「元本割れ」とは、購入時よりも価格が下落した状態で売却・償還し、受け取れる金額が最初に投じた元本を下回ることです。NISAやiDeCoは制度の名前であって、それ自体が元本を保証するものではない点に注意が必要です。
投資を始めたいけれど「元本割れ」が怖い、という方に向けて、その仕組みと備え方を解説します。元本割れの仕組み、元本保証がある商品とない商品の違い、NISA・iDeCoと元本保証の関係、リスクを抑える考え方、および元本保証にこだわりすぎる場合の注意点まで、順を追って解説します。
- 元本割れとは、受け取れる金額が最初に投じた元本を下回る状態のことである。
- 「元本保証」と「元本確保」は意味が異なり、混同すると商品選びを誤る。
- NISAは非課税制度であって、元本を保証する仕組みではない。
- iDeCoには元本確保型と元本変動型があり、選ぶ商品によってリスクが変わる。
- 元本保証にこだわりすぎると、インフレで実質的な価値が目減りする場合がある。
目次
「元本割れ」とは? 投資したお金が減る仕組み
元本割れとは、購入時の価格を下回った状態で売却・償還し、受け取る金額が投じた元本を下回ることです。
元本・元本割れ・含み損の違い
元本割れを理解する上で、3つの言葉「元本・元本割れ・含み損」を整理します。
- 元本:投資に最初に投じた金額(元手)。
- 含み損:保有中の商品の評価額が元本を下回っているが、まだ売却していない状態。数字のうえでの損失。
- 元本割れ:実際に売却・償還して、受け取った金額が元本を下回った状態。損失が確定したもの。
含み損の段階では、価格が回復すれば損失は解消されますが元本割れは、その含み損を確定させてしまった状態と考えるとわかりやすいです。
なぜ投資商品は元本割れするのか(値動きの正体)
株式や投資信託などの価格は、経済情勢や企業業績、需給によって日々変動します。価格が上がれば利益(値上がり益)が生まれ、価格が下がれば損失が生じます。
この値動きこそが、投資でリターンを得られる源泉であると同時に、元本割れの原因でもあります。値動きのある商品は、増える可能性と減る可能性の両方を併せ持っています。
「元本保証」と「元本確保」は同じではない
元本保証と元本確保は、似ているようで意味が異なります。
元本保証は、元本が減らないことを約束するものです。一方、元本確保は、満期まで保有するなど一定の条件を満たした場合に元本が確保される仕組みを指します。
もっとも、元本確保型の商品でも途中で解約すれば話は変わります。
満期前に解約すると、解約控除などにより受取額が元本を下回ることがあります。「確保」はあくまで条件つきである点を押さえておく必要があります。
元本保証がある商品・ない商品の違い
元本保証がある商品は預金や個人向け国債などに限られ、株式や投資信託には元本保証がありません。
元本保証がある主な商品(預金・個人向け国債など)
元本保証に近い代表的な商品が、預金と個人向け国債です。預金は、預金保険制度により、万一金融機関が破綻しても1金融機関・預金者1人あたり元本1,000万円までとその利息が保護されます(出典:預金保険機構「預金保険制度の解説」)。
個人向け国債は、国が発行する債券であり、満期まで保有すれば額面金額が戻ります。金利は年率0.05%の最低金利が保証されています(出典:財務省「個人向け国債 商品概要」、2026年7月時点)。
元本保証がない主な商品(株式・投資信託など)
一方、株式・投資信託・ETFなどには元本保証がありません。これらは価格が変動する商品であり、購入時より価格が下がれば元本割れします(出典:資産運用業協会「投資信託が持つリスク」)。
ここで注意したいのは、元本保証がないこと自体は「危険な商品」を意味しないという点です。値動きのリスクを引き受けるからこそ、預金を上回るリターンが期待できます。元本保証の有無は、危険かどうかではなく、リスクとリターンの大きさの違いを表します。
保証の有無とリターンの関係を比較する
元本保証の有無と、期待できるリターンの関係を整理します。
| 商品 | 元本保証 | 期待リターン | 主なリスク |
|---|---|---|---|
| 預金 | あり(1,000万円まで) | 低い | インフレで実質目減り |
