株式会社J-Connect

建築設計の専門学校在学中、20歳という若さで同級生4人とともに起業した株式会社J-Connectの代表取締役社長・磯貝拓麻氏。「食を通じて感動をもたらす」という理念を掲げ、圧倒的なスピード感で出店を重ねてきた同社は、現在、北海道から福岡まで全国に30店舗の飲食店を展開するまでに成長を遂げている。

しかしその軌跡は平坦ではなく、コロナ禍における新規エリア進出直後の売上激減により、一時は倒産寸前の極限状態にまで追い詰められた。

「会社がなくなってもこの4人で会議を続ける」という固い絆でその窮地を脱して以降、同社は経営戦略を抜本的に改革。現在は、収益性を担保する「稼ぐ業態」と、食の尊さや文化の継承に重きを置いた「想いの業態」を組み合わせた独自の二面戦略を展開している。

さらに、ディズニーの心理設計を取り入れた五感を刺激する空間づくりや、自社での米作り、廃校を活用した養殖事業など、飲食の枠を超えて日本の食を支えるインフラ構築へも乗り出した。創業時からの目標である「売上高100億円」の達成へ向かい、次世代のために挑み続ける磯貝氏の壮大なビジョンに迫った。

磯貝 拓麻(いそがい たくま)──代表取締役社長
1994年、東京都葛飾区出身。2013年に中央工学校へ進学し、建築設計を学びながら居酒屋でアルバイトに従事。2014年、在学中に店長を任される中で同級生と起業を志し、中退を決断して株式会社J-Connectを設立。2015年に東京都豊島区・大塚にて1店舗目をスタートさせる。現在は全国に30店舗を展開し、2026年、一般社団法人日本居酒屋協会副会長に就任。
株式会社J-Connect(ジェーコネクト)
「関わるすべての人々に『食』を通じて感動をもたらし、心を豊かにすることで幸福度の高い社会の実現を目指す」を理念に掲げる。飲食事業を中心に、北海道から福岡まで30店舗を展開。2023年には組織改革を行い、食品製造加工事業部、FC事業部、デザイン事業部を設立。飲食企業のOEM案件や出店コンサルティングも請け負う。
企業サイト:https://www.j-connecthld.com/

目次

  1. 創業の原点と「自由」への渇望
  2. 圧倒的なスピード感とスクラップ・アンド・ビルド
  3. 倒産危機を救った「仲間の一言」
  4. 五感を刺激するディズニー流の店舗設計
  5. 日本の食文化を守るための新たな挑戦

創業の原点と「自由」への渇望

── 磯貝社長は20歳という若さで起業していますが、専門学校時代にはすでに内定も出ていたとか。あえて起業の道を選んだ背景や決断の理由を教えてください。

磯貝氏(以下、敬称略) 大きな理由は、自分の人生をクリエイティブに楽しみたいという思いです。誰かから指示を受けて働くのではなく、自分で考えて行動する働き方に強い魅力を感じました。

私の名前である「拓麻」の「拓」は、開拓という言葉に由来します。両親が込めてくれたこの願いが、幼少期から潜在的な意識として私の中にありました。生徒会などのリーダー役を経験する中で、組織を動かす楽しさを知ったことも影響しています。

人生の転機が訪れたとき、断る理由が見つかりませんでした。不安よりも「やりたい」という気持ちが勝った結果です。当時の仲間たちと一緒に働くことが、一生放課後で遊んでいるような感覚で続けられたら、これほど楽しいことはないと考えました。

── 創業メンバーは同級生の4人だったそうですね。最初から居酒屋という業態に絞っていたのでしょうか。

磯貝 居酒屋を選んだ理由は、アルバイトでの経験があり、自分たちにもできそうだと感じたためです。しかし、当時は料理の専門的な技術があったわけではありません。

幸運なことに、知人の社長から「この店を貸してあげるよ」という提案をもらいました。資金のない学生だった私たちにとって、初期費用を抑えてスタートできる条件は非常に魅力的でした。

屋号もメニューもそのまま引き継ぐ形でのスタートでしたが、現場で学びながら必死に運営しました。最初の1ヵ月は、貸主側の社員の方にも協力してもらい、飲食経営の基礎を叩き込みました。

圧倒的なスピード感とスクラップ・アンド・ビルド

── 1店舗目のオープンからわずか9ヵ月後には2店舗目を出店。このスピード感にはどのような意図があったのですか。

磯貝 経営を維持するためには、出店を加速させる必要がありました。1店舗目の売上高だけでは、創業メンバーと後から合流した仲間をあわせた6人分の人件費をまかなうことが厳しかったためです。

キャッシュフローを安定させるために、早く次の店舗を出さなければならないという危機感がありました。また、起業当初から「100店舗、売上100億円」という目標を掲げていたことも大きな要因です。

3店舗目は2店舗目のわずか2ヵ月後に出店しました。その後も2ヵ月おきに新店を出すという勢いで進めました。当時はとにかく規模を拡大することに集中していました。

── 役割分担などはどのように決めていたのでしょうか。

磯貝 社長という役割は、自然な流れで私が担当することになりました。私が中心となって友人たちに声をかけ、ディレクションを進めていたためです。

ナンバーツーの適性については、試行錯誤の時期が2年ほどありました。メンバーに交代で副社長のような役割を任せ、誰がどのポジションにふさわしいかを見極めました。

当時は飲食企業としてのレベルもまだ低く、出店しては撤退するというスクラップ・アンド・ビルドを繰り返していました。失敗から学び、少しずつ経営の精度を高めていきました。

