この記事は2026年8月28日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「日本との比較で見る韓国における少子高齢化の進展と今後の課題」を一部編集し、転載したものです。
(韓国・国家データ処「人口動向調査」ほか)
日本では低出生率が続いているが、韓国の出生率低下はより深刻である。韓国の合計特殊出生率は2023年に0.72と史上最低値を記録した後、24年に0.75、25年には0.80と2年連続で上昇した。だが、それでも同時期の日本(25年=1.14)を大きく下回っている(図表)。さらに、長期にわたる少子化を背景として高齢化も急速に進んでおり、国家データ処が26年7月28日に発表した資料によると、25年の高齢化率は20.7%に達した。
韓国の出生率が日本より低い背景には、結婚や就職、住宅、教育を巡る若者の負担の大きさがある。韓国は日本と比べて平均初婚年齢が高く、20代後半から30代前半の未婚率も高い。また、結婚時の住宅費負担が大きく、特にソウルの高い住宅価格が結婚を難しくしている。
韓国では大学進学率が高い一方、教育と労働市場のミスマッチが生じやすく、希望する就職先も大企業や公務員などに集中する傾向がある。大企業と中小企業の間には賃金や福利厚生、雇用の安定性などの格差が大きいため、中小企業への就職を避け、「就職浪人」をしながら大企業を目指す若者も少なくない。その結果、就職や所得の安定が遅れ、結婚や出産の先送りにつながりやすい。
さらに、有力大学や大企業、良質な雇用機会がソウルを中心とする首都圏に集中しており、若者の首都圏流入が住宅価格や生活費を押し上げている。高い住宅費は結婚の大きな負担となり、子どもを持った後も私教育費が重くのしかかり、2人目、3人目の出産をためらう要因となっている。
一方、韓国では出生率が2年連続で改善している面もある。その背景には、出生数の多かった1991~95年生まれの世代が30代前半となり婚姻件数が増えたこと、コロナ禍で延期されていた結婚が実現したこと、さらに結婚や出産に対する意識が前向きに変化していることがある。
ただし、この改善が中長期的に続くか否かについては慎重に見極める必要がある。直近の改善要因には人口構造上の効果も含まれており、今後、婚姻・出産年齢層が縮小すれば、出生数が再び減少する可能性がある。少子化の長期化は高齢化と生産年齢人口の減少を加速させ、労働力不足や社会保障制度の持続可能性にも影響を及ぼす。
持続的な出生率の回復には、現金給付やその他の子育て支援だけでなく、教育と労働市場のミスマッチの緩和や企業間の賃金・雇用条件格差の是正、住宅費負担の軽減、仕事と育児の両立支援など、構造的課題への継続的な対応が求められる。日本も出生数の減少と高齢化が進んでおり、日韓が政策の成果や課題を共有し、より実効性の高い少子化・高齢化対策につなげることが望まれる。
ニッセイ基礎研究所 上席研究員 亜細亜大学 都市創造学部 特任准教授/金 明中
週刊金融財政事情 2026年9月1日号