| 個人向け国債 | 満期保有で額面が戻る | 低い | 中途換金時の調整 |
| 投資信託 | なし | 中〜高 | 価格変動・元本割れ |
| 株式 | なし | 高い | 価格変動・元本割れ |
元本保証がある商品ほどリターンは小さく、リターンを狙う商品ほど元本割れのリスクがあります。どちらが優れているかではなく、目的に応じて使い分けます。
NISAやiDeCoは「元本保証」されるのか
NISAは非課税制度、iDeCoは私的年金制度であり、どちらも制度の枠組みであって元本保証ではありません。
NISAは非課税制度であって元本保証ではない
NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度です。通常であれば20.315%課税(出典:国税庁「株式・配当・利子と税」)される運用益が非課税になりますが、これは税制上の優遇であって、元本を保証するものではありません(出典:金融庁「NISAを知る」)。
NISA口座で買った株式や投資信託も、価格が下がれば元本割れします。「NISAだから安全」という理解は誤りであり、非課税と元本保証はまったく別の話です。
iDeCoには「元本確保型」と「元本変動型」がある
iDeCoの運用商品は、大きく「元本確保型」と「元本変動型」に分かれます。元本確保型は定期預金や保険が中心で、原則として元本が確保されます。
元本変動型は投資信託が中心で、価格変動により元本割れの可能性があります(出典:iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会))。
どちらを選ぶか、どう組み合わせるかは加入者自身が決めます。iDeCoという制度そのものが元本を保証しているわけではなく、選ぶ商品によってリスクは変わります。
預金でも元本が守られないケース(ペイオフ・インフレ)
元本保証の代表格である預金にも、注意点があります。預金保険制度(ペイオフ)で保護されるのは1金融機関あたり元本1,000万円までとその利息であり、これを超える分は金融機関の破綻時に保護されない可能性があります(出典:預金保険機構「預金保険制度の解説」)。
また、額面上は減らなくても、インフレで物価が上がれば、同じ金額で買えるものは減ります。これはお金の実質的な価値が目減りする「インフレリスク」であり、預金であっても避けられません。
なお、1,000万円を超える預金であっても、預け先を分ければ保護の範囲を広げられます。金融機関ごとに元本1,000万円までが保護の対象となるため、複数の金融機関に分散させる方法があります。
元本割れのリスクを抑えるための考え方
元本割れの確率は、長期・積立・分散という3つの原則を組み合わせることで下げられます。
長期・積立・分散で元本割れの確率をどう下げるか
投資期間を長くとると、短期的な価格変動の影響が平準化されやすくなります。また、購入時期を分ける「積立」により、高値づかみのリスクを抑えられます。
さらに、値動きの異なる複数の資産に「分散」して投資すると、一つの資産が下がっても他の資産で補える可能性があります。これら3つを組み合わせることで、元本割れの確率を下げていく考え方です。
「元本割れしない投資」をうたう勧誘に注意する
「元本保証で高利回り」「絶対に損しない」といった勧誘には注意が必要です。値動きのある商品で高いリターンを狙いながら、同時に元本を保証することは、仕組みのうえで成り立ちません。
もちろん、預金や個人向け国債のように制度で元本が守られる商品は別です。これらは仕組みとして元本が保護されています。問題なのは「元本保証」と「高利回り」を同時にうたうケースであり、この組み合わせを持ちかけられたら、まず疑ってかかるべきです。
生活防衛資金と投資資金を分けるという大原則
投資をする前に、生活防衛資金を確保しておくことが大原則です。生活防衛資金とは、失業や病気などの不測の事態に備える、生活費の数か月分にあたるお金です。
この資金は、値動きのある商品ではなく預貯金で確保します。生活防衛資金と投資資金を分けておけば、相場が下落した局面でも、生活のために元本割れした資産を売却せずに済みます。
それでも元本割れが怖い人へ向けた例外と注意点
元本保証にこだわりすぎると、かえってインフレで資産価値が目減りする場合があります。