倒産危機を救った「仲間の一言」

── 2020年のコロナ禍では、相当な苦境に立たされたそうですね。

磯貝 2020年は、ようやく経営が軌道に乗り始めた時期でした。広島や札幌といった新規エリアへの進出を決め、物件を仕込んだ直後に緊急事態宣言が発令されました。

出店に伴う多額のキャッシュが出ていったタイミングで、売り上げがゼロになるという最悪の事態です。銀行を駆けずり回りましたが、なかなか融資は降りず、支払いの猶予を業者様にお願いする日々が続きました。

いよいよ支払いが滞るという極限の状態まで追い詰められました。まさに倒産寸前という状況で、精神的にも肉体的にも限界に近いところにいました。

── その際、副社長から「土手で会議を続けるだろうね」という言葉があったというエピソードが非常に印象的です。

磯貝 最後の望みをかけていた銀行融資を断られた日のことです。事務所に結果を伝えに来た担当者の方の「お貸し出しできません」という言葉に、全員、がく然としました。

時が止まったような感覚になり、誰もが言葉を失っていました。そのとき、副社長が「もし会社がなくなっても、来週もあの土手で会議をやるだろうね」と、いつも通りのトーンで言ったのです。

その一言で、肩の荷が下りました。私たちが起業したのは、この4人で働くことに意味があるからだと再認識しました。会社という形がなくなっても、私たちの絆は変わらないと確信した瞬間です。

── コロナ禍を乗り越えた後、経営判断において大きな変化はありましたか。

磯貝 業態の考え方を根本から変えました。それまでは数字やスケールのしやすさを重視していましたが、お客様への感謝をより直接的に伝えられる店作りを目指すようになりました。

コロナ禍を経て、お客様がご来店くださることのありがたみを痛感しました。チェーン店のように効率だけを追い求めるのではなく、飲食としての存在意義を問い直す機会となりました。

現在は、大きく分けて二つの業態を展開しています。一つは、スケールしやすく収益性の高い「稼ぐ業態」です。もう一つは、私たちの理念を体現し、社会貢献を目的とした「想いの業態」です。

── 具体的にはどのような店舗展開をしているのですか。

磯貝 「稼ぐ業態」の代表例は、「餃夢中」(ぎょむちゅう)です。客単価2600円程度の格安業態ですが、現代の物価高の中でお客様の日常に寄り添い、その中でも食の尊さを感じられるような差別化を図っています。

この「稼ぐ業態」でしっかりと利益を出し、それを「想いの業態」への投資に充てるという構造を作っています。「想いの業態」では、収益性よりも食のありがたみや文化の継承に重きを置きます。

たとえば、お米の美味しさを極限まで追求した店舗などを計画しています。第一次生産者様と連携し、日本の食の豊かさを次世代に伝えるための拠点として機能させます。

五感を刺激するディズニー流の店舗設計

── 店舗設計において、ディズニーのメカニズムを取り入れているそうですが、具体的にどのような工夫を?

磯貝 ディズニーの施設は、人の心理を動かすための緻密な設計がなされています。

たとえば、知人の分析によるのですがマーメイドラグーンの入り口では、下り坂が始まるタイミングで音が流れ始めます。歩くテンポが早くなる瞬間に音の刺激を与えることで、無意識に「楽しい」と感じさせる効果があるそうです。

また、帰宅時の余韻を記憶に留めるための演出も徹底されていると感じています。

こうした五感を刺激する手法は、飲食店でも応用可能です。店に入った瞬間の音、照明、そして食事を終えた後の余韻までをデザインすることで、お客様の記憶に残る体験を提供したいと考えています。

── 飲食店でそこまで徹底した設計を行うのは珍しいですね。

磯貝 単にお腹を満たす場所ではなく、感動を持ち帰ってもらう場所でありたいと考えています。そのためには、目に見えない部分への投資が不可欠です。

「想いの業態」では、特にお米の尊さを自然と感じられるような空間作りを意識しています。ディズニーで感じるような、現実を忘れて没入できる体験を、食を通じて実現します。

日頃からアンテナを高く張り、異業種からも積極的にインスピレーションを受けるようにしています。それが、他社には真似できない独自の価値創造につながると信じています。

日本の食文化を守るための新たな挑戦

── 第一次生産者への貢献や、自社でのお米作りも始めたとか。

磯貝 食料自給率の低下や生産者の高齢化は、日本の大きな課題です。自分の子供や孫の世代が、安心して美味しいものを食べられる未来を守りたいという強い思いがあります。

今年から自分たちでお米作りを始めました。このお米は販売するのではなく、従業員の家族に配るためのものです。食の確保という安心を、まずは身近な仲間たちに届けたいと考えました。

また、1例ですが高知県のブナシメジ農家様など、熱意ある生産者様との連携も強化しています。私たちの店舗を通じて、生産者の想いや食材の価値を正しく伝えることが、私たちの使命です。

── 次の10年を見据えた時、日本の食文化を守るためにどのような事業を展開し、若い世代と共にどのような未来を築いていきたいですか。

磯貝 次の10年は、日本のお米の美味しさを世界に届けるために海外進出を果たします。また、廃校を活用した養殖事業など、国の課題解決に直結する生産活動にも関わります。

若い経営者を目指す方々には、自分が本当に「楽しい」と思えることを選んでほしいと伝えます。今の20代、30代が立ち上がらなければ、この国の未来を切り開くことはできません。

自分の幸せだけでなく、これから生まれてくる子供たちが幸せになれる未来を、今私たちが守っていく必要があります。志を同じくする仲間とともに、より良い社会を作っていきたいと願っています。

氏名
磯貝 拓麻(いそがい たくま)
社名
株式会社J-Connect(ジェーコネクト)
役職
代表取締役社長

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