振れなどを考慮すると、人口減少ペースが推計以上に加速する可能性もある。こうした状況下で日本経済が成長を続けるためには、1人当たりGDPの成長ペースを高めていくことがより重要になろう。
SBI新生銀行 グループ経営企画部 金融調査室 シニアエコノミスト/森 翔太郎
週刊金融財政事情 2026年7月7日号