元本保証にこだわりすぎるとインフレで実質目減りする
元本が減らない預金は安全に見えますが、金利がインフレ率を下回ると、実質的な価値は下がっていきます。額面は同じでも、その金額で買えるものが減っていくためです。
もっとも、生活防衛資金など近く使う予定のお金は別に考えます。すぐに使う資金は、値動きのない預貯金で確保するのが適切です。インフレ対策が必要になるのは、当面使う予定のない長期資金の部分です。
元本確保型だけで運用したiDeCoの落とし穴
iDeCoを元本確保型だけで運用すると、元本割れは避けられる一方、運用による資産の成長はほとんど期待できません。また、口座管理手数料がかかるため、低金利の環境では、手数料が利息を上回ることもあります。
iDeCoの大きな利点である運用益非課税のメリットも、利益がほとんど出なければ活かせません。ただし、掛金が全額所得控除になる節税メリットは、元本確保型でも受けられます。目的が節税か資産成長かで、商品選びは変わります。
リスク許容度に応じた「守りと攻め」の配分
元本割れへの向き合い方は、リスク許容度によって変わります。リスク許容度とは、どの程度の値下がりを受け入れられるかの度合いで、年齢・収入・資産・投資経験・性格によって決まります。
若く、運用期間を長くとれる人は、値動きのある資産を多めにする「攻め」の配分も選べます。老後が近い人や値下がりに強い不安を感じる人は、元本保証のある資産を厚めにする「守り」の配分が適します。自分に合った配分を見つけることが優先です。
FAQ:元本割れと元本保証に関するよくある質問
Q.元本割れとは具体的にどういう状態ですか?
投資した商品を売却・償還したときに、受け取った金額が最初に投じた元本を下回った状態のことです。保有中に評価額が下がっている「含み損」とは異なり、元本割れは損失が確定したものを指します。価格が回復する前に売却すると、元本割れが確定します。
Q.投資商品が元本割れしてしまったら、どうすればいいですか?
評価額が下がっている「含み損」の段階では、まだ損失は確定していません。慌てて売却すると損失が確定するため、当面使う予定のない資金であれば、価格が回復するのを待つ選択もあります。
生活防衛資金を預貯金で別に確保していれば、下落局面でも無理に売らずに済みます。ただし、その商品を選んだ理由が崩れた場合は、保有を続けるかどうかを見直すことも必要です。
Q.積立や分散で、本当に元本割れのリスクは下がるのですか?
購入時期を分ける積立には、価格が高いときは少なく、安いときは多く買うことで平均購入単価をならす効果があり、高値づかみのリスクを抑えられます。
また、値動きの異なる複数の資産に分散すると、一つが下がっても他が支える可能性があります。ただし、これらはリスクを軽減する方法であって、元本割れをゼロにするものではありません。
Q.元本保証で増やせる商品はありますか?
元本保証がある商品は、預金や個人向け国債などに限られ、いずれも大きく増やすことは期待できません。「元本保証で高利回り」をうたう商品は、仕組みのうえで成り立たないため注意が必要です。増やすことを目指す場合は、一定のリスクを引き受ける必要があります。
Q.元本割れしないためにできることはありますか?
長期・積立・分散を組み合わせることで、元本割れの確率を下げられます。また、生活防衛資金を預貯金で確保し、投資資金と分けておくことで、下落局面での狼狽売りを避けられます。元本保証を最優先するなら、預金や個人向け国債を選ぶ方法もあります。
まとめ:元本割れを正しく理解し、目的に合った付き合い方を選ぶ
元本割れとは、受け取れる金額が投じた元本を下回る状態です。元本保証がある商品は預金や個人向け国債などに限られ、株式や投資信託には元本保証がありません。NISAやiDeCoは制度の名前であって、それ自体が元本を保証するものではない点に注意が必要です。
元本割れが怖いからと元本保証だけにこだわると、インフレで実質的な価値が目減りする場合があります。
大切なのは、元本割れの仕組みを正しく理解したうえで、長期・積立・分散でリスクを抑え、生活防衛資金と投資資金を分けることです。まずは、生活費の数か月分を生活防衛資金として預貯金で確保するところから始めてください。
(提供:ACNコラム)