株式会社ホットスケープ

国内に数万社がひしめくイベント業界において、独自の存在感を放つ企業がある。1991年創業の株式会社ホットスケープだ。同社の圧倒的な強みは、広告代理店を介さない「直接取引95%以上」「リピート率85%超」という深い顧客エンゲージメント、そして森ビルをはじめとする大手デベロッパーのパートナーとして、虎ノ門ヒルズや麻布台ヒルズなどのカンファレンス施設コンサルティングから運営までを一貫して手掛ける唯一無二のビジネスモデルにある。

単なる「イベントの請負業者」の枠を超え、クライアントのビジネス課題に伴走する同社は、なぜこれほどまでに選ばれ続けるのか。

創業35周年を迎えた今、新たに仕掛けるカフェ事業や公開空地の活用、さらには地域創生への取り組みまで、代表取締役の前野伸幸氏に同社が切り拓く「イベントの未来」と激変する市場を生き抜く戦略を聞いた。

前野 伸幸(まえの のぶゆき)──株式会社ホットスケープ代表取締役
1964年、千葉県銚子市生まれ。1991年に独立。当初より、多くの大手企業からミーティング・インセンティブ・各種セミナー・イベントを直接受注。企画・進行・運営をワンストップで数多く手掛ける。その一方で、イベント・MICE施設のコンサルタント・運営でも多くの実績を残す。虎ノ門ヒルズフォーラムのコンサルティング・運営も担当。昨今は地域創生・社会課題解決をテーマにしたイベントも多く手掛け、イベントのDX化の推進にも貢献。
株式会社ホットスケープ
1991年、創業。「イベントの力で未来に新たな価値」を掲げ、企画・制作・運営、施設運営・管理、主催事業、コンサルティング、プロジェクト創出という専門性の高い5つの事業を展開。単なる業務の枠を超え、顧客の課題に伴走する「パートナーシップデザイン」を通じてビジネス価値を最大化する。豊富な実績と独自の提案力で、イベント業界の未来を切り拓くプロフェッショナル集団。
企業サイト:https://www.hotscape.co.jp/

目次

  1. 創業35周年を迎えたホットスケープの多角的な事業展開
  2. 広告代理店を介さない「直接取引95%以上」という独自の強み
  3. デベロッパーのパートナーとして施設の価値を最大化するコンサルティング
  4. 「公開空地」の活用からカフェ事業まで広がるイベントの可能性
  5. サステナビリティおよび社会課題解決へのアプローチ
  6. 細部へのこだわりと「楽しむ心」がビジネスの質を高める

創業35周年を迎えたホットスケープの多角的な事業展開

── これまでの歩みや事業の全体像について教えてください。

前野氏(以下、敬称略) 現在、社員数が50人を超える規模になりました。イベント制作会社は国内に数万社あると言われていますが、50人体制を維持している企業は、その中でも上位数パーセントに限られる規模感です。

弊社の特徴は、イベントとの関わり方が非常に多角的であることです。一般的なイベント企画制作にとどまらず、イベント会場を運営するデベロッパーのパートナーとして、施設のコンサルティングや運営管理も手掛けています。

たとえば、森ビルのようなデベロッパーからお仕事をいただき、弊社の社員が森ビルの名刺を持って、施設の運営や貸し出し業務に常駐することもあります。施設が作られる前の段階から、ターゲット設定や価格設定の策定に携わることも少なくありません。

さらに、自社でイベントを主催したり、イベントに関連するプロジェクトを運営したりと、複数の事業の柱を持っています。ウェブサイトには掲載できないような守秘義務の生じる案件も多いのですが、非常に幅広い領域で活動しています。

── イベント制作だけでなく、施設の運営やコンサルティングまで一貫して手掛けているのは、業界内でも珍しい立ち位置ですね。

前野 そうですね。会場を借りる側と貸す側の両方の視点を持っていることは、弊社の大きな強みです。また、取引先の95%以上が広告代理店を介さない「直接取引」であることも、大きな特徴の一つと言えます。

広告代理店を介さない「直接取引95%以上」という独自の強み

── 直取引にこだわっている理由は何でしょうか?

前野 最大の理由は、スピード感とコストパフォーマンス、そして何より「パートナーシップ」の構築にあります。代理店を介さないことで、情報の伝達がスムーズになり、意思決定の速度が格段に上がります。

また、中間マージンが発生しない分、同じ予算でもより質の高い内容に投資できます。私たちは単なる受注者ではなく、クライアントの課題を解決するためのアドバイザーやコンサルタントとして、プロジェクトに参画することを重視しています。

一度信頼関係を築くことができれば、次からは指名で発注をいただけるようになります。その結果、リピート率は85%を超えており、継続的なお付き合いをしている案件がほとんどです。

── クライアントにはどのような企業が多いのでしょうか?

前野 社内イベントと社外イベントに分かれます。社内イベントでは、社員総会や表彰式、入社式などのインナーブランディングを目的としたものが多いですね。社員数が500人を超えると、自社内での運営が難しくなるため、プロの力を借りたいという相談が増えます。

社外向けでは、すでに顧客を抱えている企業が、その顧客とのエンゲージメントを高めるためのイベントを多く手掛けています。新規の名刺獲得を目的とした展示会よりも、既存顧客への深掘りやブランド体験を重視するイベントが中心です。

たとえば、セイコーウオッチのイベントなどは、15年以上のお付き合いになります。広告代理店は数年ごとに変わることがありますが、弊社はイベントのノウハウを蓄積している存在として、変わらずに指名をいただいています。

デベロッパーのパートナーとして施設の価値を最大化するコンサルティング

── 施設運営の側面についても詳しく教えてください。

前野 2013年ごろから森ビルと、虎ノ門ヒルズフォーラムの設計段階から関わらせていただいています。現在は、虎ノ門ヒルズ、麻布台ヒルズ、表参道ヒルズなど、東京のシンボルとなるようなビルのイベントスペースの運営管理を弊社が担当しています。

私たちは単に場所を貸すだけでなく、その施設をどう事業化し、稼働率を上げ、どのようなイメージ戦略を立てるかというコンサルティングから入ります。収支シミュレーションを行い、価格設定や設備投資のアドバイスも行います。

── 施設運営のノウハウが、イベント制作側に活かされることはありますか。

前野 もちろんあります。会場の特性を熟知しているため、制作側としてクライアントに最適なレイアウトや演出を提案できます。逆に、会場を借りに来たお客様が制作機能を必要としていれば、弊社の制作チームがサポートすることも可能です。

この両輪を回していることが、他社にはない圧倒的な優位性につながっています。実際、 森ビル以外のデベロッパーや、三菱地所ともコンサルティング実績を重ねる など、街づくりの視点でのご相談が増えています。

「公開空地」の活用からカフェ事業まで広がるイベントの可能性

── 最近では「公開空地」の活用にも注力されているそうですね。

前野 東京都の条例が変わり、ビルの敷地内にある「公開空地」を有料で貸し出せるようになりました。これにより、キッチンカーの設置やイベント開催など、ビルの収益源や賑わい創出の手段として注目されています。

日比谷公園に隣接する飯野ビルディングでは、公開空地を外部に貸し出すためのルール作りや価格設定を弊社が担当しました。現在は弊社の窓口を通じて、運営管理を行っています。

こうした場所の活用は、単なる収益向上だけでなく、ビルや街の価値を維持するために不可欠です。街が古くならないよう、常に新しい取り組みを発信し続けることが、最終的にはテナントの賃料維持にもつながります。

── さらに、自社でカフェ事業も開始するそうですね。

前野 はい。イベント活用ができるカフェをオープンします。通常のカフェに加え、新商品の試飲会や地域創生のポップアップショップなどが柔軟に開催できるスペースにする予定です。

既存のイベント会場やホテルでは、食品の持ち込みやゴミ処理のハードルが高く、試食や試飲を伴う「食」をテーマにしたイベントが難しいという課題がありました。それならば、自分たちで自由度の高いスペースを持ってしまおうと考えたのです。

このカフェは、私たちの経験を形にする実験の場でもあります。コミュニティスペースとしての活用ノウハウを蓄積し、イベントの手法を使った「エリアマネジメント」や「にぎわい構成」の視点から、 将来的に「まちづくり」へ提案するための実績にしたいと考えています。

サステナビリティおよび社会課題解決へのアプローチ

── 地域創生や社会課題解決の具体的な取り組みについても教えてください。

前野 2019年から石垣島で開催している「アイランダーサミット石垣」に深く関わっています。これは、地元の生産者やミュージシャン、高校生、さらには東京の大学生までを巻き込んだ、体験型のサミットです。

石垣島のような人口5万人規模の島は、エネルギー問題や環境問題を考えるうえで、非常に適したサイズ感です。地球規模で考えると難解な課題も、島というコンパクトなスケールで考えることで、自分たちにできることが明確になります。

ビーチクリーンなどの体験プログラムを通じて、自然環境の現状を肌で感じてもらう。こうした活動は、もはやイベント会社の枠を超えていますが、イベントという手法を使って社会を良くしていく試みだととらえています。

── 障害者雇用についても、独自の仕組みを導入しているそうですね。

前野 はい。中小企業が単独で障害者雇用を継続することには難しさもあります。そこで弊社では、複数の企業が共同で障害者を雇用する「ウィズダイバーシティ」という仕組みに加入しています。障害者を多く雇用している会社に仕事を発注することで、間接的に雇用を支える制度を活用しています。

一人だけを雇用して孤立させてしまうよりも、適切な環境で仕事が届く仕組みを作る方が、お互いにとって幸せな形だと考えています。こうした社会貢献活動も、ようやく本格的に取り組めるようになってきました。

細部へのこだわりと「楽しむ心」がビジネスの質を高める

── 経営者として、最も大切にしていることは何ですか?

前野 「細部にこだわること」です。イベントの現場では、誰も気づかないような小さなことにまで徹底してこだわります。それが仕事の質を決め、社員のモチベーションにもつながると信じているからです。

そして、何より自分たちがその状況を楽しむことです。リーマンショックや東日本大震災、そしてコロナ禍と、これまで多くの壁がありました。しかし、それを苦しみとしてとらえるのではなく、どう乗り越えて楽しむかを考えてきました。

コロナ禍においても、いち早くオンライン配信に切り替え、社内で勉強会を重ねることで、赤字を出さずに乗り越えることができました。変化を恐れず、その時々の最善を楽しむ姿勢が、35年という歴史を作ってきたのだと思います。

イベントはあくまで「手段」であり、ビジネスコミュニケーションを最適化するための媒体です。私たちはその手段を通じて、企業や街、そして世の中を元気にすることを目指しています。

これからも「パートナーシップデザイン」を軸に、クライアントの課題に深く伴走し、新しい価値を創造し続けていきたいと考えています。

氏名
前野 伸幸(まえの のぶゆき)
社名
株式会社ホットスケープ
役職
代表取締役

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